恋月 -ウヅキ-
今日もまた噴水の所へ行くと、ルクスも今来たところのようだ。
「こんにちは」
ロゼはいつもの様に微笑んでみせる。
「こんにちは。今日は早いね」
「え? 昨日と同じよ」
時計を見てみるが、いつもと同じ時間。
「あ。俺が遅かったのか。ごめん」
「いいのよ」
「今日さ、見せたい物があって」
そう言ってルクスはくしゃくしゃになった紙をロゼに見せた。
「これは?」
ロゼにはただの紙にしか見えない。
紙というよりも、何かのラベルかと色々考えてみるが、やはり分からない。
「前に言ってた、“ロゼ”って名前のワインのラベルだよ。見せようと思って持ってきたんだ」
だからワインじゃないって。
そう思ったが、ルクスのした事が、ロゼを微笑ませた。
いつもの様に作ったものではなく、自然と出たものだった。
ロゼ自身も何故か分からず疑問に思う。
「ありがとう。でも私達飲めないわね」
「うん。飲まない方が良いよ。渋いし、暴力的になるし」
「あれ? 飲んだ事あるの?」
ルクスはしまったと言わんばかりの顔をする。
「実は、前に少しだけね。1口だけ」
「そうなの。貴方って意外と悪い子?」
ルクスの顔がほんの少し、一瞬だけ引きつったのに、ロゼは気付かない。
「そう……だね。悪い子かもね」
「暗くなってきたし、送ろうか?」
「大丈夫よ! ありがとう」
少年と手を振って別れ、帰路につく。
…………あれ?
何で私断ったの。
このまま連れ帰れば食事にできたのに。
…………変なの。
でもまだ時間はあるし、大丈夫。
気を取り直し、今日は子供を6人連れ帰った。