存在意義とは
2週間前、今日は委員長が最後に学校に来る日。どうせ、俺は2週間の命。仮に暴力を振られているのならば、身を挺して守ればいいわけである。多少の痛みぐらい、死ぬのに比べればどうってことない。
午前中、委員長はやつらに呼び出されていた。死ぬ前は、見て見ぬふりをするようにしていたが生き返ったあとは僕の存在意義を知らしめるのが目的であるため、身を隠し覗き見た。
「おい、忠告したよな。話しかけるなって」
「なんで、そんなことしなきゃいけないの。私には分からないよ。なんで、クラス全体で仲良くしようとしないの。なんで、見せしめが必要なの」
委員長の人の良さが現れるその言葉に僕は心を打たれた。
「この偽善者め。まぁ、俺たちも悪魔ではないのでな。それに、別に見せしめとしてあいつに金を要求しているわけじゃない。ただ単に、金がほしいだけなんだよ。そんな、たいそうな理由じゃない。でも、お前が見せしめだと思って、あいつを救いたいならお前を見せしめにしてやってもいいがな」
ある意味平和の象徴である僕は、無理矢理こじつけた理由で自分がいじめられることを正当化していた。しかし、彼らはそんな複雑に考えてないようだ。それに、金がそんなにほしいのか。
「上等よ、やれるもんならやってみなさい」
「なるほど、自分でいうならあいつには手を出さないであげよう。あいつは、男だからな。男じゃ満たせない欲求も俺らは溜まってるんだよな」
委員長は間違いなく強がっている。彼女の小刻みに震える足を見れば、小学生でも分かる。
「いいや、このまま僕が見せしめをやるよ。僕の存在意義は、みんなの平和を望むことなんだ」
やめろ、僕。自然と足が動いていた。やはり、僕は超能力者であった。こんな恥ずかしいことをいうな。
「面白いことを言うなぁ。じゃあ、二人ともっていうのはどうだい?どちらも、見せしめになりたいならいいじゃん」
「それは、チガ-」
「別に、かまわないわ」
僕の言葉を遮って委員長は強い口調で言い放った。委員長は何を言っているんだ。そんなのいいわけないじゃないか。
「決まりだな。楽しみにしていろよ」
僕の存在意義が、ここで再び否定されたようだ。
「大丈夫、もう一人じゃないよ」
僕の悔しさは、また増大したようだ。
午後、僕はいつものごとくこの3人組に取り囲まれ恐喝を受けた。それは、彼らにとっての僕の存在意義であるお財布の役目を僕はなんの抵抗もなく働くわけである。委員長も僕と同じくお財布の役目を働こうとするも、やはり抵抗があるようだ。しかし、彼女はいやがりながらもお金を渡している。
なんで、午前中あんなに強気でいられたんだよ。
委員長は授業中も落ち着いていない。おびえているようだ。
「委員長、一緒に帰ろ」
少しでも、助けてあげられるように話を聞いてみることにした。
「あなたは、あんなつらいことを毎日受けてたんだね」
僕はむかついた。たった1日で僕のことをすべて理解したような物言い。こいつはただの偽善者であるのだろう。今回、委員長を誘ったのは委員長の話を聞くのも当然の目的であったが、僕のストレスを解消するのも目的であった。
「委員長、あなたは何も分かっていない。僕の存在意義について、今日の夜考えて明日から活かせ。それができないなら、学校へくるな」
僕はそう言い放って一人その場を立ち去った。
翌日、登校したとき僕の超能力はまた発動していた。しかも、パワーアップして。
委員長の上履きがない。
「おはよう」
そんななか、委員長は笑顔で挨拶してきた。昨日はちゃんと反省したのだろうか。いや、そんなことより僕への仕打ちを受けていること。
「あれ、あたしの上履きがないわ」
気づいた。彼女は、なにもおびえていないようだ。僕の存在意義に気づいたのだろうか。
「まぁ、いいわ。今日は来客者用のスリッパを履いてすごしましょう。あなたは、どうするの?」
この受け入れてからの開き直り方、委員長は理解したようだ。平和の象徴は決してひるんではいけない。これは、僕の計画を遂行することが可能なようだ。守ってばかりでは、平和は保てない。
「僕もスリッパを使うよ」
やはり、今日の委員長は昨日とは違う。何を言われても聞き流すし、昨日の反省を活かし財布を2つ持ってきている。
「委員長、今日のうちにあいつらだれか一人でいいから電話番号とメールアドレス聞けたりしないかな」
「何で?」
「僕は計画を執行しなきゃいけないんだ。自分のために、クラスみんなのために」
「深く理由は聞かないわ。ちゃんとしておくわ」
放課後、僕の財布が朝よりも薄くなっている頃、委員長は僕にCの電話番号とメールアドレスをくれた。そもそも、彼らは3人組でAをリーダーとしたグループである。Aの権力が偉大なためにクラスはおろかBやCも狼狽えることが多い。ちなみに、Bは小心者でCは切れっぽいのである。Aには、これといった欠点というものが見当たらない。
さて、Cの個人情報を手に入れた僕は家に着くなり、ネットの掲示板等で拡散しまくった。『すぐに誰とでもやる』などと、あおり文句の一つでも入れておけば効果は増えるであろう。前々から知っていた彼の住所も利用して、ネットショッピングをしまくった。架空請求業者にも、彼のメールアドレスを優しく教えてあげたのだ。これで、彼はしばらくクーリングオフやらいたずら電話にいたずらメールに迷惑をする日がしばらく増えるだろう。彼のことだから、キレて学校をばっくれるなんてことも考えられる。
翌日、Cは本当に学校に来なかった。
1本目の矛は、僕という盾に歯が立たないのであった。




