赤輪 -セキワ-
バリッ バキッ
グチャ グチ
何か硬いものと柔らかいものを噛み砕く様な音が響く。
誰もが目を耳を塞ぎたくなるような惨状だが、ルクスはその様子を恍惚とした表情で眺める。
子がロゼからルクスに変わり、様々な事が変わった。
ロゼは、毒を吸わせた人間をその場に留まらせて、養分を吸い取り、薔薇へと生まれ変わらせていた。
ルクスは恋する者を毒を用いながら誘惑し、心中させた人間を切断し、ロゼの足元に咲く、恐ろしく巨大なシャンテロゼミサトに直接食べさせた。
本来なら淡いピンク色だが、食事をしている間は、血のような赤となる。
薔薇にはもう意識は無い。
屋敷を目にした者を、有無を言わさず荊で襲い、命を奪い、自らの養分にするようになった。
「やっぱりロゼは優しいね。俺の方法の方が簡単なのに、人間が苦しまない方を選ぶなんて」
そう言ってルクスは、切断された、薬指に銀の指輪が光る腕を、薔薇へと投げ入れる。
薔薇はまた咀嚼し始める。
ルクスは血塗れた指で、ロゼに紅を引く。
その際、ルクスは気付いた。
「ロゼ……目が青くなってる…………?」
自分の青い目を隠していた、青い薔薇の模様が入った眼帯を外す。
「片目だけだけど、お揃いだね」
未だに虚ろなままのロゼに語り続ける。
「君が目覚めるまで、食事を用意してあげる」