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青玉の愛  作者: 登澤 詠慎
9/11

今考えること

家に帰ったのは

もう夕方頃だった



「はぁ…今日も全然進んでない…」


「他の奴らのことなんて

ほっとけばいいのに 首を突っ込むからだ」


「ほっとけないでしょ?

頼まれたんだから…」


「自分にはやることがあると

言えばいいだろ」


「そんなこと言ってたら

1人になっちゃうよ」


「1人で何が悪い?」


「この世は ひとりじゃ生きていけないの」


「それは 人間の話だ、俺には関係ない」


「でも…」




紅什は 早く私に発明品を

完成させて 早く人情を

手に入れたいんだと思う


しかし 私にも私の人間関係や

時間の使い方がある


今までは 紅什も 嫌々

私の言うことを聞いてくれていたが

最近は 反対してくるように

なってきたから 少し心配である…




「なぁ 明河の発明品は

いつ完成するんだ?」


「さぁ いつだろう…」


「明河は この発明を成功させようと

言う意思が 最近になって

弱くなってきたんじゃないか?」


「そんなことないよ!」


「なら いいが、 お前は最近

発明が進んでいないし

すぐに後回しにしている…」


「発明は 進んでないかも

しれないけど 絶対 成功させたいと

思ってるよ!」


「思ってるだけじゃ叶わないだろ」


「わかったよ! 明日から

もっと頑張ればいいんでしょ!!」


「俺は この体を明河の発明に

賭けているんだから

それくらいしてもらわなきゃ困る」




私は こんなに 発明に

向き合いたくないと

思ったことはなかった


でも 今は 発明なんて

やりたくない


発明は やれと言われて

やる物じゃない…



そんなモヤモヤを抱えながら

私は 枕に顔を沈めた



その朝は 目覚ましが鳴らずに起きた



「明河!明河起きろ!!」


「ん…なんですか… 朝食は

まだですよ…」


「朝食じゃない!!

いいから起きろ!!」


「だから なんなんですか…」


「智景が…智景が

事故にあったらしいんだ!!」


「え!? 植村さんが!?」



その言葉で

私の目はパッチリ開いた


そして 私は 紅什を急いで起こしたあと

スクーターも忘れて走って病院に行った




「植村さん!」


「あぁ お前らも来たのか…」


「錬二、智景の容態はどうなんだ」


「未だ 意識不明の重体だ…」




病院には ユナさんと錬二さん、

理玲さんがいた




「このままで起きるとは思えないな…」


「ちょっと 理玲! なんてこと

言うのよ!!」


「でも 由凪達にも分かっているんだろ?」


「だが あの智景が

何故 家から出ようなんて思ったんだ?」


「知らねぇよ でも それは

俺も 不可解だと思ってたんだ」


「植村さん… 自分から

家から出るような人じゃなかったのに…」


「チカちゃんは

家から出なかったら こんな

事故にもあわなかったのかしら…」




植村さんは 早朝から

家を出て その時に

車と事故をおこしたらしい…


私はもうその時には戻れないのに

もしも その時…と 考えてしまった


植村さんの 体も顔も傷だらけで

酷い状態だった…


見ていられないのに

最後の最後まで

植村さんの顔を見ていたかった




「智景… お前は あまり

表に出ることは 無かったが

お前の発明もすごい発明ばかりだった…

お前と 切磋琢磨出来て

良かった、ありがとう…」




博士は みんなが

囲む中 植村さんの手を握って

そういった



すると 錬二さんやユナさんも

植村さんに 感謝の気持ちを伝えた…


そして 最後…

私の番…




「植村さん… 植村さんの

アドバイスは 凄く役に立ちました!

ありがとうございました…

私は 絶対にあの発明を

完成させます! 空から

見ていてくださいね」




植村さんの手を握った時

その手に 涙が落ちた


それに気付いて

涙を拭くと 私は

病室から 出た




「明河…?」


「遥斗…なんでここに?」


「俺は 細川先生に この事を

教えて 一緒に着いてきたんだ

それより 明河…泣いてるのか?」


「泣いてないよ…」


「鼻が赤くなってるぞ?」


「だって…植村さんが…」




涙が溢れてきて

手で受け止めようとすると

顔が何かに埋まった




「大丈夫… 一旦落ち着け…」


「何も大丈夫じゃないよ…

植村さんが…植村さんが…」


「生きてるものには

必ず 終わりがある… 」


「でも今じゃなくても

いいでしょ…?」


「それは 運命なんだよ

誰にも 変えることは出来ない…」


「私達の 発明でも…?」


「俺たちの発明で 寿命を

伸ばすことは出来ても

死からは逃れられないんだ…」


「そんな… 」




遥斗の腕の中は

今まで 忘れていた

温もりを 思い出させてくれた…


顔をあげると

遥斗と 目が合った





「明河は 最近 頑張りすぎてるんだよ…

目の下のくまも酷いし笑顔も

見ないし…休んだ方がいい…」


「でも 今の発明を…」


「俺は 明河の笑顔が好きだよ」


「え…え?」


「隣に 明河が引っ越してきて

挨拶に来た時から笑顔が素敵な人だって

思ってた…」


「え…いや…」


「俺はお前の笑顔を守りたいよ…」




遥斗は もう一度 私を抱きしめた

さっきより 力強く…


遥斗のことは

今まで 家が隣の友人としか

思っていなかったけれど


発明のことから

一歩離れたら


見かける度に話しかけたり

一緒に食事をしたり

相談をしたり…


今までも 私は遥斗のことが

好きなんじゃないかと思えた



そして 私も

遥斗の背中に腕を回そうとした時…


誰かが 私達を引き剥がした




「明河に変なことすんじゃねぇ」


「紅什…!?」


「お前こそ 邪魔すんなよ」


「何馬鹿言ってんだ、お前が

俺らの邪魔をしているだろう 」


「はぁ? 明河、お前 紅什と

付き合ってたのか?」


「ち、違うよ…!」


「だったら 紅什には

関係ないだろ!」


「うるさい! 明河、行くぞ」




紅什は 私の腕を強く握って

どこかへ引っ張って行った




「な、なにするのよ!」


「お前こそ、何をしている!」


「何って… なんでもいいでしょ?」


「良くない、あいつは俺らの

邪魔をしようとしている」


「なんの事? 紅什は

遥斗のことを勘違いしてる…」


「あいつは お前の発明の成功を

延ばそうとしている、そんなのを

黙って見ていられるわけないだろ」


「遥斗はそんなこと

しようとして言ったんじゃない…」


「お前にそれが分かるのか?」


「それは…」


「お前は 発明を完成させたいんじゃ

なかったのか?」


「したいけど…」


「なら 今は発明のことだけ

考えろ、 そのあとは お前の

好きにすればいい」




紅什は そう言って

どこかへ言ってしまった








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