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薔薇ニ戀々  作者: 藍花 姫乃
禁髄恋
7/26

見ナ尽キ -ミナツキ-

………………いつまでついてくるんだろう。

そう思いながら、歩み続ける。


家が見えなくなった所で、後ろから肩に強い衝撃を受ける。

左肩を掴まれた。

そして強制的に振り向かされ、また強く、両肩を掴まれた。

掴んだのは考える必要もない。

少年だ。

だが、その顔は怒りで満ちている。

恐怖をまだ知らないロゼでさえ、顔を強ばらせる。


「何で…………」

俯き、絞るかのようにして声を出す。

声は震えている。

「何でこんな事!!!! あの人がどんな人か知らないだろ!? 平気で美人局や詐欺をする様な、どんな手段でも使ってお金を手に入れようとする人だ!」

いつもの穏やかで、柔らかい面持ちの彼とは思えないほどの気迫。

「失礼だけど、そんな感じはしてた。だからこそよ。私が気に入られれば、逃がさないようにと、貴方に危害を、今以上に加える事はないでしょ?」


微笑んでみせる。


未だかつて抱いた事の無いような感情を、少年に抱いている事に、ロゼは気付いた。

しかしそれと同時に、この感情を悪くない、愛おしいとも思えた。


「………………っ!! 違う!! 俺が言いたいのはそうじゃない!! 俺の事なんかどうでもいい!!」


そう言って、


ロゼを強く、抱きしめた。


今まで経験した事の無い衝撃に、ロゼは頭が白くなる。


最初は強過ぎて痛いと感じていたが、段々と優しいものへと変わっていく。


彼の髪が顔にかかり、くすぐったい。

力強く抱きしめられた事により、口にあたる肩。

いつも座っていたり、少し離れていたせいで、こんなに身長差があり、男だとは知らなかった。

それに、彼は今まで愛を与えられていないにも関わらず、こうして私に優しくしてくれる。

「愛してる」と言葉をくれる母達以上に、言葉ではない彼の行動で、愛情をロゼは、思いを巡らせ、感じた。


「ごめんね。俺はルクスじゃない。名前なんて無いんだ」

「いいのよ。ルクス。いいのよ」

今更ながら、彼を、ルクスを抱きしめ返す。

「……っ だから違

「違わない。貴方が名乗ったんだから、貴方はルクスよ」

「…………………っ」

少し、嗚咽が聞こえる。

必死に噛み殺そうとしているけれど、僅かに聞こえる。

ロゼは聞こえない振りをした。


「……初めてだったんだ」

泣いているせいか、いつもより低い声。

そんな声で、耳元で話され、ロゼは頬をエマグローテンドルストのように染める。

「あんな風に話しかけられたのも、名乗ったのも、話をするのも」

「……そう」


突如スイッチが切り替わったかのようにバッと自分とロゼを離す。

「ごっごめん……! つい……」

右手で顔を隠し、左手を言い訳をするかのように動かしている。

けど、残念な事に目を恥ずかしそうに歪めている事も、顔がフェリーポルシェの様になっているのもバレバレだった。

それを見てロゼは微笑み、くすくすと笑った。


「もう遅いし、暗いし送るよ」

ルクスが以前の様に言う。

「いえ、大丈夫よ。ありがとう」

ロゼは2度目のチャンスも失った。

いや、ロゼから手放した。

しかも、愛を知り、さぞ美味しくなったルクスを。


その代わり、子供を8人、連れ帰った。

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