#35 乱入、妖精の翅(シルフィーフェザー)
戦況は最悪と言ってよかった。
持てる総力を結集して3つ目の首をやっとの思いで潰しても、そのときには最初に潰した首が復活しているのだ。
だが、かろうじてその状態を保っていたのだが、戦いが長引き疲労が蓄積していけばその均衡も崩れていく。
ガリーさんは、ギルマスとして犠牲を最小限に抑えての撤退を考え始めているようだ。
「一度体勢を立て直すぞ。
牽制しつつ、一旦ヤツとの間合いを取れ!
負傷した者は、優先して下がらせろ!」
ヒュドラの首をそれぞれ警戒しつつも、それぞれのパーティーはスキを見せることなく後退していく。
だが、一人のハンターがガリーの目の前で体勢を崩し倒れ込んだ。
足に大きなダメージ負ったらしく、素早く動けるようには見えない。
ガリーさんは素早くフォローに回るが、現状でそれはヒュドラにとって恰好の標的でしかない。
牙を剥き襲いかかるヒュドラの首が二人に迫っていく。
その時、ヒュドラの首の側面へ高速で何かが飛んでくると、それはルミーナの姿に瞬時に替わり、それまでの勢いをそのまま乗せた強烈な足蹴りをヒュドラの横っ面に叩き込んでいた。
弾き飛ばされたヒュドラの首をよそに、そのまま着地したルミーナはガリーさんたちに抱きつくと・・・
「リーリィ、あとは任せた!」
そう叫ぶとその姿は消え去り、入れ替わって現れたシフティはすぐさまその場を飛び去っていく。
「ん、分かってる。
・・・大気を為す根源よ、その営みを停めて、万物を凍てつかせよ!」
今、リーリィの唱えた呪文、それは実はリーリィのオリジナル呪文だったりする。
ここ最近、暇さえあれば私が教えた科学の概念を元に二人してアレコレやったんだけど、そんな中で出来てしまったのがいくつかの新魔法。
でもって、今のは大気中のとある分子を高圧縮して極低温の液体(・・・多分液体窒素だと思う)を作り出す魔法だったりする。
才能か、偶然かはさておき、きっかけを掴んだリーリィと迷走しまくった挙げ句に勢いででっち上げてしまったのだったが、後悔はしていない。
リーリィが詠唱を終えると、ヒュドラの頭上から大量の液体が降りかかり次の瞬間、周囲がモウモウと立ち込める白い霧に覆われた。
立ちこめる白い霧は、熱湯から立ち上る湯気と異なり押しつぶされるように大地へ沈み込んでいく。
そして雲上のようなその場所に凍りついたヒュドラが微動だもせず佇んでいた。
「まだ、制御が甘い、そんなに長くは持たない、ハバネ、急いで!」
私に声をかけつつ、自身も安全圏へ退避する。
私は、安全圏に逃れたガリーさんに駆け寄ると自分たちが考えた作戦を伝えた。
「アイツに効きそうな作戦があるんですが、ちょっと協力してもらえませんか?」
「なぁ?! お、お前たち、どうしてここに?!
いや、今はそんなことどうでもいい!!
ホントにこの状況をなんとか出来るのか?!」
「状況さえ揃えられれば、多分なんとか出来ると思います。
でもそれには、ここに居るみんなの協力が必要なんですよね。」
「どうせこのままじゃジリ貧だ。
お前の手に乗ってやろうじゃねぇか!
で、何すりゃぁいいんだぁ?」
さすがは百戦錬磨のギルマス様だねぇ、決断が早いよぉ。
「やってほしいことは、ヒュドラの口を同時に開かせること。
ヒュドラはどの首も属性攻撃は大きく開けた大口からからだよね。
だから、ヒュドラの属性攻撃のタイミングをぴったり合わせて欲しいんだけど。
どう、出来そうかな?」
「ちょっと待て!
そういえば、ヤツはこっちの攻撃のインターバルを読んだかのように属性攻撃してたような・・・。
うむ、あの時も・・・、アイツが仕掛けてたときもそうか。
ハバネェ、なんとかなるかもしれねぇ。」
「さっすがはギルマス! 頼りになるねぇ。」
「だが、本当になんとか出来るんだな?! ハバネ!」
「うん、任せといて。息の根は・・・止められないかもだけど、
頭の方はなんとかするから、トドメはギルマス達に譲ったげる。」
「よし、すぐに始めるぞ。
おーーい、パーティーリーダーは集まれぇ!!
最後の反撃に打って出る、作戦会議だ!」
ギルマスと別れた私は、ルミーナたちの元へ駆け寄って笑顔で作戦開始を告げる。
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凍りついたと言うより、単に低温で行動不能になっていただけのヒュドラは、直ぐに行動の自由を取り戻していた。
だけど、流石に今の攻撃でヒュドラも警戒心が高まったのか、こちらの出方を見定めるように睨み合いが続けている。
体制が整った私たちは、ギルマス達が4つの頭を、ルミーナたちが残ったもう1つ頭を受け持つ形で作戦開始だ。
5つの頭に対して同時に波状攻撃を行いつつ、ギルマスの合図でそれぞれのパーティーの持つ強力な遠距離攻撃をタイミングを合わせて叩き込む。
攻撃後、体制を整えるかのように行う回避行動もピッタリと言えるタイミングで各パーティーが同時に行われる。
こういう統率力もギルマス、ガリーさんだからこそなんだろうと思う。
ここまでやれば、ヒュドラもしっかり釣られてくれて、思惑通りに大口開けた雁首を揃えてくれる。
「ハバネェ! 要望通りお膳立てしてやったぞ!」
「りょーかーい! あとは任せてぇ!
んじゃあ、みんなぁ、行っくよぉ!!」
私はフィーリアの隠形魔法で気配を殺して待機させていたドローンたちに行動を起こさせる。
大口を開けるヒュドラの首の真正面に霞を払うように姿を表す私のドローンたち。
突然の状況でヒュドラの目に戸惑いが見える、だがもう遅いんだよ!
火属性のヒート、風属性のエアー、水属性のティア、土属性のクレイ、雷属性のスタンたちが対抗属性の首に向かって突撃していく。
持てる最速で駆けるドローンたちは、属性攻撃を放とうとヒュドラの開けた大口の中に次々と飛び込んでいった。
慌てて口を閉じるヒュドラの首たち、だがもう遅いよ。
私の魔力を目一杯注ぎ込んだドローンたちが、ヒュドラの体内に侵入していく。
そして私は必殺の命令をドローン達に告げる。
「エレメンタル エクスプロージョン!!」
読んでいただきありがとうございます。
戦闘シーンは難しいです・・・(汗
これからも応援してもらえるとありがたいです。




