No.8
俺は、失敗した。
失敗して、それでも諦めきれなくて。
もう一度チャンスをもらえた気がして、ゆっくりと、近づこうとした。
そしてまた、失敗した。
向こうから、あいつのほうから、俺に近づこうとしてくれてる気がしたんだ。
あいつとの距離が縮まった気がして、しょっちゅう話せて、幸せで。
そんな時間がずっと続けばよかった。
でも俺は、また間違った選択肢を選んだ。
そのままで、その状況で十分に幸せだったのに。そのままでいれば、ずっとそのままでいられたかもしれないのに。
もっと近づきたいと、思ってしまったんだ。あいつもそう思ってるんじゃないかなんて、思い込んでしまったんだ。
あいつに想いを伝えて、ひたすら伝え続けた。
そして、あいつは離れていった。
それでもそれに気がつかずに、訴え続けた。
そして、拒絶された。
気がついたら、あいつを傷つけてしまっていたんだ。俺の勝手な思い込みで。
ただ大好きだっただけなのに、それを伝えたかっただけなのに。でも、それはあいつを傷つけるほどに暴走してしまっていた。
前兆はあった。でも俺は、それに気付けなかった。
だから、俺にとってはそれは突然だった。
突然、突きつけられた拒絶。突きつけられた辛い現実。それが、鋭い刃のように心を切り裂いた。
そして、あいつを傷つけてしまったという事実で、その傷は日を追うごとに深くなっていた。
それでも。
しばらく顔を合わせられず、再会した時。
あいつは俺に向かって微笑んだんだ。
私は、ある1つの事実からずっと目を背けようと、逃げようとしていた。
他の場所に、代わりを求め続けた。でも――
その笑顔を見た瞬間、気づいてしまったんだ。
あいつを傷つけてしまい、拒絶され、諦めたつもりでいた。諦めようとした。
――それは、出来なかった。
あいつの笑顔を見た瞬間に。やっぱりこいつじゃないと駄目なんだと気づいたんだ。
笑顔を、向けられたことで。
また、チャンスをもらえたんじゃないかと思ってしまったんだ。
あの時突きつけられた事実で、それがありえないとわかっていたはずなのに。
それでも、期待してしまったんだ。
――そして、また俺は拒絶された。