25. 堕天使
(どうしてこんなことになった?)
思考を取り戻したときジェイが見たのは、滑らかな褐色の肌とほっそりとした肩、背中、腰、薄く肉の付いた尻
大人になる前の柔らかな筋肉に包まれた体をジェイが苛んでいた
(なんだこれは、やめろ!)
自分に言い聞かせているのに腰が止まらない
別の生き物のように激しく突き上げ、そのたびにウィンが喘ぎ声を上げていた
「ああ、ジェイ、とても素敵だよ
もっと僕を愛して」
(くそっ、こんなもんは愛なんて上等なもんじゃねえ)
「てめえ、何をした」
やっとのことで声に出した
「ごめんよ、ジェイ
こうでもしないと僕を抱いてくれないでしょ?
大丈夫、ほんのひとつまみだから残らないよ」
(クスリ、マリファナかっ)
「お願い、ジェイ
僕を愛して」
(なんだ? この肌、声…知っている…)
その後はまた考えることができなくなった
意識を失うまでジェイの体は動きを止めなかった
再び気が付いたとき、ウィンは姿を消していた
すでに朝になっていて、部屋には甘い香りと青臭い緑の匂いが微かに残っている
ジェイは急いで身を起こし部屋中の窓を開けた
頭の中はまだぼんやりしているが足取りはしっかりしている
どうやらマリファナの量は少なかったらしい
今日はマリーンが帰ってくる日だ
とにかくマリファナの痕跡は消さねばならない
彼女はとくにあの匂いに敏感だ
たいして効果があるとは思えないが消臭剤をスプレーしまくった
ベッドサイドを見るとアロマキャンドルの受け皿がまだくすぶっていた
洗面所で洗うと窓から海に向かって放り投げる
マリーンのお気に入りだったが仕方ない
次にウィンの部屋だ
開けてみるときれいに片付けられていた
いつもは着替えや雑誌、菓子、ゲーム機などが散乱しているのだが
(逃げたか)
ここでもう一度、他の部屋をチェックした
通帳や現金、財布、カードなどを荒らされた様子はない
(どういうことだ
まさか本当に俺を嵌めるためだけに?)
彼にはウィンが何を考えているかまったくわからなかった
どちらにしろウィンをもうここには置けないと思っていたから、いなくなるのは構わないのだが、マリーンにどう説明したらいいのか
昼には迎えに行くと伝えてあるから、それまでにそれらしい言い訳を考えなくてはならなかった
(あああ、めんどくせえなっ)
そのとき階下から歌が聞こえてきた
アヴェ・マリアだった




