カラスde.cat orダイ
眠る前の暇な時間にゴロゴロとWebニュースを読んでいると、鼠田市、連続通り魔事件というニュースが目に止まった。
物騒だな、僕が住んでいる町じゃないか
こんな記事を読んでしまったら、道行く人らを犯人じゃないか?なんて警戒しながら歩かないといけなくなるじゃないか、あーあ、こんなニュース知らないほうがよかった。
寝よう寝よう、そして忘れてしまおう、それがいいそれがいい。
僕はそんな風に投げやりになって、スマホを枕元に置いて眠りについた。
「わたしとゲームをしましょう、問に間違えればあなたに明日は来ない」
夢の中、少女はそう言って空へと斜めに人差し指を立てた。
「電線に掴まっているカラスが居るでしょう?あのカラスはナイフを持っていてあなたの明日を奪う」
少女はしばらくの沈黙を後に、目線だけをこちらに向けて微笑んだ。
「これはあなたの明日を勝ち取るゲームだ、ルールは簡単、質問と、それに対する答え以外を喋ってはだめ、質問は3回まで、私があなたの質問に答えたら、あなたはどこに足を動かせばいいのかを答えるの、3回の質問のうちにあなたが正解を出せなかったらわたしの勝ち、正解を答えられたらあなたの勝ちよ、さあ、始めましょう」
少女は一方的にルールを語り終えると歩き始めた。
「君に着いていけばいいのかい?」
そう質問すると少女は足を止めて僕に後頭部を向けたまま1つ目の答えを口にする。
「出来れば着いてきてほしくないかな、そして私が歩いている方向は正解ではない、質問は残り2回だよ、さあ、考えて?」
そう言うと少女はまた歩き始めた。
なにを考えればいいのだろうか、少女に着いて行かなければ、どんどん遠くに行ってしまって質問が出来なくなるのに、着いてきてほしくない?.......これだけではわからないな、他のところに考えを移そう。
カラスはナイフを持っていて僕の明日を奪う....逃げろとでも言いたいのだろうか。
そもそも、カラスはナイフをどこに閉まっているんだろうか、ナイフを持っていなかったら傷つけられることはないから逃げる必要も無い。
けれど、問いの通りに本当に持っていたら、逃げる、で正解か?羽に持っているわけではないし、ナイフホルダーなんかも付けていない、普遍的によく居るカラスだ。
カラスがナイフを持っているかの有無を知れるだけでも正解に近付けそうだな。
「カラスは本当にナイフを持っている?」
少女はいい質問だと言いたげに、嬉しそうな顔を体ごとくるりと僕に翻して答える。
「そうだ、カラスはナイフを持っている、そしてカラスはあなたの傍にいる、もうわかるよね?さあさあ考えて?次が最後の質問だ」
これはもう答えがわかったようなものだ。
「僕の明日を奪うカラスから逃げる方向に足を動かすのが正解だね?」
「そうだ!おめでとう!あなたの明日は保たれた!わたしはそうだと、信じたいな、だから、現実でもカラスを見たらすぐにその答えに従うんだ、わかったね?……それじゃ、さようならだ」
不意に僕はベッドで目覚める、窓の外は灰色に染まっている、変な夢だったな、今日は雨でも降りそうだ。
洗面台で顔を洗うと、普段使いのタオルがどこにも見当たらない、そうだ、昨日、庭先で死んでいた猫をくるむのに使って汚れたから洗濯機に入れたんだ。
あの猫はよく僕に懐いてくれていたな、下校の途中で。
よく現れては、振り向きながら僕の前を歩いて着いてきてって....言ってはいないけど
そんな風に僕を知らない道に誘導してはいつの間にかいなくなるって遊びをしていたっけな
僕はいつもそれで道が分からなくなってデートに遅れるんだ、今思ってみたらあれはなにかのゲームで、僕は遊ばれていただけだったのかな?
物思いに老けっているとインターフォンが鳴った、僕は浮き足立って玄関のドアを開けると、黒い羽のブローチを首から下げた彼女が立っていた。
「今日も一緒に学校行こっ!」
「待ってたよ、けどそのブローチさぁ、怜ちゃんに似合ってると思うんだけど、校則違反だろ」
「やっぱ〜?私もそう思ったんだけどさぁ〜、つい可愛かったから付けてきちゃったってさぁ〜、あっ!そうだ!近くの公園!人通りも少ないしさ、あそこに隠せば見つからない!」
「はぁ…わかったわかった、そうしような、こりゃ遅刻だわ」
その日、僕の明日は奪われた。




