#44 ラズリと一緒に
ギルマスの部屋でナタリアさんが用意してくれたラズリにとって初めてであろう豪華なお菓子を食べ、その顔を蕩かせていた。
しばらく時間を置いてサブマスのオルトナさんを伴って部屋にやってきたギルマスのガリーさん。
向かい合ってソファーに座る私たちは、ラズリと出会うまで経緯とラズリから聞いた話をできるだけそのまま伝える。
ギルマスは腕を組んだまま目を瞑り最後まで黙って聞き終えると、少し思案した様子を見せた後、おもむろに口を開いた。
「どこかはわからないが場所に魔族が暮らす隠れ里があって、そこで内紛が起きて狙われたその子を里の長が転移魔法で助けようとしたのを、お前たちが見つけて保護したと。
つまりはそういうことだな。」
「はあ、まあ大筋はそんな感じですね。」
「でだ、そこの妖精が言うように妖精すら存在を知らないということなら、その里はここからかなり遠い場所にあるんだろう。
ならまあ、そっち方面の厄介事は当面問題なさそうだ。
どっちかと言うと、この街でのその子の扱いのほうがしばらくゴタゴタしそうだが、まあ俺たちギルドも目を光らせておくからしばらくすれば落ち着くはずだ。」
ラズリに向かって似合わない笑顔を見せたが、当のラズリは意味がわからなかったのかキョトンとしている。
「それにしても、ギルマスは魔族に対して、その・・・、なんていうか、思うところはないんですか?」
クロスロードの街のある意味顔とも言えるギルドマスターが魔族をどう思っているのか気になっていた私は、そのことを口にする。
「魔族かぁ・・・、まあこの街の人間は魔族襲来の話を子供の時から聞かされているから、それなりの反感はあるだろうな。
だが、俺自身について言えば、魔族に対して思うところはないな。
なぜかといえば、魔族の知り合いがいるからなんだがな。」
「ああーっ、そういえばこの大陸全体を見れば、魔族自体は珍しいけど居ないわけじゃなかったんだよね。
でもこの街近辺に居たら大騒ぎになると思うけど・・・。」
「それはな、俺がまだ現役ハンターだった頃にあちこち放浪していたんだが、そのときに出会ったんだよ。
出会いはかなり嫌悪な感じだったが、付き合ってみたらいいヤツだって分かってな。
それからは、魔族に対する偏見は綺麗サッパリなくなったってわけだ。」
「へー、そんな事があったんだ。」
ルミーナもリーリィも、ギルマスの知らない一面に感心しているようだ。
「とりあえず、魔族に関してはこっちも情報を集めておくから、ハバネたちも何かあったすぐに知らせて来いよ。
分かったな。」
「はぁーい、ラズリのことでなにか起きたら連絡しまーす。」
こんな感じでラズリに関する報告を終えると、私たちは揃ってギルドを後にした。
そのままも宿に戻って女将さんにラズリを紹介したんだけど、心配するようなことは起こらず、女将さんは笑顔でラズリを歓迎してくれた。
というか、ラズリの可愛らしさにかなりヤラれているようにも見えた。
だって、ラズリが一人で挨拶をした次の瞬間には、笑顔の女将さんにガッツリ抱きしめられていたからねぇ。
その後、ラズリのために気合を入れたらしい美味しい晩御飯にみんなで堪能して部屋に戻った。
ダブダブの私の服に着替えたラズリは当面は私のベッドで一緒に寝ることにしたので、さっそく寝かしつけたわけだけど・・・。
慣れない緊張や疲れからか、すぐに寝息を立て始めていた。
そんなラズリの可愛い寝顔を見てほっこりしていた私たちも、ラズリに釣られるように睡魔に負けて夢の世界へ旅立った。
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いつものように快適な目覚めを経て、女将さんの朝食を頂いた私たちはギルドで依頼を受けることをせず、今日はみんなで街へ買い物に出かけた。
「とりあえず、ラズリの服や日用品を揃えよう。
その後はラズリ用の防具なんかも見に行きたいかな。」
「えっ?! ハバネはハンターの仕事にラズリを連れて行く気なの?」
耳をピンと立て、マジかっ?!というような驚いた表情になるルミーナ。
「うん、連れていくつもりだよ。
昨日はギルマスの一声でなんとかなったけど、まだラズリを一人でこの街に残し行くには心配なんだよねぇ。」
小さな子供を連れて仕事をする親子ハンターとか見かけないこともないんだが、やはり戦力にならない子供を連れて行くことはリスクしかないから普通はしないのが常識。
万全のハンターでもちょっとしたことで命を落とすことがあるのがハンター家業。
足手まといにしかならない子供を連れて行くなど、自分の命を縮める行為にほかならないとルミーナも考えているのだろう。
「街にいるラズリを心配しながら仕事するよりは、目の届くところで守っている方が私は仕事が捗ると思うんだよね。
それに、直接私たちが守らなくてもドローンがしっかり守ってくれるよ。
戦闘未経験な私でも、ギルド初日にそれなりなハンターを返り討ちしてたでしょ!」
「たしかに、誰かに、ラズリちゃんを、預けるより、ドローンの方が、ぜんぜん、安心、ん。」
リーリィは私と同じような危惧をもっていたらしい。
「ああーー、でもラズリが嫌なら無理には連れていけないかな。
・・・ねえ、ラズリ。
私たちが仕事の間、宿で留守番するのと、私たちと魔物が出るかもしれない森に行くのと、どっちが良いかな?」
私の問いかけに、全くの迷うことなく即答するラズリ。
「お姉ちゃんたちと一緒に行くっ!!」
そう言って私の腰にヒシッと抱きついてきたラズリがとっても可愛かった、うん。
「ということで、ラズリも一緒に仕事に行くってことで・・・、決定っ!!
それじゃ、ラズリの装備を揃えに行きますかね。」
と勢い込んだ私に、フィーリアが突っ込んきて真剣な顔で訴えてきた・・・
「ハバネぇ、お腹すいたぁ! もうお昼だぞ! お昼ごはん食べに行こう!!」
有事と仕事中以外のケッタン使用を私に禁止されたフィーリアが自前の翅で飛びながら私の顔へ突撃してきていった言葉はこれだった。
「そういえばもうこんな時間なんだ。
んじゃ、お昼ごはんを食べてからゆっくりラズリの装備を探しに行くとしますか。
ラズリもお腹すいたよね?」
そういって、私にしがみついていたラズリにも声をかける。
モジモジと恥ずかしそうにしながらも、こくりと小さく頷くラズリにもう私の心は萌え萌えだぁ!
私はラズリの頭を優しく撫でてあげると、にぱっと極上の笑顔になるラズリ。
ご飯と聞いて耳と尻尾が嬉しそうに揺れているルミーナと、相変わらずの薄い表情なリーリィと連れ立って、私たちは街の広場の屋台を目指して歩いていく。
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