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四季の恋シリーズ

冬の恋

作者: 尖角
掲載日:2011/06/11

シリーズ「季節の恋」の最後を飾る、冬の恋です。

冬はどうにも悲しいイメージがあります。

そんな内容になっています。どうぞ!!

 私の名前は清水実冬(しみずみふゆ)


 ごく普通の、24歳の一般女性である。


 そんな私に声掛けする(もの)がいた。


 「お待たせ!」


 私に声掛けした彼の名前は、笹川健介(ささがわけんすけ)


 私の上司であり、私の2コ上の彼氏である。


 そんな彼はエリート正社員。こんな私は2次募集でぎりぎり合格した正社員。


 「それがなんだというのだ?合格には変わらないだろ?」っと彼はいう。


 けれど当の本人…。


 私自身はすごく気にしていた。


 なぜかと聞かれると実に恥ずかしい。


 彼に負けたくない。


 彼と肩を並べていたい。


 しかし、大体の女の子はそう思っているだろう。






 話は戻り、時刻は10分前に戻る。


 今私は仕事が早く終わり、残業中の彼氏を外で待っている。


 正直な話、真冬の雪が降る中防寒具もなしに外で待つのはつらい…。


 「早く来ないかな…」


 私は手をこすり合わせながら小さくつぶやいた。


 するとである。


 この言葉を聞いていたかのように、決まって彼氏は温かい缶コーヒーを持って現れるのだ。


 「おまたせ」 っと…。


 ほら!今日も手の中には温かい缶コーヒーを2つ握って、小走りで私の下へ駆け寄ってくる。


 「おまたせ!」


 そして、彼は「ごめんね」と謝る。


 ここまでは一連の…。お決まりの作業…。


 そして私たちは近くの居酒屋に向かう。


 私は気取った料理というものが嫌いだ。


 その理由は窮屈なのだ。実に窮屈なのである。


 だから、安くて気軽な居酒屋デート…。


 私はこれが好きだ。






 「ビールと枝豆、それとから揚げ」 彼氏は店に入ってすぐに注文した。


 だから私もそれに合わせて、「桃のチューハイと私も枝豆」と頼む。


 別に私は枝豆がそう好きなわけではない。


 いわゆる付き合いというもので頼んだのである。


 そうすれば彼の酒は進むし、話も弾む。


 女の子は彼と同じが良いのである。






 そんなことを考えていた時である。


 彼氏はいつもの上司の文句を言う。


 正直、私はこの話に付き合うのは嫌だ。


 女の子というものは彼氏の愚痴を聞きにデートに来ているわけではない。


 けれど、そんな文句は彼には言えない。


 私だって愚痴をこぼすのだから…。






 そんな居酒屋での帰り道…。


 「今日はごめんな?送っていけないや…少し仕事を持って帰ってきたから…」


 「ほんとにごめん」 そう言って手を合唱()わせる私の彼氏…。


 「いいよ、気にしないで!」


 私はさりげなく言った。


 本当のことを言うと、彼の車に乗ってもう少し話していたかった。


 私の愚痴も聞いて欲しかった。


 けれど彼は忙しい。


 だから私は我慢した。


 心でぐっとこらえて…。






 それからである。


 彼と別れたのは10分前…。


 彼は車で帰り、私は(うち)に帰るために地下鉄のホームにいた。


 周りを見回すが、人は決して多くない。


 数えるなら、私を除いて13人だ。


 その一人によろよろ歩行する浮浪者いた。


 「酒を大量に飲んだのかな?」 酒のにおいがする。


 私も酒…。チューハイを飲んだが、あんなに酔いつぶれるほど飲んでない…。


 「あぶないなぁ~」 私は心の中で唱えた。


 その予感は的中する。実に嫌な形で…。






 その浮浪者は言った。


 ただ一言…。「あっ!」っと…。


 気づいた時には大体のことは手遅れである。


 そう、、、今回のことも、、、


 浮浪者の…年齢的には50ぐらいかな?


 その浮浪者が私の後ろでよろめいた。


 私がいた場所は、立っていた場所は、黄色い線の上…。


 なぜならもうすぐ車両がやってくるから…。私は待っていたのだ。


 しかし、今はわかる。あそこがどれだけ危険な場所か…。


 とにかく私は黄色い線の上にいた。


 そんな時である。


 浮浪者は私の後ろでよろめき、「あっ!」っと言ったのは…。


 浮浪者は酒を大量に飲んでいたため、もちろん急にバランスを戻すことはできない。


 要は私にぶつかり、私を線路上に突き落としたのである。


 すると…。


 「ギギギィ====」っと派手に音が聞こえた。


 これは列車の音…。


 私の落ちた線路には、大きな大きな簡単に人を轢き殺せる車両が近づいていたのだ。


 『世の中は理不尽だ…』 私は最後にそう思った。


 そして、グシャグシャともグチャグチャとも何とも言いようがない音がする。


 これは私の轢かれた音だ。


 どうやら私は死んだらしい。


 今は幽体離脱状態。幽霊になったということだ。






 それから1年、葬式も挙げられ、墓も作られた。


 享年24歳。誕生日まであと2週間だった。


 現在生きていたなら25歳。そんな私は今墓にいた。


 目の前には彼氏の…いやっ、私は死んでしまったから元彼氏の健介がいた。


 今日は1月18日、私の死んだ日。


 彼の手には今日も温かい缶コーヒーが2つ。


 しかし死んでしまった故、もう彼が買ってくれる缶コーヒーを飲むことはできない。


 けれど私はぬくもりを感じていた。


 彼の優しさというぬくもりを…。

季節の恋では、それぞれ話口調や視点を変えて、描いてみました。

それが裏目に出たかもしれませんが、楽しんでいただけたなら幸いです。

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― 新着の感想 ―
[一言]  初めまして、星野雫です。  哀しいですね。 ホームの一番前で電車を待っているとき、そして、電車が迫ってきてるとき、そんなときに、線路に突き落とされてしまったら……。  まだまだ、人生これ…
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