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魔術学院騒動記  作者: いさ
第二話 『黒き書』
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第二話 「黒き書」 第二幕

 扉を開けてまず初めにリーユン=ルルディヴァイサーの視界に飛び込んできたのは陽の光を受けて煌く金。続いて風を孕んで柔らかく靡く淡い緑の衣。肌の露出がほとんど無い長い上衣のその衣装はエルフ族が好んで身に纏う物だ。ケイは校舎前の広いスペースで何事も無かったかの如く涼やかな面持ちで佇み、校舎側を眺めていた。リーユンがケイの視線の先を追うと、其処には校舎の壁に逆さまの状態で凭れ掛かっているクゥ=ラ=ルゥの姿が確認できる。

「もうお終いですか?」

静寂を取り戻した朝の空気を震わせるケイの声音は酷く冷たくて、どこか緊張を孕んで響く。ケイは隙の無い優雅な所作で着衣の裾を払い、痛みを耐えて身を丸めているルゥから視線を外してリーユンへ向き直る。普段の柔らかな物腰からは想像出来ない殺気めいた気配を感じ、リーユンは驚きのあまり蒼い双眸を瞠り、視線を合わせたまま逸らせなくなる。

「リーユンも稽古を付けて欲しいのでしょうか」

手合わせをこなして気持ちが高揚しているのだろうか、ケイはリーユンに対して好戦的な言葉を投げかける。そのケイらしからぬ様子にリーユンは戸惑いを覚えるばかりでろくに言葉も返せなかった。そんなリーユンの表情や所作を眺めていたケイだったが、ふと何事かに気付いた様子で翠の双眸をリーユンの背後、開け放たれたままの扉へ流す。

「珈琲の香りがしますね」

確認するような響きで紡ぎながら、ケイがリーユンに視線を戻す。リーユンは其処でハッと我に返り、

「あ、ト、トレイを引っ繰り返してしまって」

早口で返答し、慌てて踵を返す。その直ぐ後ろにケイが続き、リーユンの横を素早くすり抜けて床に散らばった破片を拾い始める。

「あの、僕がやりますから」

リーユンも急ぎケイの傍らにしゃがみ込み、一緒に破片を拾う作業に取り掛かる。ケイはリーユンの手元を見、次いでその視線をリーユンの蒼い双眸へ向けて怪訝そうな表情を浮かべた。

「どうしてですか? 先程の音に驚いて落としてしまったのでしょう。なら私の所為です」

ケイは淡々とした口調で事実を語り、視線を手元へ落として破片拾いの作業に戻る。リーユンはその端整な横顔に暫し視線を奪われていたが、ケイが言葉を続けようとして唇が動くのを見れば、何となく罰の悪いような、罪悪感めいた心情を抱いて視線を逸らす。そんなリーユンの様子には気が付かず、ケイはひとつ小さく息を吐き、常の如くの穏やかな声音で話し始めた。

「此処は私が片付けますから、ルゥの様子を見てきて頂けませんか。ルゥは私に看られるのが煩わしい様ですので」

そう紡ぐケイの微笑はどこか寂しげにも見え、リーユンは「わかりました」と告げて拾った破片をトレイへ乗せ、その場をケイに任せて再び校舎の外へ足を向ける。

 外に出て直ぐ壁際を確認すれば、クゥ=ラ=ルゥの小柄な体は逆さまではなく、天地正しい状態で腹部を抱えて蹲っていた。どうやらしこたま腹部を殴られたか蹴られたかしたらしい。ルゥはリーユンが近付く気配を知って顔を上げ、黄金色の眸にその姿を捉えると無理矢理口の端を持ち上げて笑って見せた。

「まぁた負けちまった」

明らかに強がりと分かる悔しげな色を双眸に滲ませ、ルゥがゆっくりと立ち上がる。土の付いた衣服を乱暴な所作で払い、リーユンの元まで自力で歩いて近付くと眼前にて歩みを止める。小柄なルゥが俯いてしまえばリーユンからその表情を伺うことは出来ず、身動ぎすら止めてしまった姿に心配そうな眼差しを送って何か声を掛けようと言葉を探す。

「ルゥ、……大丈夫?」

問い掛けながら、リーユンは上体を屈めてルゥの様子を詳しく見ようとする。心なしルゥの小さな両肩が小刻みに震えている様に見えてリーユンは言葉を失い、ケイに負けたことが余程ショックだったのだろうか、それとも震えが来るほど痛みが酷いのだろうかと思考を巡らせる。暫し押し黙ってルゥを眺めていたリーユンだったが、ルゥが唐突に叫び出した事で思考の中断を余儀なくされた。

「くっそ―――――――――!! 次はぜってぇ勝つ!!!」

誓いの雄叫びだ。ルゥは気合の入った遠吠えを済ませると、一人スッキリした様子でリーユンの横を通って校舎の中へ消えて行く。何だかとてつもなく疲れた心地になったリーユンも仕方なくルゥの後に続いて屋内へ入り込む。後ろ手にドアを閉めて視線を上げると、丁度ケイが食堂の扉を潜って姿を消すところだった。

「ルゥ、飲み物を入れて来るから娯楽室で待ってて」

ルゥは大丈夫そうだと判断したリーユンはそれだけを告げると、ケイの片付けを手伝おうと食堂へ向かう。扉を開き、ダイニングを抜けてキッチンへ入れば、ケイは破片を捨てて新しい豆とカップとを四人分支度していた。リーユンは静かにケイの隣まで進み、僅かばかり見上げる位置にあるケイの相貌に視線を移し、ルゥは大丈夫そうであった旨を伝える。ケイは水を満たした鍋を火にかけたところで一度動きを止め、ゆっくりとした仕草でリーユンを振り返り、不思議そうな表情で浅く首を傾がせる。金の髪がさらりと流れた。

「そんなはずは無いのですが」

「そんなはずは無い……って、いったい何をしたんですか?」

ケイから返された言葉を聞き、リーユンは答えを知りたい様な知りたくない様な複雑な心境で訊ねる。ケイは鍋から離した手を口元へ運び、思案気な面持ちを浮かべて幾分言い難そうな様子で言葉を紡ぐ。

「元々小竜族というのは身体能力に優れているものですが、ルゥはセンスが良いのでしょうね。近頃は手加減する余裕もなく、先程もつい容赦なく蹴ってしまいまして」

ケイの容赦のない蹴りとは如何程の物かをリーユンは知らない。しかしながら校舎の振動と言い、頑丈なルゥが蹲って暫く悶絶していた事と言い、かなりの物なのだろう事は想像に難くない。可憐な容貌の者が多く存在すると言われるエルフ族が好戦的であるとは初耳だった。リーユン=ルルディヴァイサーが知っているエルフ族は自然を愛し動物を愛し、破壊を厭い、平和を好み、精霊を従えて自然と共に生きる、人よりは精霊に近い種族であると言う何かの書物の受け売りだった。しかしながら実際この世界の人々の多くはリーユンと同じイメージを抱いている事だろう。

 リーユンの思考を遮る様に、ケイが言葉を続ける。

「ルゥ本人が大丈夫と言っているのなら、きっと大丈夫なのでしょう。小竜族ですし」

一人で納得した様子を見せ、ケイは珈琲の支度を済ませてトレイを手に持ち、娯楽室へ歩き出す。キッチンに取り残されたリーユンは華奢なケイの背を見送り、深々と溜息を吐いた。

「……やっぱりケイさんもドール教室に居るくらいだから、普通じゃないのかな」

「リーユン?」

口中で呟いた小さな声が届いた筈はないのだが、キッチンを抜けたところで急にケイが振り向いて声を掛けてきた。リーユンは心臓が飛び出るかと思うほどに驚愕し、伏せていた視線を慌ててケイへ向ける。

「な、何ですか?」

「いえ、今日の食事当番はリーユンですので忘れないようにと伝えようと思っただけなのですが。どうかしましたか? ……汗を掻いていますね。体調が優れませんか?」

ケイがキッチンへ舞い戻り、心配そうにリーユンの顔を覗き込む。透き通るような翠玉の眸が間近に迫り、リーユンは気恥ずかしさから思わず視線を逃がして足元を見下ろした。

「だっ、大丈夫です。あの、それ、僕が運びます」

リーユンはケイの手から奪う様にしてトレイを受け取ると、ケイの横をすり抜けて足早に娯楽室へ向かう。今度はケイがキッチンに取り残される形となり、不思議そうに首を傾がせながらもそれ以上の追求をする事無く、彼女もまたリーユンに続いてキッチンを後にした。

 リーユンが娯楽室の扉を開けて中に入り込むと、ユエは半ば程夢の世界へ旅立っているようだった。肘掛と背凭れの間に挟まる様に身を傾がせ、瞼を閉ざして呼吸の度に体を僅かに上下させている。ルゥはその向かい、リーユンが腰掛けていたソファにちょこんと大人しく座っていた。リーユンはルゥの右隣へ腰を下ろし、トレイをテーブルへ置いて食器を並べていく。手際よく四人分の珈琲をカップへ注ぎいれ、香ばしい香り漂う珈琲を四人の前へ並べた。

「ルゥ、熱いから気を付けてね」

「ん」

ルゥはリーユンから受け取った珈琲に砂糖とミルクを大量に放り込み、忠告通り火傷しないようにと留意し、吹き冷ましながら慎重に飲み始めた。ケイは一人掛けのソファに身を預け、ブラックのままの珈琲を優雅に口に運ぶ。伏せられた双眸の縁を飾る長い睫毛が揺れ、白皙の滑らかな頬に影を落としている。リーユンはついつい見惚れてしまっていた視線を無理やり外し、対面に座るユエの姿を視界に入れる。ユエは既に四分の三程夢の世界へ旅立っているようだった。

 リーユンは小さな溜息を吐き出して、砂糖とミルクとを適量入れた珈琲を静かに喉に流し込む。口当たりが良く、程よい苦味と豊かな香味、砂糖とミルクを加えたことによって心地よい甘味がそれに混ざり、リーユンの口腔に広がる。思わず口元が綻ぶ美味しさは気持ちをリラックスさせてくれた。カイリ=ドールがブレンドしたという珈琲は今まで飲んだ事のある珈琲の中でも群を抜いて美味しい。何より、人と味覚の異なるエルフ族のケイや、小竜族のクゥ=ラ=ルゥでさえ美味しいと言って好んで飲むのだから、カイリの珈琲への拘り具合が良く解る。

 と、突然隣席のルゥが盛大に噎せ始めた。慌てて飲んだ珈琲が気管に入ったのだろうかと思い、リーユンはカップをテーブルへ置いてルゥの小さな背中をさすり、ハンカチを取り出してその口許を拭う。

「……ッ、ゲホッ!」

ルゥがきつく双眸を閉ざし、眉間に深く皺を刻んで苦悶の表情を浮かべ、一際激しく咳き込み始める。どうにも様子がおかしい。リーユンが事の異常さに幾分険しい面持ちとなり、一度ルゥの口許を拭い取った時、手元のハンカチが真っ赤に染まっている事に気付いた。

「ルゥ!?」

リーユンの驚いた様子に、ケイとユエも何事かと咳き込むルゥへ視線を向け、そして、慌てるでもなく再び珈琲カップに口を付けた。無事を問う声も心配する様子も無い二人に、流石のリーユンも思わず非難の声を投げ付ける。

「ちょっと、落ち着いて珈琲を飲んでいる場合ですか!? ルゥが血を吐いたんですよ!」

あまりの事に混乱をきたし、半ば泣きそうな様子でリーユンがルゥの口許を拭い、背を撫でて、せめて呼吸を少しでも楽にしようと奮闘している。その様子を相変わらず眠りの国へ片足を突っ込んでいるユエが眠そうな眸で眺めやり、

「小竜族ってのは元々の治癒能力が高いから、一晩経てば大概の怪我や病気は治るんだよ。だから下手に人間用の薬を与えたりして悪化させるよりは、横になって安静にしてる方が良いんだ」

ユエの意見は最もかも知れないが、リーユンは二人の態度があまりにも冷たい気がして尚も言い募ろうと口を開く。

「確かにそうかも知れないですけど、でも、だからってそんな」

「竜族は怪我や病気などで体が弱ると、炎の精霊、火蜥蜴サラマンダーの活動が活発になります。そうなると私では近付く事が出来ません。……リーユンも、あまり近付かない方が良いです。熱病に掛かると手の施しようもありませんから」

リーユンの台詞に静かな、言い聞かせるような声を被せたのはケイだった。ケイはそれだけを口にすると、珈琲カップとポットの乗ったトレイを手にしてソファを立ち、娯楽室を後にする。ユエ=ルイェンはケイとリーユン=ルルディヴァイサーの遣り取りを困った様な笑みを浮かべて眺めていたが、やはりケイと同様、珈琲を干して後、「安静にしてろよ」とだけ告げてカップを片付けに部屋を出て行く。リーユンは何とも複雑な面持ちで長身の背中が扉の向こうへ消えるのを眺めた。

「リーユンも、離れた方が良いぞ」

咳が多少落ち着いたのか、掠れた声音でそう訴えるのは、血を吐いた当の本人、クゥ=ラ=ルゥだ。

「そんな事出来るわけないよ」

リーユンは何を馬鹿な事を、とでも言いたそうな口振りで拒否するものの、ならばとルゥはソファから体を起こして立ち上がり「じゃあ俺が出て行く」と扉に向かって歩き出そうとする。しかし案の定足元は覚束無い様子で、しっかりと体重を支え切れずに小さな体がぐらりと傾ぐ。リーユンが慌ててルゥの身体を支えようと手を伸ばすが、ルゥは何を思ったか支えの手をかわして綺麗な前転をかまし、すちゃっと立ち上がるとポーズまで決めて見せた。

「な? へーき、へーき。リーユンは心配し過ぎなんだよ」

つい先ほど喀血したとは思えないはきはきとした口調で笑い、ルゥはリーユンに背を向けると、ひらりと手を振ってエントランスへ消えて行った。

 娯楽室の扉を完全に閉め切ってリーユンの心配そうな視線を遮った所で、ルゥの小さな身体がふわりと宙へ持ち上げられる。黄金色の丸い双眸をより丸くするのも束の間、抱き留める腕の主を視認するよりも先に独特の気配でそれと感じ取り、口端を引き上げる生意気そうな笑みを浮かべて軽口を叩く。

「新学期早々何処行ってたんだよ、この不良教師」

珍しくきちんとした身形で外出していた不良教師ことカイリ=ドールは、無言のままルゥを抱えて二階へ続く階段を上って行く。ルゥがけほけほと小さな咳を繰り返す度に、カイリの式典用の正式な礼装に赤い染みが広がった。ルゥはそれを気にしてなるべくカイリから身体を離そうとするのだが、カイリはルゥの身体をしっかりと右腕で支え、左手で頭部を抱え込む様にして肩口へ押し付け、なるべく振動を伝えないようにと意識しているのが解る慎重さで幼い身を運んだ。流石にルゥもそれ以上抵抗する気力も無く、大人しく運ばれるに任せて二階へ移り、通路の左手側、一番手前のルゥの自室へ向かう。カイリが扉を開け放ち、一歩室内へ踏み入れた所で、ぽつりとルゥが呟いた。

「なぁ、先生」

「何だ?」

直ぐに続きを口にする気配の無いルゥを促し、カイリは小柄な身体を静かに寝台へと横たわらせ、損傷したらしい腹部へ右手をかざす。カイリ=ドールの内側から淡い蒼碧の魔力が溢れ、複雑で緻密な式が編み上げられて行くに従ってルゥの腹腔を苛む痛みが和らぐ。楽になる呼吸を感じながら、ルゥは金色の双眸を閉ざしてぶっきら棒に先ほどの台詞の続きを零した。

「……何でもねぇ」

ルゥの言葉には負けた事に対する悔しさか、手間を掛けさせた事に対する申し訳なさか、はっきりとした事は解らないが、苦々しい色が滲んでいる。カイリは「そうか」とだけ返して立ち上がり、魔力を収束させて暫くルゥの様子を見下ろしていたが、癒しの魔術がきちんと作用したと知れば、薄水色の髪を撫で、何も言わずにルゥの部屋を後にする。

 カイリ=ドールが部屋を出るのを見計らっていた様なタイミングで、いや、実際カイリがルゥの部屋へ入るのを見て、ずっと廊下で待っていたのだろう長身が、彼らの担任へ声を掛けた。

「先生。ケイも診てやってくれませんか」

「やれやれ」

ユエ=ルイェンの言葉に、カイリはのんびりとした口調で紡いで肩を竦ませるものの、その態度とは裏腹に、血の付着した衣服のまま幾分急いた足取りでケイの部屋へ向かう。階段の前を通り、右手側通路の一番手前の扉前で立ち止まると、おもむろに右足を持ち上げてドガァッと扉を蹴り付けた。余程頑丈な造りをしているらしい木製の扉はビクともしなかったが、部屋の主が驚くには十分な騒音と衝撃が出た事だろう。

「タァーキ! 出て来い!!」

蹴りだけでは足りないと思ったか、カイリは扉越しに声を張り上げてタキ=ヤンフゥへ呼び掛ける。直ぐさま「うるさいわねっ!!」という少女の声が廊下に響き、勢い良く扉が開け放たれる。扉の向こうに現れたタキはユエの出した課題を片付けていた所なのだろう、少々赤くなった目は剣呑で、苛立ちもあらわにカイリへ怒鳴り返そうと口を開き、きょとんと茶色の双眸を瞬かせた。視線の先は不自然な染みを作るローブの肩口へ注がれている。

「何があったの?」

「ケイが、ちょっとな」

仄かに滲む血臭にも気づいたタキは、神妙な様子でカイリに問い掛ける。カイリは相変わらず飄々とした態度を崩さないが、説明する間も惜しむ様子で天井を指差し、

「だから、天井のアレをどうにかしてくれ」

と、タキへ手短に用件を伝える。カイリの人差し指が指し示す先には、三者の様子をじっと眺める一つの視線があった。その眸は大きな丸いレンズで出来ており、三十センチ程の白くて丸い頭部に付いている。頭部はつるりとした金属的な光沢を帯び、同じ素材で出来ているのだろう四足の獣じみた胴体を持っていた。四肢を天井へ付き、逆さの姿勢でぶら下がって侵入者を排除しようと待機しているそれに、タキが視線を送る。

「サイエスくん六号、先生は通してもいいわよ」

白い四足の物体、サイエスくん六号はタキの命令に反応し、丸いレンズの視線をカイリから外し、ユエの上へ注ぐ。

「向こうに部屋を持っている俺は相変わらず進入禁止なのか」

ユエの物言いたげなぼやきは聞こえない振りで、タキは心配そうな表情を浮かべてカイリを見上げる。

「ケイは大丈夫なの?」

カイリはタキの心配を「いつもの体調不良だ」と軽い声音で流し、通路一番奥にあるケイの自室へ向かった。

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