#47 とれとれピチピチ蜘蛛料理?!
異世界に来て初めて出会ったカニ。
嫌がおうにもテンションが上がるよね。
「ルミーナ、リーリィ、フィーリア!
相手は硬いけど動きは鈍そうだから、ルミーナがとどめを刺すいつものフォーメーションで行こう。」
「りょーかぃ。」
「ん。」
「おう。」
返事とともにみんなはすぐに行動を起こす。
私はセイバーとテクトを牽制攻撃に向かわせる。
大蜘蛛が巨大な鋏を叩きつけてくるが、それをテクトが魔法の障壁で受け止めると、その隙きを付いてセイバーが切りつけていく。
そうやって2機のドローンがひらけた場所に鋏大蜘蛛を誘導していった。
誘導に成功すると、フィーリアがケッタンに乗って飛び出し鋏大蜘蛛の周囲を高速で旋回し始める。
にわかに巻き起こる風の障壁に動きを封じられるとともに極低周波により感覚を狂わされていく。
フィーリアの乗るケッタンがその場を離れると、威嚇をしつつもフラつくような動きを見せる大蜘蛛がいた。
そんな大蜘蛛にリーリィが魔法を放つと、すべての足元に氷が現れて纏わり付くように広がっていくと完全にすべての足が凍りつき動きを封じてしまった。
それでも不自由な体勢から2本の大鋏を振り回して脱出をはかろうとする大蜘蛛の目の前に漆黒のドローンが飛来する。
次に瞬間にはドローンはルミーナと入れ替わり、ドローンの速度をそのままで持てる力を丸ごと乗せた一撃が大蜘蛛の眉間に突き刺さる。
的確な一撃で脳髄を破壊された鋏大蜘蛛は完全に沈黙した。
「ルミーナ、お見事!
もう完全にシフティを使いこなせてるんじゃないの。」
「ハバネたちが抑え込んでチャンスを作ってくれたからだよ。
一人じゃ、ぜんぜん無理だからね。」
あんなこと言ってるけど、ルミーナもリーリィもギルマスが認めるだけの実力が付いてきてると思う。
どっちかって言うと、私がおいていかれないように頑張らなくちゃいけないぐらいだし。
「この調子でノルマ数、頑張って狩りましょかね。
うん、近くに反応もあるみたいだし、サクサクいくよぉ!」
その後も特に苦戦することなく、依頼分の頭数を確保することが出来た。
「ん、依頼数、完了!
みんな、おつかれ。」
「おねーちゃんたち、すごくかっこよかったよぉ、おつかれさまぁ。」
満足げな顔でリーリィが依頼完了を宣言すると、ラズリも嬉しそうな声を上げる。
でも、その空気に私は待ったをかける。
「待った、待ったぁ! 私、もっとこの蜘蛛を狩りたいんだけど・・・」
「ハバネぇ、どうしたの?
もう必要な頭数は確保済みだよ。これ以上捕まえてどうする気?」
「・・・・・」
意味がわからないよぉ、とでも言う顔をして私を見るルミーナとリーリィ。
「どうするのって、食べるつもりなんだけど。」
「「「「えええーーーーーっ!?!」」」」
ルミーナたちだけじゃなくて、フィーリアやラズリまで驚愕の声を上げ、ものすごく嫌そうな表情で私を凝視している。
あんまり見つめられると、ちょっと照れるね。
「ハバネは一体何考えてるのぉ?!
蜘蛛を喰うって、頭大丈夫なの?」
「(コクコク・・・)」
うわぁーー、痛い子見るよな視線が心にグサグサ突き刺さってくるなぁ。
そこまで拒否感があるのかぁ・・・、まあ私も海鼠や海鞘はダメだったから、気持ちはわからなくもないけど。
「ええーーーとねぇ、アレって蜘蛛扱いされてるけど、私が元いた世界ではカニっていう別の生き物だったんだよ。
よく見ると森に住む蜘蛛と結構姿が違ってるでしょ! それに住む場所だった、こっちは水辺だしさ。
それにね、カニっていうのは私の世界ではトップクラスの美味しい食材だったんだよ。
それと同じ生き物がいたら、食べて見るでしょ、やっぱりさ。」
その後も、いかにカニが美味しい食材なのかをコンコンと説明し続ける私。
普段の私がまず見せないような鬼気迫る説得に、完全には納得し切れていないというか、根負けして諦めたというような様子で、とりあえず一匹だけ狩ってみるということで折り合いがついた。
そしてとにかく頑張った私がほぼ単独で狩ったちょっと小さめな鋏大蜘蛛が目の前に鎮座している。
早く味を確かめたい私は湖畔の安全なエリアで、石組みで大きめの簡易的な竈を作って大蜘蛛、いや大ガニを丸焼きにしている。
私が喜々として作業する様を嫌そうな顔で眺めている、私以外のパーティーメンバーたち。
だが、徐々に火が通り香ばしい香りを周囲に漂わせ始めると、その表情に困惑の色が混じり始めた。
その姿から蜘蛛の仲間と思われ、それゆえ誰も食材と言う認識を待つことがなかったのであろう。
そのせいで、だれも調理などしようと思わず、ただ火を通すだけでこんな美味しそうな香りが立つことも知りようがなかったわけだ。
良い具合に火が通ったと思われる足を一本、無造作にもぎ取ると切れ味の良い解体用ナイフでその殻を剥いていく。
高温に晒され脆くなった殻は、案外簡単に割り取ることができ、その程よい弾力を持った白い剥き身が目の前に現れた。
サイズ感が記憶と異なってかなり巨大ではあるものの、それはまさによく知っているカニの身そのものだった。
もう辛抱も限界を超えていた私は、おもむろにその身に齧り付いた。
「う、美味ーーぁーーい! なにこれ?!
これ、私が知ってるカニの味を遥かに凌駕しているよぉ!!」
何もかも忘れて、ただただ一心不乱に蟹の身に齧り付く私。
そんな光景を見て、自分の気持ちに対して素直に行動する者が現れた。
ラズリとフィーリア、そしてアオだ。
「ハバネお姉ちゃん、私も大蜘蛛食べてみたい!」
「そんなに美味いのかぁ?! なあなあ、アタイにも食べさせてくれよ。」
「・・・・・」
心でガッツポーズを決めた私は、良い感じで焼けている足をもいで殻を外して、ラズリたちに笑顔で振る舞っていく。
「んんーーっ?! おねーちゃん! すっごく美味しいよぉ。」
「なんだコレ?! ただ焼いただけでこんな味が出るのかぁ? こんなの食べたことないぞ!」
「♪・・・・、♬・・・・。」
そうでしょう、そうでしょう。
カニが嫌いな人はいないと確信する私は、その称賛の声を聞きつつも、蟹を味わう手を止めていなかった。
途切れることのない私たちの歓喜の声に、頑なだったルミーナとリーリィもついに陥落の時を迎える。
「ね、ねぇ、あのさ、えーーと・・・、わ、私たちも味見させてもらって良いかな?
もう、みんなの顔見てたら、我慢出来ないよぉ!」
この芳しすぎる香りと、ラズリたちの裏のない笑顔を見ていたら、うんうん、我慢できないよねぇ、うん分かるよぉ。
君たちには、この絶妙の焼け具合のカニの身を味あわせてあげよう。
そして、私の同志になるが良い!!
「「う、ウマーーーいぃ!!!」」
パーティメンバー全員が我が手中に落ち、その後、狩り過ぎるぐらいの鋏大蜘蛛を確保した私たちは、満面の笑顔でクロスロードへ凱旋したのだった。
読んでいただきありがとうございます。
これからも応援してもらえるとありがたいです。




