異世界生活20日目開始
山田太郎は半年間で驚くほど伸びていた。大剣の素振りをすると突風がおきる。夏場は彼の起こす風で涼しく過ごせそうだ。日課の素振り500回も難なく終えて軽く汗を拭き取る。半年前なら汗だくになっていたのに、ほとんど汗を出さなくなっていた。その変化を見て鈴も驚くほどだ。
「太郎くんは本当に凄くなったね。私の予想以上。しかも、私にない。まるで逆の能力まで獲得しちゃうんだもの。驚いたわ。私はね、時間を加速させる事が出来るんだ」
鈴はそう言うと植物の成長を加速して見せた。植物がぐんぐんと伸びていく。
「鈴さんと俺って本当に逆の能力ですね。遺伝子的にも逆だったりするんですかね」
「もしもそうだったら嬉しいね。相性抜群じゃない私達」
太郎と鈴の時間は穏やかに過ぎていく。そして、3食を食べてふたりで剣の修行をする。半年前は汗ひとつ流していなかった鈴がいい汗をかいている。
「でもさ、俺はまだまださ。金を稼ぐのが下手で鈴さんの足元にも及ばない」
「大丈夫よ。結婚したら共同財産。太郎くんの苦手な部分は補うわ」
「コンビニを持って異世界の人に売るのはいいアイディアだったけど、大評判でも稼ぎが追い付かなくて。他に何かいい手を考えないとだね。というか、鈴さんが大抵の事はやっているから後から参入するのは大変です」
「コンビニは私もまだやってなかったから正直やられたという思いはあったかな」
「それじゃ、そろそろ異世界に行きますか」
「そうね、今日は1つ目のサイキロプスキングの討伐よ。私達ふたりなら余裕で勝てるはず。太郎くんが強くなりすぎて仕事を選ぶのも大変ですよ」
「何か強そうな敵ですね。こりゃ大変だ」
「怪力なだけじゃなく、念力を使うからね。でも太郎くんも念力が使えるし相殺して身動きが取れなくなる事は無さそう。一番怖いのは念力で動きを封じられてからの棍棒での一撃。これで何人もの冒険者が殺されたものよ。でも、太郎くんなら相性は最高。無傷での完封勝利を期待しています」
「はい。お任せください。ピッチャー山田がんばります」
山田太郎と鈴は古いアパートを出てバス停に向かった。その日は幽霊先輩は出てこなかった。そのままバスに乗り込む。今日も異世界生活の始まりだ。




