ー除華吊 ジョゲツ-
家に帰るとすぐに、もう朽ちてしまった薔薇を貪る。
それでも髪は変わらない。
「食事は?」
と母達が言う。
「ごめんなさい。お母さん。私、もうできない」
地面に膝をつき、俯きながら言う。
「そう! じゃあ私が代わるわ」
声がした方を向くと、そこには自分がいた。
「え……」
困惑しているロゼを他所に、もう1人の自分は笑みながら続ける。
「はじめまして。貴方の妹よ。……辛そうね。こっちへ来て。楽になるわ」
そう言ってロゼの手を引き、今まで入った事の無い、屋敷の中へと導いた。
奥へ奥へと進んでいく。
「ねぇ。どこ行くつもり?」
「もうすぐ着くよ」
そう言って少し重そうな両開きのドアを開ける。
中は部屋か庭かよく分からない。
地面は土で、芝生と花が生えている。
四方から入れて、ドーム型の天井の造りになっている円形の部屋。
しかし、建物と同じ材質の壁があり、窓はない。
どうやって成長しているのか少しロゼは疑問に思う。
部屋の中央に、十字架の石碑があった。
その場所に来た瞬間、体に異変が起こった。
「かはっ…………」
何かが体の中を弄るかのような感覚。
思わず石碑にもたれかかった。
足元の地面から荊が伸び、ロゼを絡めとる。
一瞬の間に、ロゼは十字架に拘束されてしまった。
自分そっくりの、「妹」と名乗る薔薇は楽しげに言う。
「馬鹿ね。言われた通りにしていれば、お母様に愛されたのに。馬鹿な子。可哀想な子。…………裏切り者」
最後の言葉は酷く冷たく、幾重にも重なって聞こえた。
そして、妹は立ち去ろうとする。
「…………待って! ここに縛ってどうするつもり!?」
振り返り、冷たい目で言う。
「あんたはもう用済みなのよ。でもただ枯らせるのは勿体ないから、お母様の食事にしようと思って。あんたの体、人間に近くなったみたいだし? ゆっ……くり味わって貰ったらいいわ。あはははははははははははっ!!」
そう言って耳障りな高笑いをする。
ロゼはもう絶望しかなかった。
「あぁ。そうだ。安心して? あんたの大好きなルクスも、ここに連れて来てあげるから」
「…………っ!」
「じゃーね」
ドアの閉まる音が、重く、響き渡った。