#38 ぜんぶ、話しちゃいました
ルミーナやフィーリアたちに付き合ってオススメ屋台を回ったり、リーリィと科学知識を応用した魔法の研究をしたりと、それなりに充実した時間を過ごしているうちに、ギルマス達ヒュドラ討伐隊がクロスロードに帰還した。
ただハンターギルドに向かって歩いているだけだったのに、周囲に集まった人々の歓声でちょっとした凱旋パレードみたいになってたけどね。
まあそれだけ街の脅威がなくなったことが嬉しいんだろうけど、大した被害もなくみんなが無事帰還してきたってのも大きのかも。
ホント、この世界は日本と違って人の死が身近なんだとしみじみ感じるんだよねぇ。
「やっと、ギルマス帰ってきたね。
だけど戻ってきたら、やっぱ色々聞かれるよねぇ・・・。」
「あんだけ遠慮なしに思いっきりヤラかしといて、いまさら気にすんの?」
「だってさぁ、出し惜しみして死人が出るなんて嫌だったんだもん。」
「ハバネ、のお人好し、死んでも、治らない。」
「うっ?! 確かに一回死んでるのに治ってないみたいだけどね。」
私のその言葉を聞いて二人も思い出したようだ。
「そういえば、ハバネは流れ人。
一回死んでたんだっけ。」
「ははは、んじゃ、ギルマスに怒られに行きますか。」
ヒュドラの引き渡しや今後のこともあるから、一度ちゃんと話をしておく必要があるんだけど・・・、うーー、気が重い。
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ギルトに着いた討伐隊の一団は、ギルド前でギルマスの勝利宣言とハンターたちへの労いの掛け声を受けると、歓声を上げ勝利の余韻に賑わう街の喧騒の中へと散っていった。
ちなみに正式な報奨は、戦いへの貢献やヒュドラ素材の評価を出したあとで渡されることいなっており、一律の参加報酬だけが先渡しされている。
それでもちょっとした高額依頼程度の額だったので、潤った懐具合に勇んで繰り出すハンターたちが夜の街へ消えていく。
表の騒がしさとは対象的に、ギルド内は一部の職員とギルマスたち上層部が後処理に追われていた。
この時間に訪問するよう事前に言いつけられていた私たちは、ナタリアさんの案内でギルマスの部屋に向かう。
部屋にはギルマスとサブマスがおり、私たちとナタリアさんを加えたこのメンバーだけでの話し合いになるようだ。
「呼び出して悪かったな、妖精の翅。
それと、今回の件に関しての様々な協力に対して、ギルドを代表して礼を言わせてもらう。
本当にありがとう。」
ギルマスのそばに立ったサブマスとナタリアさんも、同じように深々と頭を下げている。
なにか居心地の悪さを感じながら互いの顔を見合い苦笑を浮かべる私たち。
「とりあえず感謝は感謝としてだ、お前たちには色々聞きたいことや言いたいことが山ほどあるんだがなぁ。」
顔を上げてギルマスは、意味ありげな笑みを浮かべながら私たちを見ていた。
やっぱり来たかっ!と覚悟を決めて腹をくくる私。
「まずは、ハバネに聞きたいんだが・・・
お前、”流れ人”だな?」
「・・・・?!」
覚悟はしてたけど、まさかいきなり真っ向から一刀両断で切り込んでくるとは思わず、絶句してしまう。
「・・・・・・」
ギルマスの意図やどう答えるべきかなど、頭の中で考えがぐるぐると撹拌されて言葉に詰まっていると、
「ハバネ、安心してくれて良い。
ここで話した事を俺達は絶対に外に漏らさない。
あくまでも、これまでに起きたことのウラを取って納得がしたいだけなんだ。
だから、お前たちにとって不利になるような行動はギルドマスターの名にかけて絶対にしない。
信用してくれ!」
ギルマスの言葉に、サブマスもナタリアさんも頷いて答える。
ここまで言われたらもう仕方ないよね。
ルミーナやリーリィと黙って見つめ合うと、私は深く頷く。
そんな私に笑顔を返してくれた二人を見て、私の心も決まった。
ちなみに、いつも賑やかなフィーリアも流石に空気を読んだのか、私の側をふわふわ漂っているアオの上で胡座をかいて黙ってこっちの様子を見ている。
「ギルマスの言ったとおり、私は流れ人、異世界転生者なんだと思います。
この街に始めてきたあの日、この世界に転生してきてこの二人と出会ったのがすべての始まりです。」
それから、元の世界「日本」で死に、転生したときにドローン創造のスキルを得たことや、ルミーナたちとの出会いに始まり今に至る経緯をギルマスたちに語った。
ただ、神様の存在や、リーリィに教えた具体的な知識に関しては、この世界の宗教の存在など色々地雷を踏みそうな気がしたので、かなりボカした説明に終止してけどね。
それから、世間の注目を浴びたり、権力者に目をつけられたりすることなく、自由気ままな生活を望んでいるのであまり目立ちたく無いことも付け加えておいた。
「やはり、そうだったか・・・。
流れ人が実在したという記録はいくつも残っている。このクロスロードにもな。
類稀な能力や優れた知識で大きな影響を与えたと言われているんだが、
ハバネ、お前のドローンのとんでもない能力やお前の影響としか思えないリーリィの強力な魔法・・・
それらはまさに流れ人の伝承そのままなんだよ。」
「私も、新人ハンターのはずのハバネさんがどうして異常に高い依頼達成率が出せたのかの疑問が解けました。
でも、目立ちたくない割には不用意な行動が目立ちますよねぇ、いろいろと。
自身の行動に周囲が巻き込まれててどうなるかと、ホントにちゃんと考えてます?」
あれ? なんかだんだんナタリアさんの目がジト目になっていくんだけど、なんでぇ???
「にしても、お前は目立ちたくないって言ってる割に、どんだけ凄いことしてきたと思ってるんだ。
新米ハンターがマッドベアとか、デススパイダーを狩ってきてんだぞ。
トドメにヒュドラの頭を吹っ飛ばしてたし・・・、なら皆の反応は分かるよなぁ。」
「あううーー、だってだってぇ、倒さなきゃこっちが死んでたかもなんだよぉ!
それに能力を隠して、誰かが傷つくのもなんか嫌だったし・・・」
「だからといって、早々倒せないのが普通の新米なんだぞ。
それなのに、お前たちときたら。」
「ええーちょっと?! なんで私たちまでハバネと同じ扱いなの?!」
「私達、普通の新米、だった、変なのは、ハバネだけ!」
ルミーナたちまで私をディスるって、どうなの? 仲間だよね? 友達だよね?
「ルミーナとリーリィだって森じゃやりたい放題じゃん!
まっ、アタイは楽しければ何でも良いけどさ。」
フィーリアの悪ノリはいつものことだけど、最近は二人もドローンスキルに慣れてきて結構やりたい放題な気がする。
「ルミーナも、リーリィも、あんだけの力を見せておいて何言ってやがる!
もう立派にハバネと同類だ! この街のみんなもそう思ってるはずだしな。」
さすがはギルマス、みるべきところはちゃんと見てるんだねぇ。
納得行かないとぶうたれている私たちに構わず、ギルマスは話を続ける。
「とりあえず、目立ちたくないし目をつけられたくもないってことで良いんだな。
なら、ギルドとしてもそのことを公表しないし、できるだけ穏便に済むように工作してやるよ。
だから、お前たちも自重して行動しろ!あんまりデカイことヤラかすと誤魔化しきれないからな。
いいな、分かったか!」
「「「はい、気をつけて自重します。」」」
うーん、なんだか怒られたイタズラ小僧の気分だよ。
「で、ナタリア。
俺達が街に戻ってくるまで間はコイツら、どうだったんだ?」
「あー、えーとですね。
常時採取依頼に出て、高ランクのグランドバイパー(大型蛇の魔物)を狩ってきましたね。
あと、街のとあるパン屋がハバネさんが教えた新作のお菓子で大騒ぎになったり、
鍛冶区の職人たちがハバネさんの話した作刀方法のせいで大盛り上がりしてたりします。」
「・・・・・(ピクピク)」
あーー、ギルマスが眉間にシワ寄せて苦悶の表情に・・・、これは逃げたほうが良いかな。
「お前らぁーー!! あの騒ぎの後のほんの数日でさえ、大人しくしてられねぇのかよぉ?!
どの口で目立ちたくないなんてほざいてやがるんだぁ!!!」
キレれたギルマスの大声が部屋の中に響き渡る。
「「「ごめんなさーーい!!」」」
そして私たちは弾かれるように部屋を飛び出して一目散に逃げ出したのだった。
読んでいただきありがとうございます。
とりあえず、ヒュドラ編・・・ぽいものはこれで終了です。
今後の展開はまだ考えていない、というか纏まっていない感じなので、成り行きに任せて進めてみます。
これからも応援してもらえるとありがたいです。




