第四話
…数日後。
僕は再びあの老人の家の前にいた。
あの日、老人が亡くなったことを知った僕は、すぐにうちの店のオーナーに電話をした。
あの老人が、亡くなる少し前にうちの店に来たことを警察にどう話そうか、相談したかった。
「そういうことにはあまり関わらない方がいい。君も警察から何か聞いてくるまでは黙っていなさい。」
これがオーナーの返答だった。 「せっかく売り上げが増えると思ったのになぁ…」
こう呟く声が聴こえて電話は切れた。
人が死んだというのに金の話か…。
それでも、すぐに警察がうちの店にも調べに来るだろう、それまでは大人しくしていようと思っていた。
しかし、数日経っても警察が訪ねて来ることはなかった。
僕は気になった。 老人が何故死ななければならなかったのか。
自殺なのか、他殺なのか。
もし自殺だとしても、これから死のうという人間が、あんなに高価な楽器を欲しいと思うだろうか…。
そんなことばかり考えているうちに、あの老人の家をもう一度見てみたくなったのだ。
…老人の家はほんの数日の間に、随分印象が変わってしまっていた。
玄関を中心に、立ち入り禁止の立て札がいくつか置いてあり、黄色いテープのようなものが家全体を囲んでいる。
初めてこの家を見た時も真っ暗だったが、今はもっと暗闇の中にあるような、どんよりとした不気味なオーラを放っているような感じがした。
…警官はいないようだ。
思わず一歩踏み出したときだった。
「ねえ」
…!!? 不意に背後から声がした。