食べるならSalt..&..BasiL...?
僕にはどうしてもムリな食べ物がある
それは肉系統全般だ、1切れを口にしたり血を1滴舐めるだけで体が拒絶反応をおこしてしまう、最悪死ぬ。
そう、食った瞬間に出る、上からも下からも出る、そしてしばらく寝込む。
体質なんだろうなぁ、え!?食事中だった?それはごめん!悪気はない!
一旦戻そうか、この戻そうかは話を戻すって意味だから誤解しないように!
コホン…それで、なにか自分に合った拒絶反応をおこさない肉はないものかといろいろな種類を食べてきた。
牛や豚、鶏はもちろん、そのほかだったら鹿、ウサギ、カエル、カンガルー、ライオン、カモノハシ、ゴリラ、パンダ、オオサンショウウオ、フクロオオカミ、クァッガ…と、そうだ。
未開の森まで行ってンゴゾレレウポンポタマスモドキも食べたな。
でもなんらかんらで今まで食べた中だとンゴゴゾレレウポンポタマスモドキモドキが1番美味かったわ。
ん?絶滅動物がいた?気のせいじゃない?ハハハハ
で、結果どれも食ったら即時リバースするわけだ、ほんと辛らいわ、切実に誰かと体質をチェンジりたいよ。
もう食べたことのない肉は人肉だけだ、さすがにそれは食べないって決めているけどね
…いや、決めていた...か、今はちょっと事情が変わってね。
そうだな、人を食うまでのあらましでも話そうか、ことの初めは彼女からのショートメッセージから始まる、内容を晒すとこうだ。
【⠀どうせなら好きな人に食べられて終わる♡
今から家に行くね===(ˆ꜆ . ̫ .) ☛ドーン.ᐟ.ᐟ
present for you guilty meet & Happy birthday
ps.多分合うのはsalt&BasiL 】
この子は時々単純なことを独特な表現で伝えるからなぁ。
読み解くと…夜を営みたいってことなのか?ふふふ、と思ったんだけど、そうではないみたいで。
彼女が玄関に入って来るなり突然包丁の柄を僕に向けてきたと思ったら。
「はっくんの好きなように捌いてね、調理方法はお好みでどぞ、塩もバジルも持って来てないけどトコは悪くないからね!塩の瓶を割ったベンジャミンも悪くないからね!わかるよね?わかってよ!」
とか言い出した。
カバの尻尾にビンタされたりワニのデスロールで天使の遣いを見た経験のある僕だけど。
それとは別の恐怖を植え付けられて25歳を知らせるバースデイソングのアラームが鳴った喜びを見事にかき消された…なんて恐ろしい娘だ…
ってか好きのベクトルをどう間違えればその思考に辿り着くんだい?
僕がベンジャミンは誰なんだと問うとトコがいきなりポロポロと涙を流しながら語り始める。
「あのね、私ね...わたし......ストーカーされててね、1ヶ月前にね、家のポストを開けたらカミソリに巻かれた傷だらけの猫ちゃんが入ってて......それでね...それでさ...手紙もあってね、愛しの絵柄遠心さんへ愛をこめてって私のフルネームが書いてあっ......て....」
泣きながら語るトコの手を見ると人差し指から中指にかけて赤くなっている。
僕は少し怖くなってトコに質問をした。
「あのさ、もしかしてそのストーカーを......」
「生きてた...」
「......?」
「猫ちゃんね、生きてたんだよ?手当をしたらさ、高い棚にある塩の瓶に手が届くくらい元気になったんだよ!でも.....何も悪いことなんてしてないベンジャミンをあんな目に合わせたあいつが許せなくって....わかるよね?...わかってよ......でも...手も私もこんなに汚くなっちゃった...ごめん...ごめんなさい......」
そう言いながらトコは自身に向けた包丁の刃をゆっくりと首に近づけ始めた。
僕はすぐに包丁を叩き落として赤く震える手を握りしめて言う。
「大丈夫だよ、トコは汚くない、何があっても優しいままだよ、なにがあってもトコもこの手も綺麗なままだ」
今の僕にはトコの目をじっと見つめて精一杯の思いを伝えることしか出来なかった。
こんなに少ない言葉しかかけられないなんて僕はなんて不甲斐ないんだろう。
トコはそんな不安に気がついたのか、目を細めてパッと手を振りほどいた。
そして僕の口元に血の付いていない小指を突き立てると眉間に皺を寄せて言う。
「綺麗だって思うならさ、食べられるよね?」
トコが言葉をつむぎ終わる前に脊髄反射で指に噛み付くと口の中で鉄の味が溶けて広がるのを感じた。
「痛っ!!折れ!もげてわぁああ!じょじょじょ冗談だったのにぃ!」
「うわぁ!ごめん!」
「救急車を召喚するから!その前に早くトイレ行こう!」
「わかっ……トイレ?」
「だって血をペロったらはっくん吐くんじゃん!トイレが先!その後に救急車!早く!はっくんが死んじゃう!」
「…!!どうして…トコのほうが痛いだろうに…いや…なぁトコ、落ち着いて欲しい、大丈夫だよ、なんでだか吐き気が全くないんだ」
しばらくの沈黙が流れたあと、トコは第2関節があった場所から皮1枚でぶら下がった小指をまた僕の口ににそーっと近ずけて。
「もう一口いっとく?」
と言って無邪気に笑って見せた。
もう一口は流石ににいかなかった。
小指の手当てをしながら今後について話している最中にトコは自首をする決意を決めたみたいだ。
1人で行かせて欲しいと言って玄関に立つと寂しげに包帯が巻かれた手を振って。
「もしもお肉が食べれるようになってるなら走冷さんを食べてあげてね、手紙に食べられたいとも書いたあったんだ、じゃね」
と言って近くて遠い場所に行ってしまった。
走冷さんはストーカーのことだろう、そして死体は一生見つからないと思う。
だって僕はトコの優しさに報いることにしたのだから。




