囚荊 -シュウケイ-
「……………………………」
ルクスは目を見開き、凍り付いた。
受け入れ難いものを、目にしたからだ。
ルクスは食事を見届けた後、ロゼのいる中庭に入った。
すると、ロゼを紅く彩っていたものが、白くなっていた。
足元に咲いていた、淡いピンク色をしたシャンテロゼミサトまでも。
ロゼを彩る唯一の色は、ルクスとお揃いの青い目だけ。
初めて会った時から魅了された薄紅の唇も、キスをして赤らめていた頬も、生気を感じられない程白かった。
そして、何より絶望したのは、そのシャンテロゼミサトが、今まで美しく咲いていたにも関わらず、蕾に戻り、固く花弁を閉じていた事。
このままでは食事が出来ない。
ロゼは、目を覚まさない。
ロゼが、食事を拒絶したと、ルクスは悟った。
地面に四肢をつき、俯き、目を見開きながら呟く。
「何で? ……どうして? 食事しなきゃ死ぬんだよ!?」
シュルリ……
何か音がした。
「…………っ!!」
開いたと、希望を持ったルクスは再び絶望に落とされる。
シャンテロゼミサトに、荊が絡んだ。
「っ!!」
シャンテロゼミサトに駆け寄った。
手が裂かれ、血だらけになりながらも、ルクスはその荊を引きちぎろうとする。
だが、びくともしない。
やがて、その荊に花がついた。
八つの、オレンジの蕾。