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薔薇ニ戀々  作者: 藍花 姫乃
禁髄恋
10/26

無我月鏡 -ナガツキ-

ロゼは動揺のあまり、いつもの帰路につくのを辞めた。

香りが無くなってしまったという事は、母達に愛されなくなるのと同じだ、と。


石造りの橋の下、水面を眺める。

白く眩しく輝く三日月。

いつの間にか夜になっていた。

暗くなっていく事にも気付かず、歩き続けていたのかと、ロゼは静かに溜め息をこぼす。


姿は何も変わっていない。

金の長い髪

真っ赤な眼

暗めの赤を基調とした服

そして顔も。


もう、愛されない。

涙を溜め、目を閉じた。


美しく、香りもあり、贈り物にまでされる、愛の象徴である母達。

その母達から生まれたロゼ。

美しい容姿は変わらずあるのに、愛しいものが離れていく。

美しいだけで、香りも愛想も言葉も無い。

それなのに愛される月。

多くの人に手を伸ばされる月。


思わず、髪飾りの薔薇をむしり、川へ落とした。

波紋で歪む月とロゼ。


醜くなるロゼとは反対に、黒の水面と薔薇の花弁によって、白い月光はより美しくなった。


それを見、また深く、それこそ溺れるかのように、絶望に沈んだ。


「……はは。ぁははは」

歪む視界の中、口から笑声がこぼれる。

ルクスが綺麗になった理由が分かった。


ルクスには、光を感じた。

ルクスが、眩しい存在に感じた。


人間の醜い欲望で育った私には、母達には、愛なんて、光なんて、存在しない。


「私も、光が欲しい」

静かに吐息と混じった声で、呟いた。


そして、

黒に浮かぶ白い光めがけて、ロゼは堕ちた。

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