夜宵 -ヤヨイ-
「こんにちわ」
声をかけるとびくりと少年は反応し、微笑んで少女の方を見た。
昨日と同じ場所、もう必要のない、意味の無い噴水の前。
少女はちょこんと少年の隣に座る。
そしてポケットから綺麗な飴玉を取り出す。
「これあげる」
「ありがとう。けど、俺、食べられないんだ」
「……そうなの」
厄介な子供だ。
横目に見ながら思い、その飴玉を口に含む。
「……ねぇ。君って何ていうの?」
「え? 何てってどういう事?」
「あ。名前……聞いてもいいかな?」
「あ……そういう事」
考えた事も無かった。
今まで必要なかったから。
かと言って答えないのも怪しまれる。
色々と考えを巡らせ、
「私の名前はロゼよ」
自分の髪飾りと服についている、シャンテロゼミサトからつけた。
「へぇ……。ワインの名前なんだね」
何でそうなる。
しかめそうになる顔を何とか微笑ませる。
「貴方は何ていうの?」
「俺……は、ルクス」
「そう。いい名前ね」
名前のセンスなど少女には分からないが。
「友達とかって、いる?」
「いない。けど、君と話してたら、欲しいなって思えてきた」
少し照れくさそうに少年 ルクスは言う。
「そう? なら良かった」
そうすればその友達ごと家に連れ込める。
そう考え、ほくそ笑んだ。
「それじゃあ俺、行くね。有難う」
「うん。また明日会おう」
「うん」
毒も効かない。
お菓子も受け取らない。
これは長い時間がかかりそうだ。
帰路の最中、また5人家に呼んだ。