英遺憑キ -ハナノコリヅキ-
-ルクス ごめんね-
ロゼの口が僅かにそう動いた。
ロゼはまるで、枯れた白薔薇の様な姿だ。
ルクスはまた涙する。
「俺は……ただ君と、一緒に痛かったんだ」
さっきまで出なかった声が、不思議と今は出た。
すると、ロゼはまた一段と枯れた。
「ロゼッ! なんで……」
今まで発せられなかったロゼの声が、今、発せられた。
「私ね、ずっとこうなりたかったの。今まで美しさにこだわってたけど、今の方が、綺麗じゃない? 真っ白で、お嫁さんみたい」
「どんなでも、ロゼはいつも綺麗だ。だけど、このままだと…………」
「いいの。今話せてるのは、最期ってことかもね。今出てる声が、私の声じゃないみたいな感じがするの。……ねぇ。枯れた白い薔薇の花言葉、知ってる?」
ルクスは首を横に振る。
「『純潔を失った為に死を望む』あの日、貴方に奪われちゃったものね」
力ないままに、微笑んで言うロゼ。
ルクスは俯いた。
「もう一つあるの」
ロゼは、自分からルクスに口付けた。
「『生涯を誓う』ありがとう。私の為に頑張ってくれて。私が殺してしまった、あの子達を思い出してくれて。……私を、愛してくれて。好きよ。ルクス」
「ごめん。ロゼ。俺も。君を愛してる。
俺を、愛してくれてありがとう」
二人は灰になりながら、涙ながら、身を寄せあった。
そして想った。
-今度は普通の人間として生まれ、出会って、また恋をしよう-
-どうか、自分達が殺してしまった犠牲者が、今度は人生を謳歌できますように-
-最期まで見守ってくれた友人達が、生まれ変わりますように-
彼等の花屑が、炎に乗せられ天へと昇った。