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異世界バスツアーにようこそ  作者: ルンルン太郎
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異世界生活5日目ヤンキーの場合

 タバコの残り本数6本。パチンコで大負けしちまった。タバコ買う金もない。上原達矢は異世界バスツアーの参加者で、建築家現場で働く元ヤンキー。まだ新人だ。上司に可愛がられ、よく働くと誉められており、仕事は順調だ。

 

 だが、異世界バスツアーの場合はそうではない。現代社会と同じく異世界でも新人だが、報酬の分配も少なくされており、半分しか貰えていない。


「千夏今日の異世界バスツアーに参加する金も無くなっちまったよ。どうしよう」


 千夏は俺の自慢の彼女。居酒屋でアルバイトをしている。


「達矢。私も1万円しかないよ。明日給料日だからいいけど、来月から、もう異世界に行くの辞めようか。安井の野郎ムカつくでしょ。リーダー面して偉そうに報酬も殆ど持ってくし」


 千夏は異世界に行くのを初めは喜んでいたが、今はご覧の通りだ。


「ちくしょー…いい武器があれば安井なんかより目立ってやるのに」


 達矢はいまだにレンタルの短剣と盾しか持たされていない。戦利品も年功序列で中々達矢達まで回ってこない。リーダーの安井が分配を決め、年齢が近い者達に回しているからだ。安井と浅野にばかり良い装備が行き、そのお下がりが彼らと年齢が近い者達に行く。


「そう言えばさ、ツアーに参加してない奴で3日生き残った奴って初めてじゃね? なんてったか山田…なんとか」


「あー、モブ太郎とか言われてるセルフカットの髪型の人でしょ。自分で髪切るとか無いよね。髪型ちゃんとして髪染めたらイケメンっぽいけど」


「だよなー! それ俺も思った。親戚の床屋紹介してやりてーよ」


 達矢と千夏は山田太郎の噂をしていた。一方その頃、噂の山田太郎はというと、公園の野良猫に餌をあげていた。


「なあ、千夏。その山田モブくんと一緒に冒険してみねえ?」


「はあ? まだ異世界に行くの?」


「いいじゃーん。愛してるけどマンネリ防止にさ。異世界でムカついた後って盛り上がるじゃんか」


「それって私少し痛くて嫌だったんだけど。達矢最近、ベッドで荒れすぎ。ストレス溜めすぎ」


 達矢と千夏の意見が中々まとまらない。


「ごめんって。今日は優しくすっからさ」


「もう、エッチ。昨日もしたでしょ…」


 恋人たちの行為が終わってから二人でタバコを吸う達矢と千夏。


「なあ、建築現場で鍛えた腕力やっぱり使ってみてえよ。喧嘩もまあまあ強いし」


「達矢キレたら容赦ないもんね。マジで人を殺すかと思った。やっぱり異世界向いてるかもね」


「だろー…なあ、もう少し行ってみようぜ」


「そうだね…あの腹立つ安井と浅野と一緒じゃなきゃいいよ」


「そっか! やった! ドラ狩りクエストごっこ楽しもうぜ!」


「はいはい。私をしっかり守ってよね」


「おう! 任せろよ。千夏姫」


 こうして、達矢と千夏は二人でテレビを見てコンビニで夜食のパンと飲み物を買って食べ、深夜になった。


 アパートを出て、二人でバス停に向かう。異世界バスが到着すると千夏が二人ぶんの料金を支払った。


「お客さん本日はお二人でソロ参加ですか」


「金がないもんで…」


 バスの運転手が尋ねると千夏が申し訳なさそうに言った。


「次のツアー参加をお待ちしております。死ななければですが」


 バスの運転手が縁起でもない事を言う。


「何だよ。お前らツアーに参加出来ないなら前もって休むんなら休むって言っておけよ。何の為のアドレス交換だよ。盾役どうすんだ。足りねえぞ」


 安井が達矢達に怒鳴り、バスの雰囲気が悪くなる。その空気を察してサターナが前に出た。


「ほうほう。盾役が足りないとなー! ならば私の出番だ! 任せんしゃい!」


 サターナの言葉に慌てて立ち上がる安井。


「サターナさんに盾役なんかさせられませんよ! 俺がやります! サターナさんを守ります!」


 ドンと自分の胸を叩く安井。学生時代サッカー部でエース。長身の187センチ。常に目立つ道を歩き、クラスでも中心的なメンバー。成績は余り良くないが、悪くもなく80点と優秀。偉い人の前では謙遜し、下の者は見下して尊大に立ち振る舞う。社会に出るとよくいる人物だ。企業の若手。 

 だが、このタイプの場合部下の教育に問題があり、上司にその事で怒られる為、上司との関係は良くはならず、出世が遠くなるタイプ。年功序列で上に行くのをひたすら待つしかない。自分よりも先に上に行きそうな新参者を排除するのが当面の行いとなる。達矢もそんな感じで叩かれているのだ。


 サターナの機転のお陰で安井の小言から介抱された達矢と千夏は山田太郎の近くの席に座った。


「初めまして山田先輩。今日は俺達も一緒に冒険していいですか?」


「別にいいけど」


「やった! 宜しくね太郎先輩!」


「千夏敬語!」


 達矢と千夏はこうして、山田太郎と冒険する事になった。


「お、太郎くん後輩出来たじゃない」


「モブ太郎の分際で。私は誘われても断ってたけどね」


 鈴とゆっけがそれぞれの反応を見せた。鈴は単純に喜び、ゆっけは少し悔しそうだ。こうして、今日は山田太郎、上原達矢、三浦千夏の3人で異世界の冒険に旅立つ事になった。

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