#14 スライム on the ドローン?!
今回、ちょっと予約更新時間に間に合わなかった。
なんとか、若干遅刻で手動更新出来ましたが・・・
私達がギルドへ報告をしてから、すぐに今後の方針が発表された。
『依頼を行う場所はハンターランクごとに厳格に区分けされる。』
『勝てないと思ったら、躊躇なく逃げるように!』
『ソロでの活動は禁止!』
『格上相手に無謀な挑戦はするな! 命を大事にしろ!』
早い話、『ハンターの行動を止めはしないが、くれぐれも用心しろよ!』ということのようだ。
「私たちはいつもどおり安全エリアで採集の予定だけど・・・、最近は競争が激しくて簡単に見つけられないかも。」
「んっ、みんな考えは、一緒。」
ルミーナとリーリィが、厳しくなってきた競争率に表情を曇らせる。
「とりあえず、あまり人が行かなそうなところを回ってみよ。」
少々険しい場所でも、フィーリアやドローンたちにかかれば楽勝だしね。」
実は、そういう場所の方が普段から手が入っておらず、上質な薬草や鉱石が見つかったりもするのだ。
「確かに。私たち以外なら採取そのものが命がけになるもんね。フィーリア様様だね。」
「おうっ、いくらでも感謝していいぞ! アタイへの感謝の印はお菓子がいいなぁ!!」
褒められて上機嫌なフィーリアを追うようにして、最近よく行く渓谷に向かう私たち。
今は完全に枯れてしまった急流跡と思われるちょっとした渓谷が、街から割と近いところにある。
斜面の途中には長年の間に作らてた鉱物採集用の通り道が点在しているが、もう手が届く範囲にめぼしい採取物はない状態だ。
なので、進んでここを訪れるものはほとんどいないが、より広い範囲の採取ができる私たちにはちょっとした穴場と言えた。
それと今回はドローンスキルの検証のため、今の制御限界である10機のドローンを飛ばせている。
といっても、これまでに造ったドローンは全部で9機だったので、今回のテスト用に10機目のドローン『テスタ』を急造した。
テスタには、テスト用ということで特に機能も付与も与えていない。
今回はそんな10機を引き連れての賑やかな行軍となっている。
ひとまず渓谷に着いた私たちはすぐに採取は始めず、ひとまず休憩を取ることにした。
もともと危険な魔物とかがほぼいない場所ではあるが、それでも一応安全地帯と言うべき場所に向かう。
が、今日はそこに先客がいた。
「うわぁぁーー、スライムがいっぱいいるぅ! ねえ、あれスライムだよね?!」
初めて目にするスライムらしきものにテンションが上がる私。
そして、アメーバみたいな粘液状のリアル系じゃなくて良かったと心底思った。
その姿は、一言で言えば水まんじゅうか、信玄餅かといった感じの自重で若干潰れ気味の半透明な球体だった。
この世界にスライムがいることは知識としては知っていた。そしてそのスライムは全く脅威にならない魔物だということも。
スライムは人の子供相手でも怪我させられないほど攻撃力がなく、進んで人のそばに寄ってくることもない、まさに人畜無害な存在なのだ。
そんな弱い彼らは危険に敏感と言われ、そのスライムの集まる場所が安全だというのはハンターの常識になっている。
初めて見たスライムに興味津々な私は、近くにいるスライムを捕まえてしげしげと観察を始めた。
「この適度なぷよぷよ感、クセになりそう♪
それにしても本当に半透明なんだね、ちょっと濁ってるけど・・・、中の色の濃い球体が核かな?
ホントに2つの黒っぽい粒があるんだ、たしかに目みたいに見えるよぉ。」
そうやって本から得た知識を一つ一つ確かめていく。
特に目のように見える黒い粒は印象的だ。 ぱっと見はアニメや漫画に出てくるツブラな眼のスライムそっくりなんだもん。
長年の研究で、この粒は常に進行方向側に偏って存在することから、実際に目のような感覚器官ではないかと言われているらしい。
「むはぁ~~~ぁ。」
抱えて、突いて、撫でて、思う存分スライムを堪能した私は、スライムを元の場所に放した。
「それじゃあ、そろそろお仕事を始めようか。」
私のスライムタイムが終わるのを待っていたルミーナたちが腰を上げる。
「ドローンのみんなも行くよぉ、こっち来てぇ!」
周囲を適当に飛んでいたドローンたちが集まってくる。
「あれ? フィーリアは良いとして、一機足りなくない?」
ルミーナのそう言われて確認すると、急遽造ったテスト用のテスタの姿が見当たらなかった。
「テスタ〜? テスタ、どこ?」
キョロキョロと周囲を見渡しながら探していると、ガサガサと音を立てて何かが草むらの中から飛び出してきた。
「なーんだ、そんなところにいたの、テスたあーーーァ?!」
姿を見せたテスタに安心して、そちらに目を見けた私、いや私たちは絶句した。
ドローンの胴体部分に、澄んだ薄青色のキレイに透き通った物体が乗っていたのだ。
ちょこんとドローンに乗るつぶらな瞳の、そうスライムがそこにいた。
「なんで、スライムが乗ってんのぉ?!」
ふわふわと漂うように浮かぶスライム乗せドローンが、ゆっくりとこちらに近づいてくる。
「これは、興味深い! スライムは、謎が多い。」
魔法、魔物など魔力が絡むことが大好きなリーリィは興味津々に見つめている。
黒い粒の瞳がこっちを見ている気がして、観察する位置を少しずらしてみると黒い粒がそれを追うようにして動く。
反対方向に身体をずらすとやっぱり粒が追いかけてくる。これ間違いなく目でしょ!!
好奇心が止められず、思わず人差し指をスライムに近づける私。
「にゅにゅーーー。」
どこから出ているのか、鳴き声とも言えないような気の抜けた音を発しながら、体の一部が膨らみ触手のように伸ばしてきた。
出した指と、伸びた触手がゆっくり優しく触れる。離すとスライムも触手を引く。
再度、指を近づけるとそれに合わせるように触手でタッチしてくる。つぶらな瞳(黒い粒)でこちらを見つめながら・・・
「うわぁーーーっ、なにっ、これぇ?!! もう、可愛すぎるよぉ!!!」
私は、両手でスライムごとドローンを抱えて、ぴょんぴょん飛び跳ねていた。
「決めた! 私この子連れてく!!」
しばらくして落ち着いた私がドローンを離すと、ルミーナが呆れ顔で話しかけてきた。
「ハバネが良いならそれでも良いけど、スライムは人に懐かないって言われてるんだよ。
だぶん、すぐにどっかへ居なくなると思うけどぉ。」
「(コクコク)」
リーリィも同感というように何度もうなずく。
「長くそばに居てくれたら嬉しいけど、その時はその時だよぉ、うん!
ねえ、スライムくん、一緒に来てくれるぅ?」
返事を期待せず、とりあえず素直な言葉を口にする。
「にゅんにゅん♪」
すると、ドローンに上のスライムが返事をするように上下に体を震わせた。
嬉しそうな仕草に見えた私は、優しくスライムを撫でてあげた。
「それじゃ、そろそろお仕事しましょうかね。」
そういって、崖を目指して歩き始める。
「ただいまーっ、ってなんか変や奴がいるぅ?!」
散歩と称して近くを飛び回っていたフォーリアが戻ってくるなり素っ頓狂な声をあげた。
「なんか、私のドローンが気に入っちゃったみたいなスライムくんだよ。」
「なんだとぉ?! スライムのくせにアタイの真似するなぁ!」
全然怒って見えない笑顔でスライムドローンを追いかけるフィーリアドローン。
逃げるようにフヨフヨとゆっくり飛ぶスライムドローンにぶつからないように器用に飛び回るフィーリア。
昔のアニメで見たネコとネズミの微笑ましい追いかけっこのような様子にほっこりする私たち。
だが、その光景にふと違和感を感じた。
「あれっ? なんか変な感じがする。でもそれが何かわからない・・・・」
なんとももどかしい感覚を感じながら2機のドローンを眺めていて、ハッ!と気がついた。
「なんで、スライムのドローンがそんな動きしてるのっ???」
そうなのだ、何の指示もしていないし、コントロールもしていないスライムが乗っているだけのドローン。
本来なら、待機状態で勝手に動くことはないはずなのだ。
なのに今はフィーリアから逃げるように飛んでいる。
「もしかして、スライムが動かしてるの? でもフィーリアみたいにペアリングしてないはず。うーーーむぅ・・・」
今わかっている『ドローン創造』スキルでは起きるはず無いことが起きてる目の前の現実に頭をひねるけど、分からんものは分からん。
じっとスライムくんを見つめると、目のような二つの粒が身体の中で傾く。その様子がまるであざとく小首をかしげる仕草に見えた。
「ふふっ、まっ、いいっかぁ。スライムかわいいし♪ 楽しそうだし♪」
「ハバネ、逃げたな。」
リーリィ、冷静なツッコミありがとう。
「ハバネって、けっこう適当な性格だったんだね。私そういうの結構好きかも♪」
ルミーナにも呆れられたけど、特に問題もなさそうだし、スライムくんのことはオイオイ調べればいいよね。
「じゃあ、とりあえず今日のお仕事をチャッチャと済ませてから、スライムくんと思いっきり遊ぼう!」
そういって、採集作業に取り掛かった。
読んでいただきありがとうございます。
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