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廃れ大地の鎮魂歌  作者: ハブ広
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エピローグ 旅立ちの翼

リンボが崩落してから翌日、その事件の話題が地下都市に広がっていた。マフィアは真実を隠蔽し、一人の頭の可笑しい人間が最期を独りで過ごしたくないという理由で爆破して崩壊させたと大半デマで占められた情報を流している。それを鵜呑みにしてしまう民衆もおかしいと思ってしまうのはあの事件をこの目で見てきた当事者たち。

 アレッタの遺体は事件の後、リベラの墓地の近くに青々と茂っている大樹のもとに埋められた。綺麗に整理された墓石は彼が直々に購入し、彼女の眠る大地に聳え立たせた。

友達に対する最後の贈り物が墓とは何とも言えない皮肉だ。それでも彼は亡くなった彼女が笑ってほしいと願いを込めていた。

 主を失ったラフターの店についてはロレンツが3か月ほど続けて経営し、彼ともそろそろ本当の別れを告げないといけないと思い、店を畳むことを決意。

「本当に行くの?」

「アレッタは只管に自由を追い求めていた、託された願いは俺が叶えてやるって決めたのさ、あいつが俺の価値を見出してくれたから」既に自分の部屋はもう片付けてあり既に伽藍堂状態だ。久々に登ってきた螺旋階段は名残惜しい足音を響かせていた。

 仕事でチョクチョク地上に出るたびに手厚く歓迎してきた鬱陶しい日差しも彼の新たな門出を祝っているようだ。ひんやりとした地下都市の空気とは違う乾いた感じがする。

 タナトスを出てロレンツは太陽を見たい、地上に出てみたいという彼女の墓の前で祈りを捧げる中、その後姿を見続ける幼馴染の女性、クロエ。

「それじゃあ、行ってくる。元気でなクロエ」

 ぼふっ…。寂しさのあまり抱き着いてくるクロエの頭を撫でた。

「元気でね」

「ああ、また会いに来る」

彼は彼女へおくる廃れ大地で鎮魂歌を奏でた後、果てしなく広がる荒野に向けて新たな世界へと旅立った。

廃れ大地の鎮魂歌 ~Desert Requiem~ 

fin.


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