#53 vs 巨大ゴーレム
王子が掲げるコアが光を放つと魔力が周囲に渦巻いていく。
周囲の土塊を吸い上げるような竜巻が発生して、ゴーレムコアに集まっていく。
集まり固まり形造られていく、2階建ての建物をゆうに超える巨大な人型。
そして無骨で太い手足が生えたずんぐりした胴体にチェスのルークのような頭部を持ったゴーレムが完成する。
頭部にはモノアイのようにゴーレムコアが鈍く輝いており、その前には誇らしげな第一王子が仁王立ちしていた。
「これこそが我が国に伝わる最強の魔導遺物、ギガントゴーレムだ!」
「デカい!?」「迫力、ある。」「うぉーっ、なんじゃこれぇ?!」などなど大迫力の巨人に驚愕の声を上げる我がパーティメンバー。
「ふふふ、さあいけっ! そいつらを血祭りにあげろ!」
「グガァッ!」
王子の命令に声を上げて従う巨大なゴーレムが、私たちを標的と定めて向かってきたよ。
大人しくヤラれてやる気はないので、こちらも抵抗させてもらおう。
リーリィが爆裂系の魔法を派手に放つが、見た目の割には大した効果は与えられないようだ。
ルミーナもシフトを使って全力の連撃を見舞うも、硬いボディの一部を欠けさせるに留まってる。
その上、その傷もすぐに再生が始まるなんて、ちょっとズルいんじゃないかなぁ。
「わははは、人ごときの攻撃なぞ通じはせん!
こいつを相手にするなら一軍を率いてくるんだな。
どうだ、分かったか!」
当たり前だけど、私のセイバーも小さな傷をつけるのが精一杯みたい。
「ねえハバネ、前にやったドローンの魔法陣なら効くんじゃないの?」
「ダメダメ、あれは周囲も巻き込んじゃうからここじゃ使えないよぉ。
さすがに皆殺しなんてやりたくないし。」
「じゃあどうする?
私たちの攻撃は殆ど効いてないよ。なにか手はある?」
いくら強力でも動きが遅いゴーレムなので、実際のところ、そんなに悲観的な状況ではないけど、こちらも決め手にかけるんだよね。
「まだまともにテストも出来てないんだけど、そうも言ってられないかぁ。
新しい子を出してみるよ。
マルチたち、みんな来て!」
クリスタルカットのような多面体で鋭角な形状がスリムな印象を与えるボディから4つのプロペラの伸びた外観の私が「ぷち」と呼んでいるミニサイズドローンが大量に出現する。
その数百機。それらが私の周囲を縦横に飛翔する。
「なんだそれは?!
ふん! そんな蚊トンボ、いくら集まったところでこのゴーレムの敵ではないわ。
やれ、ゴーレム! お前に力を見せてやれ。」
再び命令を受けたゴーレムの頭部に魔力が集まり始めるとそれは収束していきコアが輝き始める。
ああ、このパターンは熱線砲かビーム攻撃なパターンだなぁと、ロボアニメ定番のお約束が思い浮かんだ。ならこっちはこれだね。
「マルチ、シールドフォーム!」
私の掛け声に、100機のマルチがゴーレムを遮るように私たちの前に集まり、正方形の壁のように整列する。
次の瞬間、ゴーレム頭部のコアから強烈な光線が放たれた。
が、その光の束はマルチの壁に数cm手前で遮られる。
途切れなくほとばしる光の束は、マルチの壁に達したとたん拡散し霧散していくのである。
「100機のマルチによるシールドだよ。簡単に抜けるとは思わないでよね。」
「なんだと?! あの強力な攻撃を防ぐだと・・・」
たじろぐ王子と呼応するようにコアからの熱線放射は止み、次の命令を待つようにたたずむゴーレム。
「次はこっちから行かせてもらうよっ!
マルチ、チェインソーシフト!」
壁を作っていたマルチたちが今度は綺麗な円形に整列すると、円の形のまま高速で移動を始める、そうこれって電動ノコギリなんだよね。
このマルチは、今までの各ドローンに付与していた魔法属性を全部付与したドローンだったりする。
だから、私の指示でテクトのようにシールドを張ったり、セイバーのように斬撃能力をもたせたり、各属性の魔法を駆使したりと自由に機能を変えられるまさにマルチなドローン。
そしてチェインソーシフトとは、セイバーのような斬撃能力を持ったマルチが電動ノコギリのように連続した攻撃を集中させる攻撃形態なわけ。
そう電動のノコギリ、いわゆるチェインソーのような挙動のマルチたちがドローンの肩口に斬りかかる。
「ギィガガガガガガガガァァァーーーー」
凶悪な破壊音が断続的に響き渡る中、ドローンの刃がゴールムの肩口に深々と切れ込んでゆく。
そしてキラキラと瞳を輝かせるミリア。
うん、そんなに近づくと危ないよ。ルミーナお願い。
「バッ、バカなぁ?! 無敵のゴーレムがこんな簡単に破壊されるだとぉっ?!
まだだ! まだ腕一本だけだ! お前の怪力でそんな蚊トンボ、捻り潰してしまえ!」
マルチ達を破壊するため、残った腕を力の限り振り回すゴーレム。
だが、その攻撃を一旦隊列をバラバラになって躱すと、すぐに元のチェインソー状態に戻る。
「そんな脳筋攻撃、全然効かないって。
さあ、どんどん行くよぉ、マルチ!」
地面に対して平行になったマルチは、ドローンの足に向かって攻撃を加える。
鳴り響く大音響の中、ゴーレムの足が粉砕され地面に倒れ込むゴールムは、かろうじて残った腕で身体を支えて上体を起こす。
壊れたロボットのようにぎこちなくしか動けないゴーレムに向けて、私はドローンに次に指示を出す。
「マルチ、ゴーレムに向けてリニアバレルモード!」
その掛け声で、マルチたちがキレイな2列の直線に整列する。
「土魔法で徹甲弾を精製!」
最後尾の2機のドローンの間に粒子のようなものが集まっていき弾丸のような金属の塊が現れる。
「雷魔法で電磁誘導開始!」
整列したドローンたちの間に放電が走り始め、その放電はどんどん大きくなりながら整列したドローンの列に纏わり付くように火花を激しく散らす。
ドローンの胴体中央を狙う射線をイメージしながら、私は叫ぶ。
「リニアカノン、シュートッ!!」
最後尾に生成された弾丸が吸い込まれるようにドローンの列に移動するとあっという間に加速され最後光を放ちゴーレムに向けて射出された。
その瞬間、ドンッ!という音速を超えたことを示す衝撃音が響き、周囲を突風が吹きぬけた。
そして超速の弾丸はゴーレムを打ち抜き、その衝撃が駆け抜け全身が崩れてゆく。
崩れた頭部から外れたゴーレムコアがそのまま瓦礫とともに落下していく。
そこへ漆黒のドローンが高速で飛び込んでいったかと思うと、コアの間近でルミーナが現れ見事コアをキャッチする。
瞬時にまたシフティと入れ替わり、そのシフティも即座にその場を離脱する。
笑顔のルミーナからコアを受け取った私はミリアに話しかける。
「やっぱり、これは壊さずに返したほうが良いんだよね、ミリア?」
「はいなのです。それは国宝とも呼べる最重要の魔道具なので、理由はどうあれ壊してしまうと色々面倒なことになるのです。面倒事はハバネさんが嫌いそうなので、私が商会を通して穏便に返却しておくのです。」
「ありがとね、ミリア。んじゃよろしくお願いね。」
アオの触手でグルグルに拘束されている、とあるボクサーのように真っ白に燃え尽き呆然としている第一王子を見ながら、ふぅとため息を一つ付いて皆に向かって声をかける。
「ルミーナたちは、こいつらを拘束してしばらく見張ってて。私はゲートで街に戻ってギルマスに話をしてこいつら回収に来てもらうね。」
了解とばかりに手を振るみんなを確認すると、私はクロスロードへのドローンゲートを開く。
読んでいただきありがとうございます。
これからも応援してもらえるとありがたいです。




