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#30 初めての二日酔い


 日も落ちて夜の帳に包まれたクロスロードの街。


 その中央広場は今昼間のような盛り上がりに包まれていた。


 広場のあちこちに飲食の屋台が立ち並び、広場の一角では解体職人が群がって巨大な蛇の魔物が今まさに解体されている最中だった。


 昼間に起こった街が壊滅するのではと思うほどの厄災、その厄災を退けたハンターたちの活躍。


 浮かれる広場では、厄災を乗り越えたことを喜び、街を救ったハンターたちを讃える宴が繰り広げられているのだ。


 予測していたのに身に降りかかるであろう厄介ごとから見事に逃げ損なった私たちは、街の住人や街を守るために戦ったハンター達に取り囲まれて、感謝の嵐という厄災に今まさに揉みくちゃにされている状況だ。


「街を守ってくれて、ありがとうな。」

「かっこよかったよ、ハバネちゃん!」

「おねえちゃん、ありがと。」

「おいおい、怪我とかしてないよな。」

「落ちたアイツを見た時はスカッとしたぜ!」

「やっぱ、妖精の翅(シルフィーフェザー)は凄ぇぜ!」

「空で魔物をぶっ飛ばすって、ルミーナいつの間に?!」

「リーリィの魔法もヤバかったぞぉ!」

「「「「(ワイワイ、がやがや、やいのやいの・・・)」」」」


 感謝感激のゲリラ豪雨に見舞われて、それはもう業務用洗濯機に放り込まれたYシャツのように揉みくちゃにされる私たち。


 そんな私たちをフィーリアとアオは人の手が届かない高さにふわふわ浮かんでニコニコと眺めていやがる。


 それも両手に串焼きだのの食べ物を抱えて、完全に見世物の観客状態だ。


 まあ、この騒ぎじゃ仕方ないか・・・、無事避難しているということにしておこう。


 どこぞの裸祭りの神男のように人の濁流に流されて宴会(うたげ)の中心に運ばれた私たち3人に今度はご馳走攻撃が襲い掛かってきた。


「さあさあ、遠慮なく食ってくれ!」

「何でも好きなのを飲んでくれ!」

「姉ちゃん、これ旨いぞ。」

「うち一番の人気料理だ、ぜひとも味わってほしい。」

「とっておきの特級肉のステーキだ!どんどん食ってくれ!」

「こっちは幻のワインだ。あんたらのために出してきたぞ!」

「乾杯だぁ、野郎どもぉ!! がははは。」

 ・・・・・・


 何を食べて何を飲んだか、それよりどうやって宿まで戻ったのかもわからない状態で私たちはベッドで目を覚ました。


 そして、生まれて初めて味わう二日酔いにもがき苦しんでいた。


「うううー、気持ち悪い・・・、頭痛い・・・。」

「なにこれ? 世界がぐるぐる回ってる・・・、うぷっ。」

「毒攻撃・・・、それとも、精神攻撃・・・、し、死ぬぅ・・・。」


「だいじょーぶかぁー? おーい、しっかりしろよ。」


 誠意を感じられないフィーリアのいたわりの言葉も、今の私たちには届かない。


「ヒーリィ、来てぇ。そしてこの状態を何とかしてぇ。」


 回らない頭で無茶ぶりをする私、それでも呼び出されたヒーリィは私のそばにやってきた。


 観察するように私のベットの周囲をゆっくり漂っていたヒーリィは私の頭上で動きを止めると、その本体が淡い光を発した。


 すると私の身体にまとわりつくような不快感がすうーと消えていくのを感じた。


「ああっ、身体が楽になってきた。ヒーリィの回復魔法が効いてきたみたい。

 でもあれ? 治癒魔法は傷や怪我にしか効かなかったはず。

 解毒なら効くかもだけど、ヒーリィはまだ使えないはずだよね。」


 私は楽になった身体を起こして、ヒーリィのステータスを確認する。


「ああ、これかぁ! 治癒のほかに体調を整える『快癒』が生えてる。」


 ヒーリィもレベルアップの恩恵を受けて新しい魔法が使えるようになっていたらしい。

 タイミングが良いというかなんというか、まあお酒の失敗でまたお世話にならないようにしなきゃね。


「ヒーリィ、ルミーナとリーリィにもお願い。」


 しばらくして二人もヒーリィの魔法で苦痛から解放された。


「二日酔いで苦しんでる大人をよく見たけど、こんなに苦しかったんだね。

 なんで苦しいってわかってて、何度も二日酔いになってるんだろ、馬鹿なの?」


「気持ち悪かった、私、もうお酒、飲まない!」


 私も二人に同感だけど、お酒の味を覚える前に苦痛を知ってしまったのは良かったのやら悪かったのやら。


 まあ、お酒で失敗する可能性は減ったんだから良かったということにしとこう。


 私に寄ってきて心配そうに触手でおでこをさするアオを撫でていると、


「ハーバーネー、アタイは腹減ったぞ。なーんーかー食わせろぉ!

 んで、今日この後どうするんだぁ?」


 ケッタンの上に胡坐で座り腕を組んでるフィーリアが、そう声をかけてくる。


「んーー、そうだなぁ。

 あの後どうなったとか気になるからギルドに顔出してみよっか。

 でも、その前に屋台で何か食べていこうね。」


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 まずはご飯!ということで、屋台に向かったんだけど、街のあちこちに潰れた酔っ払いが屍を晒していた。


 まあ、昨夜のバカ騒ぎの慣れの果てなんだろうね、うん、放置の方向で。


 お気に入りの屋台がいつものように店を出していたので、今日はそこのを買うことにした。


「おじさん、すごい顔だけど休まなくてよかったの?」


 目の下の凄いクマができてて完全に徹夜だと思うおじさんに声をかける。


「めでたいお祝いはお祝いで、商売はまた別だ。

 お前らみたいなお得意様を放っとけねぇから、休むわけにはいかねぇよ。」


 疲れた顔の不気味な笑い顔に若干引きながら、それぞれいつものお気に入りを買う私たち。


 それを食べながらあちこち破壊された街を眺めながらギルドに向かって歩いていく。


 笑顔で瓦礫をかたずけ、助け合いながら建物を修復する街の人々。


 ギルマスから聞いたけど、物的被害はかなりあったが、人的被害はほとんどなかったらしい。


 私たちのおかげだと皆に言われたけど、あのとき私たちに見えてたモノなんてほんの一部だ。


 見えないところで頑張ってたみんながいたからこそこういう結果になったんだと思う。


 声を掛け合い、避難を助け、守るために魔物に向かっていった、そんな勇気ある人がたくさんいたはずだから。


 何のことはない。

 私のおかげでも、運が良かったわけでもない、みんなで自分の街を守っただけ。


 国家の庇護もなく、みんなで助け合いながらここまでの街を創ったのは、

 みんなのためと頑張ってきたこの街の人々なのだ。


 だから、優しい人がいっぱいのこの街が私は好きになったんだよね。


 そんなことを考えてるうちに、私たちはハンターギルドの到着していた。


読んでいただきありがとうございます。

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二日酔いを解消した「快癒」について。


 この世界では、

「治癒」は身体のキズや怪我、いわゆる破損を修復する魔法またはスキル。

「快癒」は身体の不調や病気を癒す魔法またはスキル、ある程度の解毒(や有害物除去)も含む。


 どちらも効果は持っている魔法やスキルレベルに対して相応となります。

 早い話が、治り具合はレベル次第ということです。

 なのでレベルアップが待てない場合、毒に対しては「解毒」といった特化した魔法が一般的に使われるって感じで考えています。

 二日酔いは有害物質のよる状態異常扱いなので、快癒や解毒が有効となります。

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これからも応援してもらえるとありがたいです。

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