#00 プロローグ
私、羽翅はドローンが大好きだったんだよね。
この羽翅という名前は大空を翔る鳥のように自由に人生を謳歌して欲しいとお爺ちゃんが名付けてくれたんだって。
まだ戦争をやってたお爺ちゃんの子供時代、その時に見た戦闘機が凄くカッコ良かったって言ってた。
それで最後は旅客機の機長にまでなっちゃった筋金入りの飛行機好きだったお爺ちゃん。
死ぬまで飛行機バカだったんだよって親戚の叔父さんが笑って話してくれたっけ。
そんなこともあってか、私はちっちゃいときから空を飛ぶものが好きで、中でもイベントで見た草原の空を自由に駆けるドローンを見たとき、一発でその虜になっちゃった。
あらゆるものが逃れられない重力と言う名の戒めから解き放たれたみたいに、ある時は上昇し、空中で静止し、あらゆる方向へ自在に飛翔するその機体は、まさに自由を体現しているんだと感じた。
最初は玩具みたいな小さなラジコンドローンを買ってもらって、それで夢中になって遊んだ。
子供の手のひらにも軽く乗るほどの小さなその機体は30分充電してもたった3分しか飛べない、まさにオモチャって物だったけど、それでも嬉しくて夢中になって飛ばしまくった。
ハマりすぎてオモチャとは思えないような曲芸飛行を子供ながらにやって見せたら、周囲の大人が凄く驚いてた。
でもね、目いっぱい好き勝手に飛ばしまくってはいたけど、ドローン自体はスッゴク大事にしてたんだよ。
でも、どんだけ大事にしてても飛ばしまくってたらやっぱり消耗して結局壊れちゃうんだよね。
修理できないほど壊れたドロ―ンを寂しそうに見てたら、お爺ちゃんが頭を撫でてくれて、『今度も大事にするんだよ。』って言って新しい子を買ってくれたっけ。
そんな私も成長して年齢が上がる度に、もう少し高度なドローンを買って貰ったりしてた。
さらに年を経てからはバイトして自分で買うようになるんだけど、ドローン熱はぜんぜん覚めることなくてどんどん深みにハマっていっちゃうコトに。
クラブ活動やら文化祭やらもドローンで色々やらかしたっけ、えへへっ♪
そんな感じで学生時代を過ごしていく頃には、既製品ではもう満足できなくなって、パーツを集めて自分で組み立てたり、さらには物足りない部分を自分でカスタマイズするようになってたんだよね。
この頃にはさぁ、もう知識は原理や構造は言うに及ばず、制御方法や活用法に至るまで、同世代の友人たちには到底ついていけないレベルに達しちゃってたかも。
まあね、年相応の話題やお洒落、恋愛なんか見向きもしないで、そのころ流行ってたAIを自分でプログラムしてドローンに組み込んだりしてたら、『もう、この娘は手遅れだ。』と周囲の人間は思われても仕方ないよね。
そんな手遅れな私は、これからもドローンと付き合っていくために、ドローンを使う会社への就職を目指して頑張ってた。
高校の卒業がそろそろ視野に入ってきた頃、私は希望する会社へ入社できるよう国家資格であるドローン操縦免許を取るための試験を明日に控えていた……
だけど、突如襲ってきた大地震により私の人生はあっけなく終わりを迎えちゃった。
初小説で、なろう初投稿になります。
緊張で投稿ボタンを押す手も震えております。
どうぞよろしくおねがいします。