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異世界バスツアーにようこそ  作者: ルンルン太郎
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異世界生活11日目終了

 錬金術師の薬草集めが終わった山田太郎はギルドに向かってみた。すると、冴子と愛と杏理がギルドの待合室にいた。


「太郎さんこんにちは」


 3人が挨拶してくれる。太郎も挨拶を返す。


「こんにちは。3人とも何してるんだい?」


「ゲートが開いた時に備えて待ってました。町人さん達を守らなきゃですし。というのは建前で実は出歩くのが怖くて」


 山田太郎は鈴との時間を過ごして浮かれてた自分を殴りたかった。俺なんかと一緒にいるだけで不安が消えることはないだろうけど、勇気を出して冒険に誘ってみよう。


「あの、良かったら一緒に見回りに行きませんか? 明日とかでもいいんですが」


「それってナンパですか? 太郎さん」


「え…いや、これは…」


 太郎が焦るのを見て楽しむ3人。


「冗談ですよ。焦ってて可愛かったです」


「俺も一緒でいいか」


 背後から声がする。振り返ると暗い瞳の男が立っていた。


「嫌ならいい」


「ちょ待って下さい。もちろんいいですよ。ね、3人とも」


「太郎さんがいいなら私達も断りませんよ。異世界バスに乗ってる人ですよね」


 男は無言でうなずいた。太郎達は合流し、町内を巡回する。町人達は突然開かれるゲートの恐怖で仕事が手につかないようだ。市場の前を通りかかると声を掛けられた。


「よう。冒険者さん達。見回ってくれているのかい? 助かるよ。何かとても安心する。これでも食べてくれ」


 肉を串に刺したものを焼いてタレをぬったものを4人にくれた。


「ありがとうございます」


 山田太郎はお礼を言うと、3人がお礼の言葉を真似て発音した。


「よう冒険者さんこれももらってくれ」


 野菜などを売る店ではトマトに似た野菜を貰った。味はフルーツトマトに似ていた。とても甘い。


「ありがとうございます」


 次はスープを売る店の前を通った。するとそこでも呼び止められる。


「兄ちゃんこの前の活躍凄かったな。これも食べてくれ。3時間煮込んだ自慢のスープなんだ」


4人は屋台に座って具が沢山入ったスープを飲む。肉が柔らかくて溶けるようにほどけていく。スープは全ての具材が調和し、相乗効果を発揮しているようでとてもおいしかった。


「ありがとうございます。とてもおいしかったです。心が癒され落ち着きました」


 4人は更に巡回を続けた。歩くたびに何かしらの食べ物を貰うのでお腹がいっぱいになってきた。


「凄い私達が歩いていた時はたまにしかもらえませんでしたよ」


「俺なんか全くもらえなかった」


 暗い瞳の男は泣きながらうまそうにもらった物をたべている。少し目に光が出てきた気がする。


「おお、兄ちゃん達。まだ腹に入るかい。うちは肉専門店で隣で焼き肉屋をやってんだ。食べ放題にしてやるから食っていってくれ」


「焼き肉…」


 暗い瞳の男の目が輝いた。焼肉が好物なんだな。


「主人から聞いてるよ。ほら、先ずはこれどうぞ。鈴が連れてきた動物達を育ててね、それを店で扱ってるんだよ」


 食べてみると食べなれた味がした。鶏肉に豚肉に牛肉。現代の焼肉屋みたいなお店だった。


「あら、お兄さんいい食べっぷりだね」


「うまいです」


 瞳が暗い男は号泣しながら肉を食べている。


「何でそんなに腹が減ってるんだい?」


 太郎が男に聞いてみた。


「俺は3日前から異世界バスに参加したんだが、その前は刑務所にいたんだ。家賃とツアー参加費を払ったら食い物を買う金も無くなっちまって…」


「なら、俺が金を貸しますよ」


 太郎が金を入れてる皮の袋を見てみた。大量に入り過ぎてパンパンになり、3倍くらいの大きさになっている。


「多すぎると返すの大変だから30ゴールドでいいですか。後から換金所に行きましょう日本円で30万くらいになりますよ」


「ありがとう…本当に助かるよ…勇気を出して声を掛けてよかった。俺は中崎要。要って呼んでくれ。俺は犯罪を犯したが盗みはしねえ。そこは安心してくれ。必ず返す」


「あの、何の罪を犯したんですか」


「ねえちょっと…」


 愛がいきなり核心を突く質問をしてしまった。杏理が止めたが遅かった。


「恋人の父親を殺してしまったのさ。働きもせず、娘に暴力を振るってたから止めに入って突き飛ばしたら打ち所が悪くってやつだ。その恋人も刑務所に入ると冷たいもんで3ヶ月経たない間に次の男が出来て会いに来なくなっちまったよ」


「それは大変でしたね」


 愛と杏理は目を潤ましている。


「しかもさ、俺は孤児なんだよ。親も兄弟もいない。誰も面会に来てくれない。もう地獄のようなもんさ…」


「それは辛いね…大変でしたね…」


 要は涙ながらに語り、女性3人はもらい泣きし、山田太郎は唇を必死に閉じてぷるぷるさせながら涙が出るのを必死に耐える。


「刑務所でも友達が出来なかった俺は天涯孤独なんだとと諦めかけていた時、フードをかぶった人からこの異世界バスのチラシを貰ったんだ。そして参加した日にあんたのいや、太郎さんの活躍を見たんだ。あんたいや、太郎さんは凄かった。俺はあんたのようになりたいと思ったんだ」


 結局最後の一言で太郎まで泣かされてしまい、4人とも泣きながら焼肉を焼きまくり、要の皿に焼けた肉をどんどん入れる。肉が焼けると、おかみさんが大量の野菜と肉の追加を持ってくる。4人は結局、満腹になるまで肉を持って来られた。満腹の幸福感が素晴らしい。とてもありがたかった。結局その日はゲートが開かず、平和だった。王都にゲートが集中した影響なのかも知れない。

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