#29 シビレた蛇はタコ殴り
私たちは近くにいた逃げ遅れた街の人たちを集めると、フィーリアに風の障壁を張ってもらい、とりあえずの安全を図った。
「あいつの風魔法じゃ、アタイの障壁は抜けないからな。
だからハバネは早いトコ、アイツをぶっ飛ばしちまってくれ!」
「うん、任せて! 今からアイツを叩き落すドローンを創っちゃうからね。」
そう言うと周囲を警戒するルミーナたちに守られるながら腰を落とし目を瞑りドローンイメージに集中する。
イメージするのは槍、投げて突き刺さる投げ槍をイメージして、そこに付与するのは電撃。
一瞬で敵を麻痺されるスタンガンのように、敵に突き刺さり電撃で麻痺させて動けなくする、そんな攻撃方法を持つドローンのイメージを試行錯誤しながら固めていく。
ようやく固まったイメージが目の前で具現化していく。
そして現れたのは、シンプルだけど鋭い槍先を持った投げ槍というか、大きな弓矢にも見える胴体の先端から1/3ぐらいの位置から四方に伸びた4つのプロペラを持ったドローンだ。
付与したのは、強化魔法と電撃魔法。
強化魔法で強度と機動力が強化され、触れた瞬間に込めた魔力相応の強力な電撃を敵に叩き込む、空飛ぶ蛇を地面にたたき落とすための必殺兵器の完成だ。
「この子の名前は「スピア」、電撃が付与されているから「スタン-スピア」かな。
この子を使って、アイツを地面に引きずり落とすよ!」
空に向かって直立したまま浮遊するスピアが、ゆっくりとルミーナの方に移動する。
「お願い、ルミーナ!
スピアを目一杯全力でアイツに投げて!」
「わかった、ハバネ、任せて!
思いっきり行くからね!」
そう答えたルミーナは自身の身体に強化魔法をかけると、目の前に浮かぶスピアを掴み投擲の構えに入る。
「ヘビ野郎! これでも喰らえーっ!!」
勢いよく放たれたスピアが、真っ直ぐにアンピプテラめがけて突っ込んでいった。
だが、周りのハンターたちが放つ攻撃よりは鋭いものの、流石に高ランクの魔物だけあってスピアの攻撃も苦もなく躱されてしまう。
アンピプテラの脇をかすめて飛び去っていくスピア。
でもね、槍の形をしていてもスピアも私のドローンなんだよ。
「一度躱したからって、それで攻撃の終わりじゃないよ!
さあヤっちゃって! スピアッ!!」
飛び去るスピアが、その勢い殺すと瞬時に180°反転するとプロペラの推進力を最大限発揮して、今飛んできた軌跡を逆行するように飛び出し、再度アンピプテラに襲いかかる。
すぐにその動きに気がつくアンピプテラ、だが流石に虚を突かれたのか今度はかなり体勢をを崩しながら、かなり際どい避け方になった。
スピアの攻撃はその後も執拗に繰り返され、アンピプテラも回避だけで精一杯となり攻撃する余裕をなくしていく。
アンピプテラとスピアの機動力はほぼ互角のようで、双方決め手を欠いた状態で状況は膠着してしまった。
・・・いや、少しずつだがスピアの動きに慣れてきたアンピプテラが優勢になりそうだ。
とはいえ、ここで引くわけに行かない私は必死でスピアをコントロールする。
そんな私の傍らでお互いに見つめ合い、目で相手の考えを読み取ったルミーナとリーリィ。
「ルミーナ、敵の魔法攻撃動作、5秒後に、隙ができる」
リーリィの意図を読み取り、即座に行動を起こすルミーナ。
アンピプテラは、スピアによる攻撃の元凶である私を睨みつけ身の内に魔力を滾らせはじめた。
気配を察した私は即座にテクトで守りを固める。
「シフト!」
その時、アンピプテラの眼前に高速の飛翔物体が飛び込むと、次に瞬間、飛翔体がいた空間に剣を構えたルミーナが出現する。
空中で構えた剣を全力で振り上げるルミーナ。
「ちょっ! 何やってんのぉ、ルミーナぁ?!」
顎を下から思いっきり殴り飛ばされて頭を上方に跳ね上げてしまうアンピプテラ。
「ハバネぇ! やっちゃぇーーっ!!」
落下しながら私に向かって叫ぶルミーナは、次の瞬間シフティと入れ替わるとシフティも即座にその場を離脱する。
攻撃を受けてほんの数秒だが動きを止めるアンピプテラ、だがその数秒があれば私には十分だった。
高速で迫ってくるスピアが、その勢いのまま、アンピプテラの後頭部に接触する。
高ランクに違わぬ硬い鱗に守られてはいたが、それでもスピアの槍先が数cm食い込んでいる。
スピアが本領発揮するにはその数cmが必要だった。
私の魔力をたっぷり注ぎ込んだ電撃がアンピプテラの体内を駆け巡っていく。
弾かれるように硬直したその体表には、凄まじい稲妻のような放電の火花がほとばしる。
意識を失った翼持つヘビは、そのまま糸が切れたように地上へ落下していく。
街の中央広場に轟音を立てて激突するアンピプテラだったが、まだ死んでいないみたいだ。
さすがは高ランクの魔物と言ったところかな。
「さあて、宣言通り地上に叩き落としてあげたからね。
あとは街をこんなにされて怒り心頭のハンターさん達に任せますねぇー!!」
私の声が届いたらしいギルマスのガリーさんがハンターに向かって吠える。
「よぉーし、お前らぁ!!
ハバネがヘビ野郎を地上に叩き落としてくれたぞ。
俺たちの街をこんなにしやがった恨みを思いっきり叩き込んでやれぇーーっ!!」
「「「「「「「うおおおおーーーっ!!」」」」」」」
空の魔物に手を出せず、ただただ耐えていたハンターが群がるように落ちた魔物に向かっていく。
「うわぁー、どこにこんだけのハンターが居たの?!」
まあ、これなら魔物に負ける心配はなさそう。
目の前に大騒ぎを他人事のように眺めている私の元に、守りに回ってくれていたフィーリアやアオ、私をフォローしてくれたルミーナとリーリィが笑いながら集まってきた。
読んでいただきありがとうございます。
これからも応援してもらえるとありがたいです。




