#46 鋏大蜘蛛(シザースパイダー)・・・、それって?!
ラズリを連れてのハンター仕事も問題無しと分かり、それが日常になりつつあったある日。
ルミーナが依頼掲示板の前でこんな事を言いだした。
「ねえ、ハバネ。
仕事にも大分慣れてきたようだし、そろそろ遠出する依頼も受けてみない?」
「そう言えば、今まで受けた仕事って全部日帰りできるものばかりだったね。
そっかぁ、本格的にハンターを続けていくなら野宿とかも出来ないとマズイよね。」
「いきなり、長期依頼、無理。
近場で、しっかり、試しておく。
まずは、そこから。」
みんなも、そろそろハンターとして次のステップに進むことを考えいたみたい。
「うんそうだね、分かった。
今後、上を目指すなら一歩踏み出さなきゃダメだよね。
でも、その依頼受けるの少し待ってもらっていいかな?
ちょっと外泊用にやっておきたい準備があってね。」
ということで、私は3日ほど時間を貰い、新しいドローンの開発に勤しんだ。
その間みんなは休みにして自由に過ごしてもらおうと思ってたんだけど、ラズリを連れて近場で採集依頼をこなしていたようだ。
そんなこんなで遠征に役立つ機能をなんとかドローンに持たせることが出来た私は、初の泊りがけ依頼に挑戦することになったのだ。
「でもさ、片道1日がかりだから向こうで野営するわけなんだよね。
ゲート使えばその必要なくない?」
「あのねえ、ハバネ。ドローンゲートを使った転移は一応秘密なんだよね?
なのに、日帰りできない場所の獲物をその日に持ち帰ったらどうなると思う?」
「ああーーっ、なるほどぉ。
たしかに不自然だよね、それって。」
「ハバネ、楽ばかりするの、良くない。
いろいろな経験、積むのも、ハンターには、大事。」
最近の二人は私に厳しい。
私の素の能力があまりにもお粗末なのが気になっているらしくて、何かにつけて私を鍛えようとしてくるのだ。
実際、身体能力のレベルアップは怪我などで死ににくくなるのだから二人の行動も理解できるんだけど・・・
日本育ちのもやしっ子気質には、特訓って結構キツいんだよねぇ。まあ、頑張るけどさ。
ということで、今回はドローンゲートは使用禁止なのであった。
自分の足での移動だったため、自力の低さでかなりバテバテ状態ではあったが、なんとか地元っ子ルミーナたちに付いていき、目的の場所にたどり着くことができた。
「はぁーーー、もうダメぇ! 動けないよぉ。」
「ハバネ、このくらいの移動でバテっちゃダメダメだよぉ。
今後はもっとトレーニングレベル上げなきゃだね。」
「ハバネ、だらしねぇなぁ。
ホント、ドローンがないとちびっ子並だな。」
「ハバネお姉ちゃん、だいじょーぶ?」
フィーリアにまで呆れられてしまったが、ピンピンしているラズリに心配されては。言い返すことも出来ないや。
私がへばってしまったので、このまま野営をして明日ターゲットを仕留めることになった。
このときのために私が頑張って造った結界ドローンを使いしっかり安全を確保した上で、私たちは収納しておいた作りたての料理で食事を済ませてそのまま眠ることにした。
本来なら交代で見張りを立てるのだが、結界とドローンたちがいれば下手に私たちが見張りに立つより頼りになるので、全員で一緒に眠りについた。
そして、朝を迎えた私たち。
夜中に魔物の急襲が・・・、なんてことはなくしっかり気配を遮断して平和な朝を迎えられましたとさ。
「それじゃあ、朝ごはんも終わったし、お仕事を始めよっか。」
昨夜は暗くてよく見えなかった目の前に広がる湖を眺めながら、みんなに声をかける。
「今日のターゲット、鋏大蜘蛛、水辺に近い、岩場が、生息地。」
「なら、それらしい岩場を回ってみよう。近くに行けばハバネやリーリィのドローンで探知できるだろうしね。」
「それにしても、水辺が好きなんて変な蜘蛛だなぁ。
けど、どんな蜘蛛だろうとアタイがギタギタに切り刻んでやる!」
あの一件以来、フィーリアにとって蜘蛛は宿敵扱いなんだよねぇ。
蜘蛛の魔物は見つけ次第瞬殺だし・・・まあ気持ちは分かるけど。
「そろそろ岩場が見えてきたけど、どお?
獲物の反応はある?」
野生の勘で気配でも感じたのか、ルミーナが私に様子を聞いてくる。
「今回の獲物は直に見たことないから確実にそうだと言えないけど、それらしい反応はあるみたい。
とりあえず、今回は硬い外殻が貴重な素材になるから、あまり傷つけないほうが良いんだよね。」
「そうだよ。今回の目標は魔石と外殻。
鋏大蜘蛛は巨大な鋏攻撃が強力だけど、動きは鈍いから私たちならあまり苦戦はしないはずだよ。」
そろそろ今回の獲物が目視できるはずなんだけど、あっ、居た!
「居た! アイツが、鋏大蜘蛛!
それも、なかなかの 大物みたい。」
「わーー、大きいハサミ! すっごく強そうだよ、ハバネお姉ちゃん!」
始めて見る魔物らしくラズリが、なんかすごく好戦的になってる。こういうところが野生児っぽいなぁ。
私も自分の目でしっかり確認したんだけど、
そこに居たのは、全長およそ3メートルぐらいの、軽自動車ほどの大きさで特大の立派な鋏を振り上げた・・・。巨大蟹だった。
「うわーーぁ、名前を見たときからそうじゃないかなぁと思っていたけど、やっぱカニだったかぁ。」
この世界ではカニの知名度は一般的でないらしく、その姿から蜘蛛の一種と思われて嫌われているらしい。
もちろん食べるなんてことはありえないようだが、聞いた話ではただの食わず嫌いのようだ。
元の世界の外国人がタコを見たときの反応と同じような感じかな。
デビルフィッシュならぬ、鋏大蜘蛛といった感じだ。
しかし、目の前には間違いなく食いでの有りそうなカニがいる。
そうとなればとっとと倒して、誰が何を言おうとも食べて味見をせねばなるまい。
だって私、カニ料理には目がないんだもん!!
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