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27. 復讐の果て愛の果て

「おまえを撃つ? なんでそうなる」


ジェイはウィンの言っていることが全く理解できず訊き返した

子供の顔のままウィンは嘲嗤う


「一生忘れないように僕を殺してよ

 その痛みをずっと持ったまま生きてくんだ」


「できるわけないだろが、そんなことしなくたって忘れはしない」


「いまのいままで忘れてたくせに

 記憶にはあるけど痛みはもうないんでしょ

 あんたはマリーンに夢中だ」


否定はできない、言い訳も

ウィンはずっと見ていたのだ

昔の女を忘れ、過去に追いやり、目の前の女に溺れている父親を


最悪だ


笑うことも泣くこともできずジェイの顔が歪んだ

呼吸が速くなるのがわかる


「だからっておまえを撃つなんてできない」


「いいの? 僕はマリーンに全部話しちゃうよ

 彼女はきっとあんたを許そうとするよね

 すごく辛いだろうね、悲しいだろうね」


「やめろっ

 彼女は関係ない!」


反射的にジェイは大声で叫んだ

急に動悸が跳ね上がる


「やっぱりマリーンだけは特別なんだ

 だったら撃たなきゃだめだよ

 ほら、早く」


「やめるんだ!」


「ねえ、実の息子を犯して殺す気持ちはどう?」


昨夜の悪夢が蘇り額に汗が噴き出した

頭の中がぐるぐると回り出しひどく酔ったように吐き気がする


「ウィン、やめてくれ」


ジェイは小刻みに震える手で銃身を押さえた


(落ち着け、煽ってるだけだ、話を聞いてはダメだ)


「全部マリーンに話してあげるよ

 僕のカラダ、すごくよかったでしょ

 ジェイがどんな顔してイったかもみんな話してあげる」


ウィンの甲高い笑い声がガンガンと頭に響いて反響し続けた、耐えられない痛みが襲う


「やめろぉっ!」


銃声と共にバルコニーの柵が壊れ、両手を広げたウィンが宙に放り出されて消えた


「ああああああ!」


ジェイは叫び声をあげ膝から崩れ落ちていった


「ウィン、ウィン」


呼びながら壊れた柵に這い寄った

下を覗き込むと、岩場に白い服を着た人影が倒れているのが見える

首も手足もあらぬ方向を向いていて、とても生きていられるとは思えない角度で…


「うわああああっ」


ジェイは尻もちをついて後ずさった


「ウィン、サラ、違うんだ

 助けようとしたんだ

 警察に頼んで、なんでもするからサラを探してくれって」


景色が歪み始めた

店の柱やテーブルも椅子もぐにゃりと曲がり立つことができない


「ジェイ」


店の入り口から声が聞こえ、振り返ると白い服の女が立っていた


「わあああ!」


ジェイは銃を向け引き金を引いた

頭の中に銃声が響く

幽霊だと思った、消えてくれと思ったが女は消えない


「ジェ、イ?」


ひと言呟いて倒れたのはマリーンだった


「マリーン? マリーンがなぜ?」


(嘘だ、嘘だ、こんなことは全部ウソだ、全部間違っている)


(そうか、これは全部悪夢なんだ、俺がおかしくなってるだけだ、俺が目を覚ませばみんな元通りになる)


『ジェイ、僕を愛して』


(ごめんな、ウィン

 おまえは悪魔なんかじゃない

 ただ愛されたかった子供だったんだ)


ジェイは嗚咽を漏らしながら銃口を自分の口に咥えた


震える指を引き金にかける


そして


脳髄に響く轟音を待った

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