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#15 スライムくん、がんばる

「じゃあ、いつものようにルミーナは高所や難所の足場の悪いところをお願い。

 リーリィは周囲の警戒と初手の牽制を任せるからね。

 私はいつものようにドローンで広域を探索して、フィーリアに採取してもらうってことで良いよね?」


 いつの間にやら、ドローンのおかげで視野が広い私がパーティの中で指示を出す役割に。


 私のガラじゃないと思うんだけど、効率を考えたらいつの間にかこうなってたんだよね。


「うん、わかった。危なそうなところは私に任せて!」


「こういう場所、私苦手。だから 周囲の警戒、任せて!」


「ハイハーイ! ケッタンでピューと飛んでいってサクッと採ってくるよぉ!」


 私の掛け声に元気に答えるみんな、スライムくんもフヨフヨとあとを付いてくる。


「それじゃ、みんな今日も頑張ろう!」


 そう声をかけて、それぞれの持ち場へ散っていく。


 獣人であるルミーナはその優れた身体能力で軽々と崖を駆け上がり、足場の悪さも意に介さず、これまでのハンターが諦めて残していった素材を見つけていく。


 私は、サテラを通して広域を走査して、ギルドに依頼のあった素材を探していく。


 探索の対象は私の知識が反映されるようで、一度でも実物を目にしていれば、以降は確実に探索で見つけられるようになってた。


 回収は、どこでも自由に飛んでいけるフィーリアがやってくれるので、二人して誰もだどりつけないような場所を重点的に攻めていく。


 そんな感じで採集に専念しているとどうしても守りが疎かになりがち。いくら強い魔物がほとんどいないとは言え、スキを見せれば襲いかかってくるのが魔物である。


 そういう輩を見張って撃退するのがリーリィの役目になっている。


 足場の悪いこのエリアでは遠距離で仕留めるのが常套、なので攻撃魔法が使えるリーリィが適任なんだよね。


 案の定、ランクは高くないが縄張りを侵されて襲いかかってくる魔物は少なからず居たが、その全てがリーリィの魔法の餌食になっていた。


 岩トカゲ(中型犬サイズのトカゲ、あまり強くない)、トビネズミ(脚力が発達、蹴り攻撃が得意だがあまり強くない)、ソイルワーム(大きなミミズ、なんで砕く口を持つがあまり強くない)といった、油断しなければ大して脅威にならない魔物がほとんどだったみたいだけど。


 そんな中、想定外の攻撃を仕掛けてくる魔物がいた。


「みんな、空から敵! 私の知らない魔物みたい。注意して!」


 索敵に引っかかった魔物に気がついて、私はみんなに警告する。


「アタイ、あいつを知ってるよ。クラックバードだ! 力はほとんど無いけど、けっこう面倒な攻撃してくるよ。」


 フィーリアの説明を聞き、私たちは警戒を強める中、リーリィが魔法で攻撃する。


 動きの早いクラックバードは、余裕でそれを躱すと、私たちがいる壁面の上部に突っ込んでいった。


 カラスほどの大きさのクラックバードが、勢いに乗って足で岩壁を引っ掻いた様に見えたが、大した威力はなかったらしい。


 こぶし大の岩が剥がれ落ちただけだったのだが・・・・・、その欠けた岩は壁面を転げ落ちる際、次々と周囲の瓦礫を巻き込んでいく。


 クラックバードはちょっとしたきっかけがあれば派手に崩れる場所を的確に見つけてそれを利用してくる魔物だった。


 気がつくとちょっとした崖崩れのような状態になって、瓦礫が私たちを目掛けて襲いかかって来ていたのだ。


「うわっ?! あぶなぁ!!」


 比較的上の方に居たルミーナは、大きくなる前の崩落を難なく躱す。


「わわわっ、どうなってるのぉ、もう?! ああ、フィーリアは上空で待機ね!」


 私は足場の良い少し離れた場所だったので少しの移動で難を逃れられた。


「きゃぁああああーーーーっ!」


 リーリィも簡単に躱せそうに見えたのだが、ちょっと崖の端に近すぎたようで、慌てたはずみで足を踏み外してしまった。


 そのまま崖下に向かって倒れていくリーリィの身体。


「にゅわぁわぁーーーっ!」


 その瞬間、どこからともなくロープ状のものが飛び出してきて、リーリィの手首に巻き付く。


「「「えっ、ええええーーっ?!」」」


 驚く私たちが目にしたそのロープのようなものは、ドローンに乗ったスライムくんの触手だった。


 だが、流石に小さなドローンの力だけでは人一人を支えられるとは思えなかったんだけど、なんと!スライムくんは身体の反対側からももう一本触手が伸ばしており、近くの木の幹に巻きつけていたのだ。


 すぐ脇を崩れた岩が駆け抜けていく中、リーリィの体はかろうじて足先だけを残して身体が傾いた状態で踏みとどまった。


「待ってて、リーリィ! 今助ける!」


「スライムくん、もう少しだから頑張って!!」


 スライムくんにできるのはこれが精一杯であろうことを察し、私とルミーナは急いで触手を掴んでリーリィを引き上げた。


 引っ張られた勢いで投げ出されるようにこちらに弾かれたリーリィを抱きと止めるルミーナ。


 私も駆け寄り、リーリィの状態を確かめると、ホッと安堵のため息を漏らす。


「もう、大丈夫。二人とも、ありがと。」


 私たちを安心させるようにリーリィは感謝の言葉と口にする。


 すっかり触手を短く縮めたスライムくんが、フヨフヨとリーリィのそばに漂ってくる。


「にゅん、にゅーぅ。」


 眼のような2つの粒を自分に向けるスライムくんを優しく撫でるリーリィ。


「ありがと、スライムくん。君、すごいスライム、なのかも。」 

 

 世の常識をことごとくひっくり返す目の前の不思議なスライム。


 でも、私にとってそんなことどうでもイイんだよ。


 ただ、賢くて優しい、ちょっと不思議な仲間が増えただけなのだから。


---------------


「この子、ホントに何なんだろうね?」


 シッポを揺らしながら、しげしげとスライムを眺めるルミーナ。


「この個体、かなり知能が高い。どう考えても、異常。」


 珍しく、ちょっと興奮気味のリーリィ。


「色もちょっと違う気がしない? 

 よく見かけるスライムはちょっと濁った感じだけど、この子は綺麗に透き通った薄青色なんだよねぇ。

 私、この色好きだなぁ。」


 完全に『うちの子認定』済みの私。


「たぶん、このスライム、特殊個体、だと思う。」


 リーリィの言葉に、シッポを揺らしながら同意するようにルミーナも自分の考えを話す。


「特殊個体って、ごく稀に現れるって言われてる強力な特殊能力持った魔物の変異種のことだよね。

 高ランクの魔物の中から特別強力な個体が出るって話は聞いたことあるけど、スライムみたいな最低ランクの魔物にも出るものなのかなぁ?

 今までそんな話は聞いたことがないよぉ。」


 そうなのだ、元から強い魔物だからより進化したものが現れるというのが一般的な認識らしい。


 それに、スライムは誰も注目しないし、少しぐらい強くなってもたかが知れていて、見えないところで簡単にやられちゃてるのかも。


 まあ、普通に考えても誰かの目に止まる前に死んでるよね。


「でも、普通じゃないスライムが実際に目の前にいるし・・・。

 けど、もうこの子はウチの子だからね!」


「ハバネ、飼うならちゃんと最後まで面倒みなきゃだよ。」


「んっ、まずは名前、付けないと!」


 もうみんなの中では、このスライムを連れて行くことは決定事項になってる。


 それにしても名前かぁ、そういうのあんまり得意じゃないんだよなあ。


「スライムくんの名前かぁ・・・・。スライムくん・・・・・・、スライム・・・・

 見た目はきれいな水色か、ぷよぷよしてる・・・、ゼリーみたい・・・、それともグミ・・・、

 どれも聞いたことあるし、ありがちだよなぁ・・・、

 もう単純でいいや! 綺麗でクリアな青色だから アオ?!

 よし、決めた、アオにしよう!」


「「アオ???」」


「うん!この子の名前は『アオ』にする! 

 君は今日からアオ君だよ。」


「むにょ~ん?」


 ドローンに乗ってフヨフヨ漂うスライムは、私の声を聞いて首を傾げるかのように目にような粒を傾けるのだった。

読んでいただきありがとうございます。


これからも応援してもらえるとありがたいです。

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