話吐キ -ハヅキ-
翌日、いつもより早く家を出ようとした。
「食事は?」
と母達が問う。
ロゼはビクリとしながらも、
「ごめんなさい。失敗しちゃったの」
と言い訳る。
「そう……」
「行ってきます」
微笑んで門を出る。
ごめんなさい。
食事は用意出来ない。
そう心の中で謝罪した。
ふと目に入った8輪のオレンジのドクターファウスト。
昨日は蕾であったのに、見事に咲き誇るそれを見て、ロゼは皮肉と感じ、少し目を細めた。
「あれ!?」
待ち合わせにルクスがいた。
「おはよ。早いね」
そう言って微笑む。
まだ目の周りは赤い。
「ルクスこそ。どうしたの?」
「いや、昨日待たせちゃったしさ、今日は俺が待とうかなって」
その発言に、ロゼは頬を染める。
他愛のない話をしている中、ロゼは気付いた。
「ルクス……何だか綺麗になった?」
「えっ……それは…………。ロゼはいつも綺麗だしさ、隣にいても大丈夫なようにって……思ってさ。………男が変かな?」
「…………………」
ロゼは答えない。
いや、答えられない。
今口を開けば、変な声が出てしまいそうになるからだ。
「……? ろぉーぜぇー」
ロゼの顔をのぞき込むルクス。
耐えるロゼ。
「…………っはぁ。大丈夫」
咳払いを1つし、落ち着きを取り戻す。
私よりもルクスの方が向いていたのではないかとロゼは思った。
しかし辞めると誓い、それはもう関係のない話だが。
「もう帰ろっか。最近、行方不明者多いし」
「そうね。でも大丈夫よ」
私が犯人だから。
だけど、もう被害者は出ないわ。
ロゼは頭の中で言葉を続ける。
「? まぁ、気を付けるに越したことは無いから。それじゃあね」
「うん。また明日!」
本当はまだ一緒にいたかったが、明日を待ち遠しく思うのも良い。
少し帰りづらいが、帰路につく。
「………………っ!」
ロゼは焦り、動揺し、絶望した。
「どうして…………っ!」
薔薇の香りが、無くなっていたのだ。