紐侶 -チュウリョ-
気がつくと、オレンジの蕾が全て咲き誇っていた。
オレンジのドクターファウスト。
自分達と外の薔薇と相反したその美しさに、ルクスは苛立ち、潰そうとする。
しかし、指が触れた瞬間、記憶が蘇る。
長い間忘れてしまっていた記憶。
短い間に育んだ友情。
最初で最後の、友人達。
ルクスは涙した。
人を失う悲しみを知る自分が、人を殺して続けた事。
愚かな事を続けていたという事。
壊れ物となったルクスは、ぼうっと窓の外を眺める。
夜だ。
白く眩しく輝く三日月。
いつか見た、あの月と同じ。
門の近くで、赤い小さな光が見えた。
松明を持った人間だ。
もう襲う薔薇もいない。
光に照らされたのを見ると、一人の男だった。
門を開き、朽ちた薔薇、木々に火をつけていく。
あっという間に燃え、次々と燃え移っていく。
そして、屋敷にも。
ルクスは、逃げようとしない。
ロゼのいる所へ向かった。
十字架の傍らで横たわって眠るロゼの隣
に、ルクスも横たわる。
「ロ…………ゼ………………」
虚ろな目で、掠れた声で呟く。
それに呼応するかのように、枯れたはずのロゼの口元が、少し緩んだ。
「ロ……ゼッ…………」
いつの間にか侵入してきた炎が、部屋を、二人を包む。