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ライバルは親友に

2作品目です。2作品並行でゆっくり更新します。

※2018年3月21日:サブタイトル変更しました。

※2018年3月28日:本文少々加筆しました。

「れいちゃん、ここはね、乙女ゲームん世界なんだよ」


 くりくりとした愛らしい瞳が真剣な眼差しで私を見つめる。

 超ド級の天然娘と言われている親友がまた突飛なことを言いだした。

 今回はまたパンチが効いてるな。

「取り敢えず、注文決めるよ」

 意味がよく分からないから、一先ずスルー。

 折角カフェに来たんだから、まずは注文がしたいし。

 座って速攻本題に入るとか、せわしないな。まだ、水も運ばれて来てないからね。

「もう!れいちゃん、聞いて!」

「はいはい、注文したらちゃんと聞くから。この期間限定の桜のプチパフェとか可愛くない?」

「あ、この桜のシフォンケーキも可愛いよ!」

 話は軽く流して注意を他に向ける。すると、花鈴は驚く程簡単に乗ってくれる。

 本当に私の親友はアホだな。扱いやすくて楽なのは良いけど、ちょっと心配になるレベル。

 とにかく、まずは注文。話はそれから。

 店員を呼んで、私が桜のシフォンケーキとコーヒーを、花鈴が苺のパフェとカプチーノを注文した。

「れいちゃん、シフォンケーキだけで足りる?」

「普通のケーキのサイズなんだから充分」

 今日初めて来たこのカフェでは、期間限定で桜をモチーフにしたドルチェがいくつか出てる。

 店の前を通った時に花鈴が「期間限定メニューだって!」と言って目を輝かせたからこのカフェに入ったのに、この子が頼んだのは通常メニューの苺のパフェ。

 期間限定メニューのパフェはミニサイズしかなくて、甘いものたくさん食べたいからとこの選択。

 このカフェに入った意味は何だったのか。

 まぁ、この程度のことを一々気にしてたら、この子の親友なんてやってらんない。

 期間限定メニューは私が楽しむから、問題ない。


「で、何の話だっけ?」

「あのね、私達が今日入学した恋白学園は乙女ゲームの舞台なんだよ」

「うちの学校をモデルにして作られた乙女ゲームがあるの?」

「違うよ!私が前世で遊んだ乙女ゲームの一つに恋白学園を舞台にしたのがあったの!」

 あぁ、花鈴の謎思考ワードがまた一つ増えてしまった。今度は前世か。

「前世って?」

「前世は前世だよ」

 あ、無理。この話の追究は諦めよう。

 諦めるのが早いって第三者が聞いてたら突っ込むかもしれないけど、これは突き詰めても時間の無駄にしかならないと判断した。

 あくまで勘だけどね。でも勘って大事。

 まぁ、他人の前世なんて知ったところで、どうにもならないか。自分のもそうだけど。だから、追究する必要はない。


「乙女ゲームって何だっけ?」

「乙女ゲームはいろんなかっこいい男の子との恋愛を楽しむゲームだよ」

「花鈴そういうのやってたんだ」

「前世の私がね!今の私はゲームとか全然してないよ。操作の仕方分かんないもん」

 うん、そうだね。

 花鈴の手にかかれば、どんなゲームだってバグが発生するというミラクルがいつも起こるからね。

 花鈴は漫画みたいな機械音痴だから、ゲームなんて出来ないし、ましてや出来ないゲームの知識があるわけがない。

 前世でプレイしてたゲームの世界、か。

 花鈴がこういう訳の分からない嘘をつくような子じゃないことは、私自身がよく知ってる。だからと言って、はいそうですかってこんな突拍子もない話に簡単に納得できるわけじゃないし。

「うちの学校が、前世の花鈴がやってたっていう乙女ゲームの舞台ってこと?」

「そう!」

「たまたま名前が同じとかじゃなくて?」

「乙女ゲームの世界で間違いないよ!だって、私がその乙女ゲームのヒロインだもん!」

 なるほど、今度はそう来たか。

 周りの他の客や店員に聞こえてないといいんだけど。すごいヒヤヒヤする。

「何でそう思うの?」

「だって私、その乙女ゲームのヒロインの顔と一緒だし、矢沢花鈴って名前もヒロインと一緒だから」

 花鈴の顔立ちは、一言で言うと愛らしい。はちみつ色の瞳は、大きくてキラキラしていて、この瞳に見つめられればどんな男でも落ちてしまうだろうと親友の贔屓目で思ってる。加えて、ピークベージュのボブヘアも花鈴の可愛らしい顔立ちによく似合っている。なるほど、これがヒロインのルックスかと納得出来なくもない。

 前世で遊んだゲームの登場人物と自分が同じ顔で同じ名前。加えて、進学した高校もそのゲームの舞台と同じ名前。それなら確かに、ゲームの世界に転生したって思っても仕方ないのかな。

 私にとってはにわかには信じられない話だけど、それが花鈴にとっての真実なんだろう。

 話を受け入れなけれるしかないか。ここがゲームの世界だと知ったからと言って、私の人生が劇的に変わるわけでもないし。

 というか、私に花鈴を疑うなんてこと出来ないんだけどね。

「この世界がその乙女ゲームの世界で花鈴がそのゲームのヒロインだとして、花鈴はそれでどうするの?」

「素敵な恋がしたい!」

 私の問いかけに、花鈴は目を輝かせて答えた。

「だって、高校生だよ!今までは残念なことに恋とはご縁がなかったけど、ここが乙女ゲームの世界で私がヒロインなら、これから私も素敵な恋をするチャンスがあるってことだよね!!」

 気持ちを高揚させて、瞳をキラキラとさせながら花鈴が話す。

 花鈴がずっと恋に憧れてたのは知ってた。恋愛もののドラマや映画を見て、小説や少女漫画を読んでは楽しそうに話してた。

 今までほど遠い存在だった憧れてたものに手が届くって分かれば、当然テンションも上がるか。

 ちなみに、本人はずっと自分は恋と無縁だったと思い込んでいるけど、実はそれなりに花鈴はモテてた。なんたって、可愛いからね。

 けど、その自覚が皆無なのは、花鈴が持ち前のド天然っぷりで自分を取り巻くあらゆる恋愛フラグを惜しみなくバッキバキに折り続けていたから。

 そうか、あれが花鈴がヒロインたる所以だったのかもしれない。鈍感ヒロインって奴よね。


「ねぇ、そのゲームに❛篠宮麗華❜って出て来た?」

「もちろん、れいちゃんもいたよ!れいちゃんはヒロインの恋のライバルだったんだ!!」

「え?」

 大して期待もせずに質問したけど、予想外に嫌な方向で驚かされてしまった。

「私、花鈴のライバルなの?親友じゃなくて?」

「うん!ヒロインの親友は桃園奈々子っていう別の子だったよ」

「その子はどんな子なの?」

「えっと、ヒロインの親友だから、もちろんヒロインの恋に協力してくれて、明るくて人気者ですごく優しい子だったよ。確か、ちょっとクセがあったけどキレイな黒髪で瞳の色は金色だった」

「へぇ、私とは全然違うね」

 私の髪は銀色のストレートロングで、瞳の色は紫だ。

 ヒロインの親友なる人は、私とは別人らしい。正反対に近いくらい。なんか複雑。

 確かに、愛嬌ある顔立ちじゃないし、冷たそうな雰囲気だって陰口のように言われることもあるし。喋るのが苦手なつもりはないけど、友達って言える相手も花鈴しかいなくて、人気者とはほど遠い。

 確かに、私ってヒロインの親友よりもライバルってポジションの方がしっくりくるかも。

「じゃあ、私は花鈴と仲良くするのを止めて、ゲームの通り花鈴のライバルになった方がいい?」

「そんなの絶対嫌だ!!」

 ゲームなんて関係ないって自分で思ったくせに、拗ねて変なことを言ってしまった。と失言を早々反省しかけたところで、花鈴が珍しく力の籠った声を出した。

 ちょっとびっくりしてしまった。

「れいちゃんと私は親友だもん!!ゲームなんて関係ない!!」

「・・・うん、そうよね」

 良かった。

 単純だけど、こんなにハッキリ言ってもらえると、やっぱり嬉しい。

 ゲームなんて関係ない。私は今まで通り、私なりに花鈴と付き合っていけばいい。

 とか言っても、私はゲームのことはよく分かんないんだけど。でも、ゲームをよく知っている花鈴自身が関係ないって言ってるんだもん。花鈴が嘘をつけない子だってことは、私が一番知ってる。

「じゃあ、花鈴の恋のサポートは、親友の私がやってあげる」

「うん!!代わりに、れいちゃんに好きな人が出来た時は、私がお手伝いするね!!」

「ありがと。期待しないでおく」

 とびきりの笑顔で花鈴は頷いて、お返しの宣言もした。うん、やっぱり花鈴は可愛い。

 花鈴が恋に夢中になるっていうのは、ちょっと寂しい気もするけど悪いことじゃないし。花鈴が暴走しないように、私は出来ることをしていこう。

 ていうか、私がちゃんとサポートしないと、いくら本人がやる気でもこの子確実にフラグをスルーするか折るかしちゃうから、結局恋を出来ずに高校生活を終えることになってしまう。

 そして、そんな花鈴に恋愛手伝ってもらうって言われても、全然期待出来ないんだよね。まぁ、私は恋する予定とか別にないから、気にする必要もないか。


「おまたせいたしました」

 頼んだメニューが運ばれて、今度は甘味に癒されながら、私は花鈴から彼女の恋の相手になるだろう攻略対象者達の話を聞いた。



行空けて表現するの難しいです。

※2018年3月21日:行詰めました。

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