No.9 -Stray-
私は、探しているんだ。
私を愛してくれる誰かを。
私は、求めているんだ。
私に向けられる、優しい愛を。
私は、恐れているんだ。
自分から、特定の誰かを愛したいと願うことを。
私はずっと、愛してくれる誰かを、私に向けられる愛を、求めているのだろう。
かつての私は、誰かを好きになって。その相手を愛したい、その人に愛されたいと願っていた。
時には、複数の相手を好きになってしまったんじゃないかと悩んだり。
大好きな相手が自分をどう思っているのだろうかと思いを巡らせたりもした。
でも。
それは全て、叶うことはなかった。
そして、大好きな相手に拒絶されるという体験をして。
自分から誰かを好きになること、自分から特定の誰かを愛したい、その人に愛されたいと願うことを、恐れるようになっていた。
それでも。
それでも私は、誰かに愛されたい。誰かの愛が欲しい。
むしろそれは、特定の相手を思うことを恐れ、避けているからこそ、強くなった。
今の俺は、いつもいつも俺を好いてくれる女の子を探している気がする。
あいつに対しての想いが拒絶されて、それを代わりに向ける対象が欲しいのかもしれない。
それでも、拒絶は怖くて。自分から動くことは出来ない。
入試のときにすれ違って、なぜか顔を覚えていた隣のクラスの女の子とか。久しぶりに会った昔の同級生とか、中学の部活の後輩とか。
同年代の異性であれば、誰でも意識してしまうかもしれない。そんな状態。
でも、誰に対しても自分からは動けない。
その何人も意識してしまう中の、特定の誰かが好きなんだと決めることもできない。
きっと心の奥で、それを避けているんだ。叶わなくて、もしかしたら拒絶されて、傷つくのを恐れているんだ。
……そうやって、ずっと待っている。
…………迷っているんだ。