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#40 森をさまよう女の子


 森で見つけた女の子の頭には角が生えていた。


 耳の上辺りから前方に向かって少しくねるように伸びる先の尖った角が生えていた。


「ねえ、この世界でも角が生えた種族って珍しいの?

 私は見たこと無いけど、獣人の中にもいるんじゃないの?」


 何でも擬人化してしまう日本人的には、そういう種族もいるのでは思ってしまうのだが、異世界常識は違ったらしい。


「獣人に角を持つ種族はないよ。源流となる獣に角があっても何故か獣人に至るまでに角はなくなるらしい。

 角を持つ唯一の種族は鬼人族だけ。でも鬼人族の角は額に短い角があるだけだから、この子の角とは全く違う。」


「じゃあ、この子は一体???」


「私、1つだけ、心当たりが、ある。」


「さすがはリーリィ、小さいときから本ばかり読んでたのもダテじゃないね。」


「それでリーリィ、この子はどういう種族なの?」


 少し思案するように考え込んでから、ゆっくり口を開く。


「この子の正体は、多分・・・魔族。」


「えーーーっ! 魔族ってその昔、大挙してクロスロードに攻め込んで来たっていう、あの魔族?!」


「個々の戦闘力が、高い魔族が、突然、大軍で攻めてきた。

 当時のクロスロードは、総力を上げて対抗して、壊滅寸前までいって、かろうじて撃退した。

 逃げ出した魔族は、現れたときと同じように、唐突に消えてしまった、らしい。

 以降、魔族を見たという記録はない。」


「魔族って普通は居ない謎の存在なの?」


「実は、ものすごく少ないけど、この大陸にも魔族はいるんだよ。

 クロスロード襲撃以前の大昔からね。

 でも、本当に珍しくて、流れ人並みの珍しさかな。」


「じゃあ、その人達も、なんていうのかな・・・、迫害されているというか嫌われているの?」


「ううん、クロスロードでは過去の遺恨で嫌っている人が多いけど、普通はエルフや獣人と変わらない感じかな。

 まあ、会えること自体が奇跡みたいなもんだけどね。」


 ルミーナは魔族にあまり悪い感情は持っていないようだ。


 でもなんでそんな珍しい魔族の、それも子供がこんなところにいるんだろう。


「それにしても綺麗な子だね。きっとすっごい美人になるよ。」


「ハバネにかかったら、人も、獣人も、魔族も関係ないみたいだ。

 可愛いモノだったら、何でも好きだもんね。

 アオやフィーリアにも、いつも可愛いって言ってるし。」


 うう、事実だからルミーナに言い返せない・・・


「あっ、その子、気がついたみたいだぞ。」


 付きっ切りで様子を診ていたアオとフィーリア、そのフィーリアが声を上げる。


「ううーーんん・・・、ぁあっ!、だれ?!

 た、助けてぇ!!」


 目覚めて私たちに気がついた途端、女の子は怯えだし、逃げようと暴れ始めた。


「えっ!えっ!、ど、どうしよう??」


 どうして良いかわからず、オロオロする私たちだったが、意を決して私は行動を起こす。


「イイ子だから、落ち着いて!」


 怯える女の子の両腕を掴んだ私は、そのまま引き寄せて思いっきり抱きしめた。


「ーーーーっ?!」


 突然のことに、動きを止めて固まる女の子。


「大丈夫、大丈夫だからね。

 あなたには何もしないから安心して。

 だから落ち着いて。」


 できるだけ優しく声をかけながら、まっすぐ女の子の目を見つめる。


 怯えながらも、真意を確かめるように見つめ返す女の子。


「私たちがあなたを助けてあげるから、ね。」


 私の言葉を肯定するように笑顔で頷くみんな。


 そんな様子を見た女の子は・・・


「う、うわあああーーーーーん・・・・」


 押し込めていた感情を吐き出すように、大声で泣き出してしまった。


 私はこの子が落ち着くまで、ただ黙って抱き続けた。


 みんなも何も言わず見ていてくれたし、アオは触手を伸ばして優しく頭を撫でている。


 どのくらい時間が過ぎたんだろう、女の子の嗚咽も止み身体の震えも治まっていた。


「少しは落ち着いたかな? 

 ねえ、良かったらお姉さんにお話聞かせてくれないかな。」


 私の声に、顔を起こして私の顔を見上げる女の子。


「あなたのことは私たちが絶対に守ってあげるから、だからあなたのことを教えて。」


 一度伏せた顔を起こすと、探るような視線で私に投げかけてくる。


 なんとかコミニュケーションの成立の手応えを感じた私は更に言葉をつなげる。


「あなたは、魔族なの?」


 女の子はコクンとうなずく。


「じゃあ、魔族が人族と仲が悪いから、私たちにも襲われると思ったのかな?」


 ビクッっと一瞬体をこわばらせたが、それでもコクンと再度うなずき私の目をまっすぐ見つめてくる。


「安心して。私もね、実はそういうこと何も知らない余所者だから、人も獣人も魔族も皆同じにしか見えないんだ。

 だから、あなたも私にとっては小さな女の子でしかないんだよ。」


 笑いながら話す私の言葉に不思議そうな表情をしたかと思うと、ふいにぎこちない笑顔を見せてくれた。


「わたしの名前はラズリ。深い森の奥にある隠れ里で暮らしてたの。

 でも、村の大人たちが急に喧嘩をはじめて里がむちゃくちゃに・・・

 怖いおじさんがわたしに向かってきたときに、里の長がわたしを守るために魔法を・・・・

 そして気がついたら知らない森の中にいたの。」


 怖い思いをしただろうその体験を少しずつ思い出すように、それでもしっかり言葉にする女の子、ラズリ。


 少しずつだが、この子に何が起きたのがが分かってきた。

読んでいただきありがとうございます。


すみません。

今回はちょっと短めです。


これからも応援してもらえるとありがたいです。

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