異世界生活22日目終了
山田太郎は異世界バスに乗り込む。全員と挨拶をして一番奥の席に座る。相変わらず隣には鈴とゆっけ。高志は相変わらず無口だ。太郎は悩んでいた。幽霊先輩の言葉が胸に刺さる。本当に鈴さんと別れた方がいいのかと思い悩んでいる。
「太郎くんこんばんは。今日は家に泊まってくれる?」
「いえ、今日はちょっと猫達の事も心配ですし」
「あら、そう。なら仕方ないわね」
鈴は残念そうにそう言った。特に断る理由は無かったのだが、幽霊先輩の言葉が影響しているようだ。太郎はそのまま、錬金術師の元に薬草を届けてから、町に戻り木陰に入って眠った。幸せな状態が一気に壊れていく気がした。他人の言葉がここまで聞くとは太郎の繊細で他人の痛みがわかる優しい性格が仇になったようだ。この手の性格は落ち込むとどこまでも落ちていってしまう。
「どうした元気がないじゃないか」
ガイルが異空間から現れた。
「ほおっておいてくれないか。俺は落ち込んでるんだ」
「それなら尚更ほおっておけないな」
ガイルは太郎の横に座った。そのまま会話もなく、夕方となった。
「何もない日もたまにはいいだろう。だが、忘れるな。お前は大きな使命を持って産まれた事を」
ガイルはそう言うと異空間に戻っていった。太郎は片目から涙が出ていた。何も考えていないのに涙が出ていた。太郎は心の霧を晴らす為に素振りをした。夕日を斬る勢いで振りまくる。
「おお、凄いな。兄ちゃん。久しぶりだな。俺だ。元山賊のルドルフだ」
「お久しぶりです。元山賊?」
「ああ、山賊は仲間が殺されてやめたんだ。今は冒険者としてギルドに通っている」
「そうなんですか」
「何だか元気がないな。お前さんの腕が泣いてるぜ。それだけの力があれば大勢の命を救える筈だ」
「そんな事はないですよ」
そう言った瞬間太郎はルドルフに殴られた。
「そんな事はあるんだよ! お前は強い。俺達凡人の何倍も強い! 自分の力に自信を持て! 自分の能力に過信している奴と同じくらいたちが悪いぜ」
太郎は放心状態だった。だが、ルドルフの言葉で何かが吹っ切れたようだ。
「ルドルフさんありがとうございます!」
太郎は異世界バスに向かって走った。すると鈴がひとりで一番後ろの席で座っていた。
「鈴さんやっぱり今日は鈴さんの家に泊めて下さい」
「え、うん。うん!」
鈴は何だかとても嬉しそうだ。太郎の肩に体を預ける。太郎は鈴の髪を優しく撫でる。そうしていること数時間。乗客達が戻ってきた。鈴と太郎は眠っていた。ゆっけと高志はその光景を見て呆れて笑った。強者二人が何をしているのかと。二人は別れさせてはいけない。高志とゆっけはそう思った。今日のような無駄な日は2度と起こらせてはいけないと。世界にとって相当無駄だ。




