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薔薇ニ戀々  作者: 藍花 姫乃
睡燈恋
17/26

赤傷 -セキショウ-

屋敷の中へ入ると、自然と足が動く。

そのまま進んでいくと、重そうな両開きのドアがあった。

押して入った部屋の中央に、十字架の石碑。

地面に座り、それにもたれかかり、茨によって縛られている虚ろな目をしたロゼ。

その姿に、ルクスは固唾を飲む。


「…………ロゼ。ここにいたんだね」

膝をつき、ロゼの頬を優しく撫でる。

「やっぱり、見間違いじゃなかった。髪、白くなっんだね。」

髪にキスをする。

「…………会いたかった」

ロゼの両頬に両手を添え、額と額を重ねる。


「逢瀬は終わった?」

「…………っ!」

その言葉が発せられた刹那、薔薇の毒がルクスを襲う。

甘い香り。

多くの人間を魅了し、骨抜きにした香り。

ルクスはその毒を、肺腑の奥まで吸い込んでしまった。

しかし、ルクスは息を止めようとはせず、逆に吸い込み、目を閉じ、その毒に浸った。


「……ねぇ。俺が用意してあげよっか? 貴女達の食事」

目を開け、微笑んだ彼の左目は、アンクルウォルターの様だった。



気付いた頃には遅かった。

ルクスは薔薇の意識を取り込み、やがて人の形をした薔薇へと変貌した。

ロゼよりも完璧なものとして。


薄れ行く意識の中、薔薇は最後にロゼへの皮肉を思った。



あの子は本当に出来損ないだった。

私達薔薇よりも人間に近かった。

それに、毒に気付かないなんて。

この男は、誰よりも、毒が効いていたじゃないか。



「安心してよ。僕が、貴女達の養子になって、食事を連れて来てあげる。ね? 義母さん」

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