#21 ドローン魔法陣
数メートル程度の低い崖に囲まれた窪地の中心で不気味にうごめく蛇の群れ。
崖の上からそれを確認した私は、ドローンたちを所定の位置へ向けて放つ。
この間にも、ルミーナやリーリィたちが群れがバラけないように抑え込んでくれている。
「さあ、エアー、ティア、ヒート、こっちへおいで。お仕事だよ。」
風、水、火のそれぞれの魔法属性を付与したドローンを呼び集めて、群れの上空へと送り出す。
これから最も初歩的な魔法陣、早い話が3つの魔石を正三角形の頂点に配置する。
その正三角形は、真円を組み合わせることで描かれ、この円と直線の組み合わせた図形が一般的に魔法陣と呼ばれているのだ。
私にはサテラを用いて周辺情報を把握するために使っているマップイメージというものがあるのだが、最近機能が進化してマップ上に任意のラインを描けるようになっていた。
注目ポイントや予定経路などマップの使い勝手を向上させる機能なのだが、これを利用してマップ上に魔法陣を描くこともできるのだ。
こうして脳内のマップに描いた魔法陣の魔石ポイントにドローンを静止させれば、ドローン版魔法巻物の完成だ。
「さーてと、ドローンを使った特大魔法陣の威力を試させてもらいましょうか!」
実は、みんなに内緒でこっそりとドローン魔法陣を試していたんだよね。
誰もいない森の中で、一辺1m弱の小さな三角形にドローンを浮かせて、ほんのちょっぴり魔法を込めてみた。
発動したのは、高温のこもった水蒸気を巻き込んだ旋風だったが、これでも弱い魔物なら倒すかダメージを与えられる威力はあると思う。
風属性のエアー、火属性のヒート、水属性のティアを使ったから、熱を持った水蒸気に旋風の組み合わせだったようだ。
今回は、10メートル以上のサイズで、私のありったけの魔力を込めるつもりだから、かなりのパワーアップが期待できると思う。
予想通りの効果が出るか期待をふくらませる私は、目の前で不気味に蠢く蛇の魔物たちの上空に魔法陣のイメージを浮かべそこにある正三角の頂点にドローンを飛ばした。
その時、私の目の前で予想外の現象が起こった。
脳内のマップ上にだけ描かれるはずの魔法陣が、実際の地形の上空に現れたのだ。
コンサートイベントなんかに使われるレーザー光線のように光のラインで描かれた巨大な魔法陣がである。
これはちょっと派手過ぎっていうか、演出過剰だよ。
こんなのバレたら、イロイロ目を付けられるラノベのテンプレパターンまっしぐらじゃん?!
離れた場所にいるルミーナやリーリィ、フィーリアたちも上空を見上げて唖然とした顔をしているのが目に入る。
おっと、今はなんでこうなったとかを考えるより、魔物たちをなんとかする方が先決だった。
「よし! 魔力を込めて魔法の発動させるよ!!」
とにかく、目の前の魔物の群れをなんとかすべく、ドローンたちに魔力を込める。
と同時に上空の3機のドローンが輝くと、群れの直上に火球・・・というには火力が凄まじすぎる球体が現れた。
「アレってプラズマ?!」とうろ覚えな感じで記憶にあった言葉が口に出る。
続いて、火球の周囲に大小無数の水球がが出現、さらにその周囲を毛糸玉に毛糸を巻きつけるように凄まじい風の流れが包み込んでいく。
群れの上に浮かぶかなりの大きさの風の障壁に覆われた風球、それが瞬間的にピンポン玉サイズに急激に縮小したと思うと凄まじい爆発音を伴って天に突き刺さるがごとくに白い巨大な柱が目の前に出現していた。
間近でその過程を観察していた私には何となく何が起きたのか理解できた、とてつもない威力のいわゆる水蒸気爆発が起きたんだと思う。
そうして生まれた超高温の水蒸気が強力な風の障壁に閉じ込められているのが目の前に立つ巨大な柱なのだろう。
それなりに離れたところにいる私にさえ、溶けた鉄に満たされた溶鉱炉を覗いているような熱量を感じているのだから、あの柱の中はとんでもない高温になっていると思う。
想像を遥かに飛び越えた状況にしばらく我を忘れていたが、すぐに魔力を止めて魔法の発動を止める。
3機のドローンは異常事態を感知して緊急回収されており無事なことを確認している。
発動していた魔法は、上空へ立ち昇るように霧散して消えた。
「この世の終わりのような大スペクタクルをまさか肉眼で見るとは?!
予想の数百倍は威力がありそうだよ・・・。
ああー、でもこの状況はちょっとマズイかなぁ。
きっと、こういうのを”やらかしちゃった”っていうのかなぁ。」
崖の上で、しゃがみこんで頭を抱えている私のところにみんなが集まってきた。
「ちょっと!! ハバネっ! 今の何ぃ?!」
「スゲェー、スゲェー、なんだぁ、あれぇ!!」
「ハバネ、これは、ヤリ過ぎ! ちょっと、説教が、必要!!」
大騒ぎのみんなに囲まれてうなだれる私を、アオが触手を伸ばして頭をなでてくれる。
目の前の惨状から目をそらし、現実逃避してアオの優しさに溺れようかなぁ・・・。
「これってさ、見なかったことにしてもらうのは、やっぱ無理・・・、だよねぇ?」
「「「うん、無理。」」」
現実に帰ってきて振り絞った私のお願いは、一刀両断で切り捨てられました。
「あのさ、ドローンを使った魔法陣って威力ありすぎて、皆に知られるととんでもない騒ぎになるよね?」
「「「うん、うん。」」」
「ハバネって、なんだかんだいっても、結構ヤラかしてるよね、ちょくちょくさ。」
私を見ながらルミーナがにやけ顔がそんな事を言う。
「ハバネ、自覚してない、けど、何かやるたび、みんなから、変な目で、見られてる。」
「イイじゃん、イイじゃん! アタイはハバネの事スッゲー面白いやつだと思ってる!」
チョット待って! 何、私いつもそんな変なことしてるってこと?
「私って、いつそんな変なことしてたの? 全然身に覚えがないんだけど。」
「ハンター登録するときの、ドローン使った大活劇とか。」
「妖精を、仲間にして、デススパイダーを、討伐、とか。」
「えっ、アタイ? アタイよりアオのほうがよっぽど変じゃね?」
「ああーー・・・・・。」
改めてあれこれ思い出して、ちょっと頭を抱えた。
十分ラノベのテンプレ踏んでるね、私。
「わたしって、ドローンだけじゃなくて、この世界の常識とかイロイロ、トバしまくってる?」




