#24 パーティ・ネーム
ギルドへの報告というか、言い訳を済ませた私たちは、陽の落ちた街を歩きながら屋台で上等そうな食べ物を買い漁っていた。
「ハバネのヤラかしもうまく誤魔化せたし、魔物からも街を守れたんだから、宿でお祝いしようね。」
買い込んだ食べ物を抱えて上機嫌のルミーナ。
「フィーリアや、アオも、お腹空かせてるはず。きっと、喜ぶ。」
そうやってそれぞれの好物なんかを買い込んだ私たちは、宿に戻るとささやかな打ち上げパーティーを楽しんでから床についた。
寝坊と言える時間までゆっくりと睡眠を堪能してから、いつもよりもかなり遅い時間にギルドへと顔を出した。
朝の喧騒と打って変わって閑散としたギルドを訪れると、私たちを見つけたナタリアさんが声をかけてきた。
「あら、ハバネさん、昨日は結構な大活躍をしたそうね。
ギルドマスターから話は聞いてますよ。今すぐ報酬の方、用意しますね。」
何かを取りにカウンターの奥へ向かうナタリアさん。
ナタリアさんがいたカウンターには、静かに着陸したアオがおとなしくしていた。
いつも可愛がってくれるナタリアさんを待っているのだろう。
しばらくしてお金の載せたトレーを持ってナタリアさんが戻ってくると、アオを見てニッコリ微笑み、その脇にトレイを静かに置いた。
「こちらが負傷したハンターを助けたことと、街に迫っていた魔物を排除したことへの報酬です。」
片手でアオを撫でながら、見るからに高額な報酬を私たちに差し出す。
アオも嬉しそうに腕のような触手を振っている。
「わおっ!ハバネに出会ってなければこんな大金、お目にかかれなかったよね。」
ルミーナとリーリィは、目の前の大金にちょっと戸惑ってる。
「それから、ハバネさんたちが受けていた採取依頼ですが、あのエリアへは当分立ち入り禁止となりますのでこちらでキャンセルの処理をしておきました。
当然、ハバネさんたちにはペナルティはかかりませんので安心してください。」
「こんなに貰っていいんですか? まあ貰えるなら遠慮はしませんけど。」
そう言っていつものように異空間収納ができるキャリィを呼び出して、大金を収納させる。
大金をそのまま持ち歩くのは、さすが怖いもんね。
「それで、今日もなにか依頼を受けますか?
このところ、初心者向けエリアに制限がかかったりして、採取モノが不足気味なんですよねぇ。
ハバネさんたちは、毎回量も質も安定してるからけっこう期待してるんですよ。」
アオを愛でながらも、ギルドのスタッフらしく対応をするナタリアさんに、
「流石に昨日は大変だったので、しばらくはお休みの予定ですよ。
装備関係もそろそろ見直ししたほうが良さそうって、みんなで話ししたところだし。
なんで、今日はこれで帰りますね。」
そういって軽く挨拶すると、みんなでギルドを後にする。
「さーて、この後どうしようか? お昼ごはんまでにはまだ時間あるし。
ナタリアさんに話したみたいに、武器屋とか回ってみる?」
当初の用事を済ませて、空いてしまった時間をどうしようかというルミーナ。
「そうだねぇ。
私としては、魔法巻物をイロイロ見てみたいかも。
今後の参考にしたいしね。」
「相変わらず、ハバネは、懲りてない。
新しい魔法陣、私は、ハバネが、ヤラかす未来、しか見えない。」
「リーリィは厳しいね。
まあ、ハバネが今後気をつけてくれるなら、戦力アップに私は賛成だよ。」
なにか微妙なディスりを感じつつも、魔法巻物を扱う魔法屋に足を向ける私たち。
「おい? お前は最近噂の”ドローン使い”だな。
俺たちのパーティに入れてやるから、黙ってついてこい!」
「はあぁ?! なに言ってんの?」
なんだぁ、こいつぅ?
いきなり目の前に愚連隊の親分みたいなガラの悪い男が取り巻き連れて立ちふさがっていた。
「お前のドローンって奴は結構使えるって話じゃねぇか。
俺たちが有効活躍してやっから、黙って俺たちのパーティに入りやがれ!」
こいつぅ、頭腐ってんのか?! こんなのにホイホイとついてくと思うか、普通。
「お断りします!
私はこの仲間とパーティ組んでますから今後もパーティを移るつもりはありません。」
「はぁ? 一つ☆の新米が何言ってやがる。
二つ☆の俺たちの言うことが聞けないってのか、いいから黙って言う事聞いてりゃぁ良いんだよ。」
そういうが早いか、背中の大型戦斧ハルバートを振りかざす愚連隊ハンター。
「テクト!!」
振り下ろされた攻撃を眼前で受け止めるテクトのシールド。
「くっ! こいつがドローンか?
おいテメーら、構うことなねぇ、こいつの仲間もやっちまえっ!」
こいつら、ルミーナたちにまで手を出す気か!
でも、魔物の大群を倒した経験値、私だけが得た訳じゃないんだよねぇ♪
「身体強化っ、瞬駆!」
「 氷結の牙!」
「カマイタチッ!」
ルミーナやリーリィもしっかりレベルアップしてるんだよね。
いとも簡単に反撃され、公衆の面前で叩き伏せられる悪漢共。
私もセイバーでいつかの決闘のごとく悪漢リーダーの装備を切り落としていたりする。
「き、今日はこのくらいで勘弁してやる!覚えていやがれ!」
清々しいまでの小悪党っぷりで早々に退場する悪漢共。
「私は、この仲間とパーティ「妖精の翅」として活動していくんだから、今後誰の勧誘も受けません!」
今撃退した悪漢だけでなく周囲に聞かせるように宣言する私。
「ハバネ、今のって私たちのパーティ名?」
「あー、えーと、この間から考えてたパーテー名なんだけど、ダメかな?」
「妖精って、フィーリア? それと ハバネの ドローンにも 掛けてる?」
「アタイがパーティ名? それすっごくイイなぁ。」
「翅はまんまハバネのことだよね。
うん、良いよ。
みんなも気に入ってる。」
うんうん、みんなにも好評のようだね。良かったぁ。
−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−−
それから少ししてある酒場にて。
「お前、さっきの騒ぎ見たか?」
「ああ、バカが不可視の腕に食って掛かったってやつだろ。」
「そうそう。
で、軽くあしらわれてたんだが、ハバネファンのベテラン連中がもう少しで飛び出すところだったらしいぞ。」
「ハバネちゃんって、なにげにベテランハンター連中に人気あるんだよなぁ。」
「若手が萎縮しがちなベテラン連中を、ハバネちゃんは気さくに相手してるからぁ。」
「見た目は可愛いのに、実力は折り紙付き、でもそれを鼻にかける様子は皆無。
オッサン連中が可愛がりそうな要素満載だぜ。」
「まあ、このクロスロードでハバネちゃんたちに敵対して無事に済むヤツはいないだろうな。」
「違いねぇ!」
目立ちたくないハバネは、確実にクロスロードで衆目を集めているようである。
本人にまるで自覚はないのであるのだが。
読んでいただきありがとうございます。
これからも応援してもらえるとありがたいです。




