#43 媚びない、引かない、顧みないのがハバネ!
初めて見るドローンゲートに緊張するラズリの手を引いて、私たちはクロスゲートの街へ帰ってきた。
といっても、門番をスルーして直接街の中に出るのはマズイので、いつもの人気のない場所へ出てそこから門に向かう。
「よお、ハバネちゃん。今日はもう終わりかい?」
「うん、今日はもうおしまい。
ただ、森でこの子を保護したからギルドで報告するつもりなんだけど。」
「へーー、森で子供って・・・っ?!
おいっ、この子って・・・、はあっ?!」
「はいはい、分かってるから落ち着いてね。
そのことも含めてギルドで説明するつもりだから」
門番が慌てている理由はズバリ、ラズリだ。
ルミーナたちはラズリの角を隠してギルマスのところに行こうって言ってたんだけど、ラズリが隠れてコソコソ生活するなんて我慢できなかったんで、真正面から強引に認めさせるつもりで角を隠さずにつれてきた。
まあ、ラズリの角を見て魔族だと騒ぐヤツもいるだろうけど、そんな連中に負けるつもりは端っから無い。
ちょっかい出すやつもいるだろうけど、そのために護身用のドローンは配置済みだし。
だから、私は真正面から堂々とぶつかって認めさせる気満々なのだ。
混乱する門番さんを強引にスルーし、ハンターギルドを目指して歩を進める。
街中を歩く私たちを大半の人は気にすることもなく通り過ぎていくが、それでもラズリの正体に気がついたらしい数人が後を追うように付いてくる。
私たち全員がそれぞれのドローンを身近に滞空させているから、私のやらかしでその威力を知ってる人間はまあ突っかかってこないと思う。
で、私はあえて反応せず、ハンターギルドを訪れると受付のナタリアさんを見つけるとそのカウンターに向かって歩いていく。
にわかに周囲が騒がしくなってきた。
「ハバネちゃん、なんで子供を・・・」
「結構可愛いじゃないか・・・」
「お、おい、頭に角がないか、あの子。」
「なんだ、あの角?!」
「あ、あれ? あの角ってもしかして・・・」
「あのくねり・・・、まさか?!」
「ま、魔族ってやつかも!」
「魔族って、昔この街を壊滅状態にしたっていうあの魔族かっ?!」
「お、オレ、歴史書であんな角が描かれた古い絵を見たことがあるぞ。」
「魔族なのか・・・」
「「「「魔族だ・・・」「マジで魔族・・・」「魔族がなんで・・・」」」」
波紋のように敵意が広がっていく。このまま何事もなくカウンターにたどり着けるとイイなぁ。(棒)
「おいっ、お前! そこにいるガキは魔族だな。
なら、そいつを黙って俺たちに渡せ!」
厳ついスキンヘッドの大男が私たちの前に立ちはだかった。
「はぁ? 何いってんのぉ?! バカなのぁ?
誰が得体のしれない奴に可愛い妹分を渡すって言うのよ!
それより邪魔だから、そこ退いてくれないかな?」
「バカはお前だ! この街の人間にとって魔族がどういう存在か分かってねぇのかよ!
この街にとって魔族は憎き敵なんだよ。 だから魔族は見つけ次第ぶちのめすんだよ!!」
怯えるラズリを守るように周りを囲む私たちに向かって、敵意を高ぶらせる集団はさらにその人数を増やしていく。
「ラズリのどこに恨まれて暴力を振るわれる謂れがあるのかな?
私にはどう見てもあんな達の方が悪者に見えるんだけどぉ。」
「謂れだぁ?! そんなもん、そいつが魔族だからに決まってるだろ!
その昔、このクロスロードを壊滅寸前まで追いやった魔族は、この街にとって憎むべき敵なんだよ。
ガキかどうかなんて関係ねぇ!」
「ふーん、なら恨むべきは、昔この街を襲った魔族でしょ!
当時生まれてもいないこの子は全く無関係、はい、終了ぉー!」
「何が終了だぁ! 魔族ってだけでぶっ飛ばす理由は十分なんだよ!
四の五の言わずに、とっととそいつを渡しやがれ!」
理屈も何もかも吹っ飛ばして、ただただ己が感情だけで激高するスキンヘッド改め、ハゲ男。
「そんな理屈を振りかざすなら、同じ理屈で私があんたをぶっ飛ばしてあげる!」
私の言葉に薄ら笑いを浮かべて凄んで見せるハゲ男。
「オレをぶっ飛ばすのにどんな理由があるんだ? 聞かせてもらいてぇなぁ。」
「それはあんたが人族だからだよ。」
「はぁ? なんでオレが人族だからってぶっ飛ばされんなきゃならねんだぁ?!」
「人族の人殺しや盗賊がいますよね?
たしか、ギルドの掲示板にも討伐依頼がたくさん出てるし。」
「だから、どうした? オレは討伐されるようなことはしたこたぁねえぞ!」
「でも、あなたはそういう悪人と同じ人族じゃないですか。
なら私はあなたをぶっ飛ばしてもイイってことですよね。
あなた自身がそう言ってたじゃないですか!」
「なぁっ? な、なに無茶苦茶なこと言ってやがる!
そんな悪人、オレと何の関係もねぇ! 馬鹿なこと言ってんじゃねえぞ!!
なあ、お前ら!」
そういって周囲に群がった連中に同意を求めるハゲ男。
「・・うん、まあ、そうだよな。」
「ああ・・・、でも・・・」
「いくら仇でも、あんな子供は・・・」
「・・いやしかし、魔族は・・・」
「目の前にいたら、やっぱゆるせねぇ。」
「魔族は・・・、魔族だし。」
なんか揺れてる人もたくさんいるけど、憎しみを消せない人も何人かいるようだ。
やっぱこうなるんだね、だったらこんな街にもう用はないよね。
周囲の反応にいい加減キレかけてきた私。
「ああーーーん、もう分かった!
どうしてもラズリのことを悪く思ったり、暴力を振るおうって言う人がいるなら、そんな街に私は居たくないな。
ラズリが安心して笑って暮らせないなら、こんな街は私の方から願い下げだよ!
こんな街なんか私の方から出て・・・・」
「おい、ちょっと待て! ハバネ。」
思いっきり威勢よく啖呵を切ろうとしたら、遮るようにギルマスが割り込んできたぁ?!
ギルマスは私たちに背を向けて周囲のハンターたちを睨みつける。
「このクロスロードには、そしてハンターギルドには、種族をもって罪を問うような如何なる法もルールもない。
そもそもこのクロスロードにおいて、種族による差別は最大のタブーであり、それは魔族であってもだ。
よって、何の罪もないその子供に対して私刑を行うものはギルドよる裁きを受けるものと心得てもらう。」
そこまで言い切るとこちらを振り向きニヤリと笑みを浮かべるギルマス。
周囲のハンターたちはギルマスの迫力にみんな顔が引きつっている。
「っていうことで、この街を出ていくなんて早まった真似するんじゃねえ。ハバネ!」
ギルマスのその言葉を聞いて、ふっと緊張感を解くとルミーナたちを顔を見合わせて苦笑する。
「はいはい、ギルマスの目が光ってるうちは安心してこの街で過ごすことにする。」
「そういうこった、わははは。
それじゃあ、その子の事も含めて詳しい話を聞かせてもらおう。
ナタリア、先にこいつらを俺の部屋に連れてってくれ。
俺はもう少しこの連中とOHANASHIしてからそっちに行く。」
「わかりました。
では、ハバネさんたちとラズリちゃん・・・でしたね。
こちらへどうぞ。」
こうして、私たちはギルマスの部屋でナタリアさんが出してくれた美味しいお菓子を目を輝かせるラズリと一緒に楽しみつつ、ギルマスが来るのを待つことにした。
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