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#04 早速、バレました?!

「もし、かして、あなた、”流れ人(ながれびと)”、なの?」


 言葉の意味はわからないど、だぶんかなりヤバいこと言ってると思う。


流れ人(ながれびと)?」


 ここはとりあえず、正しく意図を確認しないといけない、まずは情報を引き出さないとね。


「この世界と、異なる世界、から、流れてきた人、異世界人、転生者。

 ココとは、違う力、や、知識を、持った人、のこと。

 そう、例えば、あなたの、ドローン、みたいな!」


 アニメでよく見た少年探偵のようにビシッと人差し指を私に向けて言い放つリーリィ。


 ええーっ?! これって私の異世界転生がマジでバレてるっぽい!


「ど、どうしてバレたし?!」


 と、某少女漫画の一コマのように白塗り&白目&集中線で驚愕の表情となって固まる私。


 パニックが突き抜けて変なテンションになってきちゃったかも。


 指差しドヤ顔ポーズと劇画風驚愕ポーズで固まる二人を見て、ヤレヤレみたいな呆れ顔のルミーナ。


「リーリィ、流行りの吟遊草紙ごっこはそこまでにして。ハバネもノリ良すぎ。

 そしてハバネ、あなた本当に流れ人(ながれびと)なの?」


 ちなみに吟遊草紙というのは、この世界のラノベのようなもので人気のある吟遊詩人の持ちネタを書籍化したものらしい。


 印刷のように書類を複写する転写魔法が珍しくないこの世界では、一般に手頃な値段の書籍が普及しているのだそうだ。


 とくにリーリィがハマっているようなフィクションの創作物語が最近の流行りだとか、のちに一般常識の一つとして教えてもらった。


「えっ、あの、その・・・・あうっ?!」


 改めて問われ、隠そうとしていた事実を直球で突きつけられてしまい、事前の想定が崩壊し頭が真っ白に飛んでしまった私はただただ狼狽えるだけだった。


 そしてそんな狼狽する私を心配するようにフヨフヨと周囲を漂うドローンたち。


「あっ、ごめん、困らせるつもりはないよ。ハバネは命の恩人なんだから警戒しないで欲しいかな。

 私達はハバネが秘密にしたいことは絶対に誰にも言わないから。 だから落ち着いて。」


「(コクコク)」


 あわあわしているハバネを落ち着かせるようにやさしく言葉をかけてくれるルミーナと、同意するようにうなずくリーリィ。


 まだ少し動揺が残る私は二人の言葉を噛み締めながら、二人の目をじっと見つめていた。


 二人もまっすぐ私の目を見ていて、その目は全く不純な感じがしなかった。


 この時には、もう二人を疑う気持ちは完全に消えていたようだ。


「あの、私、この先どうしたら良いかわからなかったから、

 二人に話を聞いてもらって、相談に乗ってもらえたら嬉しいかも。」


 そして私は、これまでのこと、元の世界で死んだこと、神様に異世界転生を進められたこと、転生を受け入れスキルをもらったことなどを二人に話した。


 話を聞きながら、ときに驚き、ときに同情を示し、ときに羨ましがりながら、私の話を二人はちゃんと受け止め信じてくれた。


 話を聞き終わり、しばし考え込む二人がどんな反応をするか緊張しつつ言葉を待った。


 しばしの沈黙を破るようにルミーナが口を開いた。


「ねえ、ハバネは行くところもないし、これからのこと、何も決まってないんでしょ? 

 なら、ハンターになって私達とパーティ組まない?」


「それいい! この世界、のこと、私たちが、教える。

 ハバネの、スキル、あれば、私達も、助かる。」


 二人の言葉を聞いた瞬間、私の中につっかえてた何かが外れた。


 この世界に来たときから感じていたけど、あえて押し込めて気が付かないふりをしていた不安、たった一人でこの世界で生きていくことへの不安、そのモヤモヤと胸の中に広がり始めた暗い不安を、二人の言葉が暖かく包み込んで癒やしてくれる気がした。


 いつの間にか、私の頬を涙が流れていた。


 突然涙を流し始めたのを見て、慌てる二人に、私は弱々しく言葉を紡ぐ。


「ホントは怖かった、

 ホントは不安だった、

 何も知らないこの世界でたった一人、

 どうしようって思ってた。

 だから二人の言葉が、

 すごく嬉しかった・・・」


 溢れる言葉が言い終わらないうちに、私はルミーナとリーリィに抱きしめられていた。


「もう、大丈夫だから、安心していいから、ねっ!」


「ハバネ、は私達が、守る!」


 押し込めていたモヤモヤをすべて吐き出すように、私は二人を抱きしめられたまま大声で泣いた。


 ルミーナとリーリィはただ黙って私を優しく抱きしめ続けてくれた。


---------------


 思いっきり泣いて溜め込んだものを吐き出せた私は、しばらくして落ち着きを取り戻し、恥ずかしそうに顔を赤らめながら二人から体を離す。


「・・・・・ごめんなさい、そしてありがとう。」


 まだ少し恥ずかしそうに赤い目を伏せながら二人に言葉をかける。


「もう大丈夫そう? ならそろそろ私達の街に戻ろうか。

 さすがにこのままだと街に戻る前に日が落ちちゃうからね。」


「待って! あの、熊、どうする?」


 動き出そうと立ち上がった私とルミーナに呼びかけたリーリィが、目の前のマッドベアを指差す。


「高ランクの魔物だから高く売れそうだけど、私達、まだうまく解体できないし大きすぎて運べないよ。

 それにもたもた運んでたら、血の匂いにつられて他の魔物が襲ってくるかも。」


「むう・・・、もったいない、けど、諦める。」


 お宝を目の前に苦悩するも、ついさっき死にかけたうえに、更に危険を犯す気にはなれないリーリィは眉間にシワを寄せながらルミーナの言葉を受け入れていた。


「あのぉ・・・、クマさんならなんとかなるよ。」


 残念そうな二人にそう告げて、私は目の前に猫耳と尻尾のようなパーツが付いた真っ黒な新しいドローンを呼び出す。


 真黒のドローンはすすーっとクマの死体の上に飛んで行き、その上空で停止するやいなや、一瞬でクマの死体が消え去った。


「・・・もし、かして、収納、魔法?」


 驚愕の表情で絞り出すように問いかけてくるリーリィに私は、


「うん。私には(この魔法を)使えないけど、この子には付与(エンチャント)できたんだよね、異空間収納。

 ただ、レベルが低いから今のクマさんだけで容量はイッパイイッパイみたい。」


「もうなんでもアリだねぇ、ハバネは。」


「この、世界、のこと、バッチリ、教えるから、ハバネの、ことも、キッチリ、話して、もらう。」


「じゃあ、そういうの色々話しながら、とりあえず街に戻ろうか。」


 ルミーナの宣言で、3人は街に向けて歩みを進める。

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