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薔薇ニ戀々  作者: 藍花 姫乃
禁髄恋
8/26

詩調 -フミヅキ-

家を出ようとすると、新しい妹が8輪生まれていた。

オレンジのドクターファウスト。

まだ蕾だけれど、綺麗に咲くようにと、ロゼはキスをする。



いつもの噴水に行く。

しかし、ルクスは来ていない。

いつもの時間を過ぎても来ない。


30分


1時間


沢山の時間と人混みが去ったが、結局、ルクスはこの日現れなかった。


ロゼは気を落とした。

段々と、ルクスが来る時間が遅くなっている事にも気付いていた。


嫌われちゃったのかな。

だったらなんで昨日あんな……。

嫌な思考が巡る。


「………………帰ろう」

立ち上がると、もう辺りは真っ暗。

気持ちとは反対に、光り輝く月に、ロゼは苛立つ。


「………………ロゼ?」

「えっ」

声の方を向くと、そこには月明かりに照らされたルクスの姿。

「待っててくれてた……んだね。 ごめん」

「ううん。いいの。私が勝手に待ってただけだから」

「違うんだ! 本当にごめん。実は……俺の友達が、家に帰ってないんだ」

「え?」

「ロゼと話してて、友達が欲しくなって、思い切って話してみたら、仲良くなれたんだ」

「…………」

「それで、今日も行ってみたら、皆……家に帰ってない。居場所も分からないって…………。ずっと探してたけど、結局見つからなかった。こんな……8人共、いなくなるなんて…………」

話しているルクスの声は、段々と嗚咽混じりになっていく。

目ももう真っ赤になっている。


二人の間に沈黙が流れる。


「…………今日はごめんね」

沈黙を破ったのはルクス。

「……! いえ、こっちこそ」

「送るよ。家どこ?」

「…………っ! ダメ!!」

「…………え?」

「ぁ…………」

優しい言葉をかけたルクスに対し、ついロゼは怒鳴ってしまった。

今連れて行ってしまえば、母達はルクスを食べてしまう。

それをさせない為が故にだった。

が、ルクスにそれが伝わる訳もない。

「わ、私の家……さ、『誰も連れてくるな』って言われてるの」

咄嗟に嘘をつく。

「え……でも、この間『私の家に来ない?』って」

「…………っ」

ロゼは絶望する。

今から何を言ってももう駄目だ。


「………………」

ロゼはもう言葉が出ない。

「……何か事情があるんだよね。ごめん」

先に謝ったのはルクスだ。

ロゼはそのアンクルウォルターの様な目を丸くする。

「え…………」

「俺の家にも事情があるなら、ロゼの家にあってもおかしくないでしょ?」

「そう……ね。ありがとう」


この優しさに惹かれたのだと、改めて感じる。

だが、ルクスの態度は出会った頃から変わらない。

その事を嬉しくも思い、同時に少し絶望した。


「それじゃあ、もう帰ろうか。気を付けてね。最近物騒だから」

「うん……ありがとう」

その原因はほとんどロゼである。

故に、ロゼは安心して帰る事ができる。

そして、決心した。


《もう、食事は辞める》


「ルクス!」

振り返り、ルクスに話し掛ける。

「?」

ルクスもその声に振り返る。

「これ……食べられる?」

ロゼが手渡したのは、飴玉の入った小さな小瓶。

「……うん。苦手だけど、今なら平気な気がする」

「そう。ならよかった」

ロゼとルクスは微笑みあい、そして「また明日」と別れた。



小瓶に入った飴玉は、ローズの香りのする、真っ赤なもの。


15個 入っていた。

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