初めましてNo.099
「博士! 人型ロボットが
出来たって本当なんですか!?」
「あぁ もちろんだ!
ほら、見てみろ!」
息を切らして帰ると
博士は 嬉しそうに
大きな布を取った。
「っ!」
「これが 私が 作った
人型ロボット No.099 だ!」
布を取ると
そこには私より少し背の高い
男性型のロボットが立っていた
「す、すごい…」
「驚くのはまだ早いぞ
作ったのは 形だけじゃない
中身だって 完成している!」
ポケットから リモコンを出して
ロボットに向かってボタンを押した
すると そこに立っている
だけだった ロボットが
目を開けて 何度か瞬きをした
「じゃぁ まず…明河に
自己紹介でもしてもらおうか」
「…俺の名前は No.099
俺はこの世界で初めての人型ロボットだ
まぁ よろしくな」
「私は 水巻明河です…
よろしくお願いします…」
「なっ! 凄いだろ?」
「はい…でもなんでこんな
設定にしたんですか?
普通 ロボットなら 丁寧で…」
「なんだ? 俺が 野蛮だって
言いたいのか?」
「いや… 博士らしくて
素晴らしい人型ロボットですね」
「そうだろー!ニヒヒッ」
099は 顎を出して
私を見下ろすようにした。
「他の皆さんには
お知らせしたんですか?」
「錬二にはもう見せたよ。な、錬二」
「あぁ お前が遅いから…
忙しいのに、おれが 引っ張って
連れてこられたんだよ」
「あ! 錬二さんいたんですね!」
「おい てめぇ!」
「まぁまぁ いいじゃないか
今日は めでたい日なんだから
錬二も祝ってくれよ」
「まぁ 俺が 海千に 先を越されたのは
認めたくねぇが 酒くらいなら
付き合ってやるよ」
そうして 今夜は
友人を呼んで 宴会をすることになった
「ほら、今日は 宴だぞ〜!
錬二も由凪も 好きなだけ
飲み食いしろよ〜?」
「それは 嬉しいけど
なんでこんないきなり…
あんた 今度からもっと前もって
言いなさいよね!」
「悪かったって言ってるだろ〜?
でも 由凪も来てくれたのか!
嬉しいぞ!」
「なに〜?もう酔ってるの?
せっかくあたしが来たのに
話もできないなんて 残念だわ〜」
「すみません、博士ったら
皆さんが来る前に飲んでしまっていて…」
「あら、 メイちゃんは
悪くないのよ? それにしてもメイちゃん
あなた また 綺麗になった?」
「そ、そうですかね…
由凪さんは今夜もお綺麗ですね」
「そうかしら、嬉しいわ!
でも その呼び方、 あたしの事は
ユナちゃんって呼んでって
言ってるでしょ〜?」
「あ、あははは…」
「男を そんな呼び方するなんて
そりゃ 気が引けるだろうよ」
「なんですって?」
「いや、なんでもねぇけど?」
「こっちだって こんな
背が低くて 子供みたいな男なんて
男として 見れないわ〜」
「んだと?」
「いいえ〜、なにもっ!」
さっきから 錬二さんと
口喧嘩をしているのは
麻宮由凪さん。発明家だけど
オカマバーをやっている面白い人。
錬二さんと由凪さんは
いわゆる 犬猿の仲で
会う度喧嘩をしている。
「それにしても
こいつぁ いいロボットが
出来たじゃねぇか」
「だろだろ!」
「結構なイケメンくんね〜
同じのを作って
うちに一台欲しいくらいだわ〜」
博士達は もうだいぶお酒が回っていて
099に 絡み出した。
099は ボディを触られ
嫌そうな顔をしていた。
「なんだよ マスター、酔っちまったのか?」
「まだまだ〜、今夜は朝まで飲むぞ〜!」
「そうよそうよ、あたしたちは
こんなもんじゃないわよ!」
「チッ…おい、ちょっと来い」
私は 099に 腕を掴まれ
ベランダに連れていかれた
「な、なによ…」
「俺は あんな奴らに囲まれてられるほど
気が長くねぇんだよ」
「その性格…本当に
ロボットじゃないみたいね」
「はぁ? 俺は正真正銘
人型ロボットだ、俺の性格が
気に入らねぇなら さっさと慣れな」
「性格…って 貴方の設定ってこと?」
「当たり前だろ
俺に本当の 性格なんてもんが
あるかよ、そんなのもわかんねぇの?」
本当に このロボットの
言動は腹が立つ…
私は 099の マスターの弟子で
099より 立場は上…のはずなんだけど…
「でも ロボットにだって
人情を与えてあげられる」
「人情?」
「人の心よ」
「そんなもんあってどうなんだよ
人情がマスターの命令を
邪魔したら 意味ねぇだろ」
「そんなことない
ロボットは 人間のゆうことを
聞くためだけの機械じゃないのよ」
「じゃぁ ロボットってなんなんだよ」
「ロボットがやるべきなのは
作業の手伝いじゃない…人の手伝いよ」
「?…お前の言ってることは
理解出来ねぇな」
「機械は単純な作業しかできない
会話だってできない…
でもロボットは 人間と
話すことができる、自分から
動くこともできる!
なら ロボットがやることは
人間の心に寄り添って支えることなの」
「心に寄り添う…?」
「貴方には 人情が無いから 分からないの」
「俺には 無いものなのか…」
「だから 私は 人情のある
ロボットを作ろうとしてるの
それが この世界で最も
人に近い 人型ロボット」
「最も…?」
099は 暗闇でも分かるほど
怖い顔をして 私を睨みつけた。
「最も凄いのは俺だ…
俺が 最高の人型ロボットなんだ…」
「貴方もすごいロボットよ、でも…」
「でも なんだよ…
お前が作る 次のロボットは
俺よりすごいって言うのか!」
099は 私の胸ぐらを掴んだ。
「俺よりすごいロボットを
作るんじゃねぇ、 俺が1番なんだ…
お前が作るロボットが1番になるんだったら
お前が俺を作り直せよ」
「え…?」
「お前は マスターより
発明家として 劣っているのは
分かってる、 だから 俺を
お前が作り直して 俺に人情を
入れろ。 そうすれば
俺は1番でいられる。お前は
1番のロボットを作り出した
発明家になれる!」
私は まるで 催眠にかけられたように
099の瞳に吸い込まれた。
099の言う通り
私に 一から人型ロボットを
作れるような技術はない…
だから もし 私が
人情の宝石を作れたとしても
誰かのロボットに埋め込むしかない…
そのオファーが
今来ているんだ。
それも 博士の作った
最高傑作 No.099
「分かった…私が貴方に
人情を 入れてあげる」
「よし、じゃぁ 今からお前がマスターだな」
「マスターか… でも
私の事は 普通に名前で呼んでくれる?」
「なんでだよ」
「あからさまに嫌そうな
顔をしない! これも
貴方に人情を入れるためなの!」
「そーかよ」
「あと 貴方の名前も
考えなきゃね… 099って
人の名前じゃないし…
99 からとって 紅什 でどう?」
「くじゅう?…まぁ悪くねぇな」
「じゃぁ 紅什、これから
よろしくね」
「なんだ?これは…」
「握手、しらないの?」
「し、知ってるに決まってるだろ!」
そう言って 乱暴に手を握った
飯田 錬二
いいだ れんじ
麻宮 由凪
あさみや ゆなぎ