#52 バカ王子、来襲!
私たちがミリアを加えたパーティで順調に依頼をこなしていた。
ミリアは戦闘以外にも様々な役立つ魔道具を所持しており、私のキャリィには及ぼないがそれなりに高性能なマジックバッグ、腰につけた異空間収納が付与されたポーチから取り出してはその有用さを披露してくれている。
今日も街から東に足を伸ばした先にある最近見つけた穴場に狩りに来ていた。
「そういえばさぁ、ハバネって最近一人で何かしてたよね。
また新しいドローンとか造ったの?」
最近の私の行動が気になったのか、ルミーナがそんなことを聞いてきた。
「うん、ちょっとやってみたいことがあってね。新しい子作ったんだよ。
んで、凝り始めたらやめられなくなっちゃってさ、完成するまでがけっこう大変だったよ。」
「今度、どんな、奇天烈なの、造った?」
「リーリィ、それなんかひどくない?」
「ハバネが作るもんが、まあ普通なわけないよな。うん、アタイもそう思うぞ。」
なんか、身内の評価が酷いんだけど・・・
「私はすっーーーごく気になるのです! 絶対凄いドローンに決まっているのです。」
うん、ミリアは常に平常運転だ。キラキラした目で私を見てる。
「新しい子のお披露目は、出番が来たらということで、それまでは秘密にしとこうかな。その方が楽しそうでしょ。」
いつものように私たちが能天気に過ごしていた頃・・・
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クロスロードより東、大陸の東方に位置する「イースタン王侯連合」。
この大陸の東端に位置し、自然に溢れた農耕酪農が盛んで古い伝統を持つ地域であり、いくつかの王政国家が国境を連ねているものの適切な外交により平和で安定している地域でもあるそうだ。
私たちには知る由もなかったんだけど、そこにある”とある”王国でちょっとしたお家騒動が起こっていたんだって。
ことの発端は、その国の出来の悪い第一王子と出來の良い第二王子による後継者争いが起きたことだった。
当然のように兄である第一王子が次代の国王になると思っていたら、弟である第二王子が次期国王に収まってしまったのだから、ちまたで読まれる三文戯曲のような展開になるのも自然な流れなのかも。
まあ、あまりにも資質の差が明らかなことを周囲の誰もが認めていたわけだから、第二王子が次代の国王に選ばれても誰もがそれを当然と受け止めた。
王になりそこねた不出来な兄以外は・・・
そんなわけで、国を割るような派閥の争いが起こることもなく粛々と新国王が即位したんだけど、その式典の最中に往生際の悪い第一王子が盛大にヤラかしたそうだ。
早い話、できの悪い第一王子を普段からの素行の悪さで後がなくなっていた貴族たちが担ぎ上げて、あろうことかクーデターと言う暴挙に出たんだと。
そんな頭の悪い人間ばかりの集団の謀り事が巧く行くはずもなく、あっという間に鎮圧され、追い詰められ、往生際悪く国外へ逃げ出したというのが、このお家騒動の顛末だったそうだ。
ただ、逃げ出す際にその国が秘蔵していた強力な魔道具が一つ持ち出されていたとか、いないとか。
・・・・・・・
そうやって祖国から逃げ延びた一団は、なぜかクロスロードを目指していた。
東方からクロスロードへとつながる街道上、もう一日もかからずに到着できるところまで傷を負いホコリに煤けた第二王子と数十名の取り巻きの一団はたどり着いていた。
そんな集団と、依頼を終えて街へ向かおうと街道沿いの森の中から出てきた私たちは遭遇した。
「何だ、貴様たちは?! 追手か?」
いきなり戦闘モードの集団に怒鳴りつけられて、頭の周囲を???が飛び交う私たち妖精の翅。
「むむっ、追ってでないとしたら・・・。
そうか! お前たちはクロスロードのハンターか?
ならば尚の事、このまま行けせる行かせる訳にはいかん。ここで消えてもらおう。」
わけのわからないことを叫びまくる謎集団を前にして、どうしたものかと途方に暮れている私たち。
そういえばパーティ組んで以来、無法者に絡まれてそれを撃退する経験を重ね過ぎて、こういう状況でも妙に冷めて対応できるようになってるね、私たちってさ。
「あんたら、一体誰?」
面倒くさそうな態度でとりあえず聞いてみる。
「俺はイースタンのガレーアロク王国の偉大なる新王となる男だ。俺に逆らい追い出したあの国を再びこの手にするため、クロスロードの地を支配し力を蓄えるのだ。」
なんか偉そうに大言を吐くチャラそうな青年が出てきた。
「あっ、あれはガレーアロク王国の第一王子なのです。
素行の悪さから王位継承は絶対無理だと言われていたのです。
たぶんですが、王位継承で揉めて謀反でも起こしたが逆に鎮圧されて這々の体で落ち延びて来たに違いないのです。」
さすが、世情に詳しい商人の娘。目の前のチャラ男のことも知ってたようだ。
どうやら、どこの国や勢力の後ろ盾もなく冒険者ギルドという組織が自治を行う辺境都市クロスロード。
それでも大陸中に一定の影響力を持つというそこを手に入れ再起を図ろうと目論んでいるみたいだ。
「ええーいっ! うるさいわぁ!! まだ負けてはおらん!
クロスロードで力を蓄え、まずは祖国を我が手にして後、この大陸のすべてを我がものとしてくれるわ。わはははは。」
とりあえず、目の前の連中がクロスロードにとって敵だということは分かった。
なら、やることは決まってる!
「そんなことさせるわけないでしょ! みんな、ここであいつらをやっつけるよ。」
「「「りょうかい(ん)(おおぅ)(はいなのです)」」」
私たちの街を害しようという相手なら遠慮は無用とばかりに、みんなも殺る気になったようだ。
「ええーい、こんな小娘ども、蹴散らしてしまえ!」
チャラ男の号令で甲冑で身を固めた配下の騎士達が向かってくるんだけど。
「行くよ! シフティ!!」
ルミーナは、騎士たちの間を飛び回るシフティと頻繁に入れ替わりながら、騎士たちにダメージを入れていく。
「ん、雷撃!」
リーリィは、魔法を放とうとする魔法使いをピープで素早く察知して相手が魔法を放つ前に先制の電撃で麻痺させていく。
「あんたらの相手はアタイだよ!」
フィーリアは数人を引きつけると、ケッタンで周囲を高速で旋回し始める。
高周波のような不快音をがしばらく聞こえていたがそれがピタリと止むと、そこに居た騎士たちはフラフラとふらつくとそのまま倒れ込んでしまう。
「ほい、テクト! 次はセイバーお願いね。」
私もいつものようにセイバーとテクトのコンビネーションで相手をさばいていく。
「ぐぬぬ・・、なかなか手ごわいではないか。
ええーい、なら奥の手を出すまでだ。それにちょうど良い起動実験だ。
お前らを使ってこいつの性能を見ることにしようか。」
そう言うと第一王子は懐から鈍く光は発するこぶし大の水晶玉のようなものを取り出した。
それを見てミリアが反応する。
「むむっ、アレはもしかして、もしかするのです。
王子の祖国はガレーアロク王国なのです。
ならあの地に遺されていたという古代王朝の遺物であっても不思議ではないんです。」
「ふふふふ、俺はこの力を使ってまずはクロスロードを、そして祖国を我がものとした後、この大陸すべてを手に入れるのだ。」
「ちょっとあのバカ王子、いったい何する気なの?」
王子の不審な行動にルミーアが叫ぶ。
「これこそは、ゴーレムコア! さあいでよ、古のゴーレム巨人よ!」
第一王子は、その手に握るゴーレムコアを高々と掲げた。
ちょっとヤバい事になりそう。
読んでいただきありがとうございます。
これからも応援してもらえるとありがたいです。




