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薔薇ニ戀々  作者: 藍花 姫乃
睡燈恋
20/26

嫌唄 -ケンバイ-

ルクスはある場所へと向かっていた。

ドアを開け、中にいる人物に話し掛ける。

「久しぶり。かあさん」

「ん? あぁ あんたか。生きてたんだねぇ」

そう言って煙草を吹かす。

「まぁね」

「そんな事より、あんた身なりが良くなったねぇ」

にやにやとしながら、ルクスに近付く母親。

「あぁ。僕、養子になったんだ。今日はその報告と、それから、僕の義母さんが、挨拶したいって」

ルクスは歪んだ笑顔を魅せる。

「ふぅん。そこで待ってな。準備する」

下着姿だった母親は、胸元の開いた派手な服を身に包む。

そして、バラの香水を振り撒いた。


…………あぁ。臭い。

偽物のバラの臭い。

ルクスはそう思いながら、しかめそうになる顔に平静を装う。


「行くよ」


母親を連れて屋敷へ向かう。

今回は、荊に襲わせない様にした。

「ふぅん。こんなとこに屋敷があったんだねぇ。なかなか金持ちそうじゃないか」

「……まぁね」


門を開け、屋敷の中へと入り、奥へと歩み進める。

そして、中庭のドアを開けた。


「何だいここは……。あれ……あん時の嬢さんじゃないか。あんた何かんが


ザクッ


え………………」


ルクスが鋏を母親の背中に突き刺した。

「今まで鼠扱いしてた餓鬼にこうされる気分はどう?」

地面に這い蹲う母親に言う。

「がほっ……お、まえ…………」

そんな苦しむ母親を見据えながら、ルクスは淡々と話す。

「最初は、今まで通り荊に襲わせるつもりだった。けどね、ロゼを見てて思ったんだ。母親は、大事にしないと……ってね」

残酷な美しい笑顔をするルクスに、母親は段々と青ざめていく。

「荊に刺されて死ぬよりも、僕が殺してあげる方が楽だと思って」

「い、嫌だ! 死にたくない! 私が悪かった!」

母親はルクスの足に縋り付く。

「悪いけど、そういう命乞い、もう聞き慣れちゃったんだよね」

そう言ってルクスは足に絡まった母親の両腕を蹴り離して、顔を鷲掴み、真っ赤になった鋏を向ける。

「嫌だ! 何でもするから! 何でもするからぁ!! 頼むよルクス!!!」


ザグ グチャ


もう言葉を発さなくなったそれを、憎しむ目で見下ろす。

「今まで言われた言葉で一番嫌だったよ」


手首を掴み、引きずって場所を移動させる。

そして、外に出ると、薔薇の群れに放り投げた。

「あれはロゼには食べさせられない」

激しい咀嚼音を聞きながら、ルクスは呟いた。


傍らに、一つのデザートローズが転がった。

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