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プロローグ
あたしのドレスが真紅の血で染めあがっていく。
「ひ、人殺しぃ——! やっぱりお前は人喰いだ」
愛おしい彼は、そう叫んであたしを見つめた。
ほんの数刻前までの優しい目ではなく、憎しみに満ち満ちた瞳で。
「ち、違う、違う……儂のせいじゃない……」
こんなはずじゃなかった。
貴方のためを想って……。
断末魔をあげて、ばらばらに散っていく彼の姿を見ながら、あたしは途方に暮れる。
塵となってあたしに吸収されていく彼のなれの果て。
これで何人目かしら? 何年目かしら?
もう数えられない。
もう耐えられない。
もういや。
あたしはアイリーン。
スクルドが産し、魔導の書アイリーン。
誰か、誰か……。
誰かあたしを————————!