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夢憑キ -ムツキ-
少女は嬉々として街を歩く。
誰もが振り返るほどの容姿。
貴族を思わせる衣服や装飾品。
老若男女を惑わせる香り。
見た目の年齢は15、6歳といったところ。
目的は1つ。
「人間」を連れて帰り、母達に「食事」をさせる為。
そうして、愛される為。
今日も7人食べさせた。
煌びやかなショーウィンドウで自分の顔を見つめる。
この顔と香りがあれば簡単だと、微笑む。
この街は貧富の差が激しいうえに、治安が悪い。
それ故にやりやすい。
貴族の男は醜悪な面で少女に「200で」と話しかける。
それに乗じた振りをして屋敷に連れ込む。
人身売買、身ぐるみ、財産目当てで襲って来る者もいる。
目に涙を溜め、「家に帰ればもっとお金があるから」と言い、屋敷に連れ込む。
貧乏そうな子供にお菓子をあげる。
「家においで。ケーキもあるよ」と、文字通り甘い言葉をかけ、屋敷に連れ込む。
こんなに良い事があるだろうか。
これで母達に褒められる。愛される。
少女はより一層笑顔になり、帰路につく。